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赤荻誠二:会議の説明キャラ

小職――赤荻誠二って、なんか会議の説明キャラになってない? もっとこうさ、他にもあるでしょ。真理ちゃんとの会話シーンとかさ。

まあ守秘義務がある以上ろくな話はできないわけで‥‥今日も朝からずっと会議だよ。ちくしょう。

ということを同僚に愚痴っていた。


「こんなに大変だったら法務省のヤツになじられてるほうが100倍マシだよ」

「はっはは、法務省の会議サボる口実ができてよかったじゃねえか」

「サボるって何だよ、お前も敵かよ、ちくしょう」


まったく、原因の半分はあいつらが現れたことで、もう半分は学校行きを希望しやがったことだよ。もう。まったく。


「おまけに真理ちゃんも首を突っ込みやがって、しかも関係良好とか抜かしやがって、何で真理ちゃんなんだよ、俺の真理ちゃんをストレス発散に使うなよ、小職がどれだけ気を使ってるか‥‥!」

「まあ、真理も間違いなく政府の管理下に置かれるだろうね」

「‥‥いやもう置いてるよ。私服(警察)もいる。今朝真理ちゃんから電話があってな、たまには部活に行きたいので時間ずらせませんかって‥‥ずらせないよ。平日定時内でないとスタッフの関係で無理なんだよ。特に学校関係者でもないのに部活よりもこっち優先してくれって勘ぐられないようにお願いするこっちの立場にもなってみろってんだよ、はぁ、まったく‥‥」


小職は異世界人たちがめちゃくちゃ監視されている現場をよく知っている。小職が参加している会議がまさにそれだからね。その監視対象に真理ちゃんは入ってほしくない。絶対入ってほしくない。これが本音だ。

でもアリシアが真理ちゃんを求めるようになった以上、どうしようもない。真理ちゃんは今はまだ日常生活がちょっと変わる程度だけど、ことと次第によってはエスカレートする可能性すらある。


ああー、確かに小職も真理ちゃんとアリシアの関係が進むことは望んでだよ。でも警察庁や外務省があんなこと言ったらおしまいじゃねえか。一介の女子高生にやりすぎなんだよ。


あいつらが主張する理由は単純。アリシアと真理ちゃんの個人的な交友関係はそのまま日本と異世界の関係強化に繋がるからだ。そんな考え方は前時代的だと思うかもしれないが、現時点で最も成功した信頼関係であり、政府はこれを利用しないと異世界人との信頼関係を構築するのが難しいという判断になるのだ。魔法技術が欲しいのはもちろん、今後も同様の異世界からの転移事件があると安全保障にも関わりかねないから、パイプを持ちたい。真理ちゃんの存在はそのまま、異世界人が1年後帰還した後も再び日本に戻って来る動機になりうる、それだけじゃない。個人と個人の感情をもった繋がりは、国と国の繋がりにおける潤滑油にもなりうる。つまり今後も継続して関係を持つ鍵になるってこと。

ただの外交の駒ならまだいい。国家安全保障を左右しかねないキーパーソンなんだよ。普通の女子高生にそんな役目押し付けんなよ。このクソ政府が。


真理ちゃんの父ちゃん、あ、小職にとっては妻の妹の夫ね。あいつも問題だよ。すんなり初回面談のOK出しやがって。真理ちゃんってそんなにかわいくてあざとい子だったか? 自分の娘を国家機密に巻き込むことがどういうことか分かってるのか? あ、多分分かってないだろうな、政府内部でここまでの規模の騒ぎになってることは知らないはずだから。ていうかあいつも一応は監視対象だからね。真理ちゃんよりは軽いけど。‥‥ああ、真理ちゃんより軽いなんて言う日は来てほしくなかったな。

で、これからの会議で報告があるだろうけど、真理ちゃんの友達の‥‥誰だったかな、岡村咲希と高沢萌仁花? そうそう、その2人も対象に加わるから。ごめんね、この2人はさすがに何も悪くないしどちらかといえば理不尽寄りなんだけどさ、軽めのコントロール対象になるから。


本来なら職場以外でここまで突っ込んだ話をするのはよくないのだが、密閉された喫煙室くらいなら暗黙の了承でいいんじゃないか‥‥とは思う。とはいえこっちも少しは遠慮する。


「時間ありそうなら一杯どうだい?」

「‥‥すまん、しばらく酒は遠慮するわ。少なくとも7月まで」

「ははは、大変だな」

「まったくだよ」


背中をぽんと叩かれて、小職たちは喫煙ブースを退出する。


   ◇


さて、今日の関係省庁連絡会議は‥‥はぁ、鬱だよ。行きたくないよ。真理ちゃんの扱いが悪くなったらと思うと、気が気ではない。小職は真理ちゃんと親戚同士ってことはアリシアとの初回面談の前、自宅待機の話を聞いた時点で参事官に報告済だから、真理ちゃんに関して何かを決定するときは必ず参事官や別の人の許可をもらうことになってるんだけど、それ以外の大部分はそのままだし、引き続きこの案件を担当することになっている。


