22.班長会
お風呂、夕飯を終えるとあっという間に1日目も就寝モードになる。
畳敷きの宴会場に班長たちが集められていた。
先生から、注意事項と明日のことを説明された。
このあと、班長たちはそれぞれ部屋に戻って部屋のメンバーに説明するようだ。
「どうせ貸切なんだから、館内放送で全員にまとめて言えばよくない?」
先生と一緒に、来た順に車座になる。宗佑を見つけてささっと近づいてきたあの子が声を潜めて話かけてきた。
合理的。
「こういうのって、軍隊教育みたいなものでさ、」
宗佑が解説しようとしたが、あの子は全く興味がなさそうに、こちらを見ることもなく、しおりのメモ欄に絵を描いていた。
宗佑は自分のしおりのメモ欄に、「ミヤと付き合うの?」小さく字を書いてあの子の視界にいれた。
あの子の様子は、動揺した感じではなかった。
あの子はぐい、と宗佑のしおりを自分に引き寄せると、なんで?と書いた。
きこえてた
腕を伸ばして書き足す。
あの子の視線が、宗佑が鉛筆を持つ手を震わせた。
じゃあ知ってるじゃん
ぐい、と宗佑の目の前にしおりを押し返し、あの子はもうこちらを見なかった。心臓が、胸全部が、耳が、自分自身が全部どきどきと音を立てて、いたい。
宗佑は丁寧に丁寧に、跡形もなく消えるように細心の注意を払ってすべてを消した。宗佑の字は全部、筆圧すらも残らず消えたけど、あの子の字はすこし濃くて、きれいには消えなかった。
班長会の伝達事項を何一つメモしていなかった宗佑は、そのあと必死で反対隣に座るこのメモをのぞき、カンニングして写した。合ってるのかよく分からないけど、この際どうでもいい。あの子のほうをちらりとみたが、あの子は落書きを再開していて、結局一文字もメモをとっていないようだった。
部屋の方に戻ると、廊下も含めてすこしターンダウンされ、暗くなっていた。班長だけ特別。エリート心をくすぐるようだった。班長メンバーたちは、その中を声は潜めながらも胸を張って歩いた。
部屋に戻ると、みんなパジャマにきがえていた。
スポーツウェアの子が目立つ。キュッと足首が締まり、足が速そうに見える。宗佑もガサガサと荷物をあさった。青と白のチェックの服に、パジャマと書いてあった。また、いつもの乗馬のマークだ。ぐい、とカバンのそこにその袋を戻して、宗佑はそのまま寝るごとにした。こちらのほうが、この場の雰囲気に合いそうだ。
ぽんとみんなの前にしおりを投げて、伝達ー、と伝えた。皆それぞれのぞき込んでいた。宗佑は真新しい歯ブラシセットに、乗馬のマークのフカフカのタオルを持って洗面台に向かった。
部屋の方からみんなの声がする。
「さっき、宮崎さん告ったらしいよ」
「え、まじ」
「え、だれだれだれ」
「つきあったってこと」
口々に、ざわざわ。
付き合ったんじゃないの、だって宮崎さんだよ
断るとかなくない
そっか、え、だれに?だれと?
ざわざわ。
その場は、宗佑の認識とは違う方向にまとまっていった。
これが、仲良し同士で班分けされていたら!
宗佑のクラスは、不登校で学校に来られていない児童がいて、仲良しグループの中にはいるのはハードルが高いから、という配慮のもとに全員がくじ引きによる班分けになった。
結局、このウィンタースクールに、その子は来なかった。まあそうか。行事だから来れる、なんてみんなが望む幻想の一部だ。もしかしたらそういう勇気が出せる子もいるかもしれない。でも、一部だ。そんな安直なものじゃないよね。
とりあえずさ、その子が来ないなら、仲良し同士で班分けしなおしてくれたらいいのに!宗佑でさえそう思った。もしかしたら、その子は朝ギリギリまでたたかっていたのかもしれないよな。思い直す。来たいとか来たくないとか、そういう次元じゃないのかもしれない。理解を示したい自分と、楽しめた未来に期待したかった自分が半分ずつだった。
夜、盛り上がって寝られないかも、なんて言っていたけれど、対して話すこともないメンバーで、さっとみんな寝た。夜は長かった。