「モニカに刻まれたという隷従の紋章について現在の進捗を報告します。説明を求めた時アリシアは当初は平然としていましたが、詳細に確認を進めるにつれ次第に緊張を深める様子を確認しました。モニカはこちらの聞き取りに終始平然としており、問題点を認識しておらず、紋章に全く恐怖を抱いていないように見受けられます。異世界人については、毒見と称して従者を命の危機に晒す慣習もすでに確認しており、現代日本と常識が根本的に異なる可能性が高いものと見ております。引き続き日本の法律のもとで行動いただくよう継続して誘導いたします。この件に関しては警察庁や関連省庁とも連携し対応してまいります」


常識が違うというか、見た感じ中世ヨーロッパが一番それっぽいと思う。あ、小職は学者ではないからこれオフレコね。


「警察庁です。その常識の違いに起因して周囲に危害を及ぼす可能性は高いですか?」

「異世界人は今のところ日本の文化に順応しようとする姿勢を見せております。今後の経過次第ですが、現時点で大きな問題が起きる兆候は認められません」


あー、やっぱりその質問出てくるよね。日本人から見たら常識ないということになるよね。


「また鳥人クロエから空を飛びたいとの要望を受け付けております。しばらく空を飛ばないとつらくなるとのことです。厚労省の坂口さん、こちらについてはいかがでしょうか?」

「はい、厚労省の坂口です。治療との兼ね合いもあり原則として退院までは難しいかと思われますが、空を飛べないことで精神上影響があるとのことですので、必要に応じて専門家とも連携して対応を検討いたします。機密保持の観点から飛行制限も必要となりますので、警察庁とも協議いたします」

「文科省です。鳥人の飛行については教育の観点からも情報共有をお願いいたします」


入院中は激しい運動を控えるってのが日本の常識なんだけど、獣人や鳥人についてはわからないことも多いからね。ていうかアリシアたちは人間族っていうらしいんだけど、それもこの日本の人間と違うところはないか慎重に調べなければいけない。今のところ性器の一部を除いて大まかな差異はないことは分かっている。性器の部分は精密検査が必要だけど、紋章の一件もありできていない。異世界には男が存在しないということをマノラの暴行について聞き取る時に知ったのだけど、それも関係しているんだろうな。


‥‥でも多分、異世界みたいに自由に空を飛ぶのは難しいと思う。最悪の場合、飛行機から出して飛行機に戻ってもらうってのも考えなければいけないのかなあ。あー地球には飛行機や軍用機がたくさんとんでるからねえ。厳しいか。


「警察庁からは井上の登下校に同伴している2名の友人、岡村・高沢について報告いたします。この2名は校長からの聞き取りも含め簡易的に調査したところ事件前から井上と親しく、うち岡村は同じ中学出身とのことです。素行に問題はなく、また井上を週刊誌記者から守ろうとしているとの会話を私服警官も確認しており善意由来の行動と思われます。高沢の縁戚に前科がありますが、現在家族は縁戚との縁を切っているとのことで、現時点で特段の問題は認められません」


うわー、プライバシーもへったくれもないじゃん。この会議に名前が上がるってことは、不幸になるってことだよ。ねえ。まあ本人たちは全く知らないけどさ。はぁ。


さて、ここでもう一度小職から重要な報告だ。


「翻訳魔法について作動原理を詳細に確認しましたが、対象に軽い精神干渉が起きている可能性が指摘されます。安全性の観点から懸念があがる一方で意思疎通における実用性は高く、使用条件の整理が必要と考えます。今後場面によっては、翻訳魔法を一時的に解除し非魔法の通訳も必要かと思いますが、文科省の長谷部はせべさん、通訳体制の見通しはいかがでしょうか?」

「はい、回答いたします。言語解析開始から約一週間ですが、現時点では基本的な文法構造の把握段階です。引き続き解析は進めますが、実用的な通訳体制の整備には相応の時間を要する見込みです。一点確認ですが、高校教育において英語の授業への影響は想定されますか?」

「現時点では確認できておりません。影響の有無も含め、確認のうえ報告いたします」


一段落ついたところで、会議も後半。小職は再び手をあげる。


「内閣官房の赤荻です。研究についてのご質問ですが、異世界人に協力を依頼したところ、交換条件として異世界人による日本の研究を提案されました。現在官邸において安全保障および技術流出の観点から問題点の整理を進めております」

「警察庁です。研究内容がインフラや安全保障に直接関わらない場合も、現時点ではリスクの全体像が把握できていません。本件については個別具体的に慎重な検討を要すると考えます」


まあ、最終的に異世界人の研究は個別審査して許可制になるだろうなとは思う。その代わり日本人側の研究も自由ではなく政府の枠組みの中で管理されることになるだろうが。

しかし異世界人も交換条件出すようになるとは、交渉について内部で慎重に考えているだろうな。‥‥マノラか。政治学詳しいだろうし、あの7人の中では一番可能性がある。学者だから軍師とか参謀みたく実務的に立ち回れるほどの技量があるかは不明だが、我々の考えていることもある程度は読まれているのだろうな。問題行動はあるが、それを差し引いても向こうの世界の政治体制が分かるのは便利だから我々としても深く関わりたいところだ。‥‥マノラのために研究チームに女性を増やしたほうがいいんだろうか。まあ、そこまで細かいところは文科省の領分か。

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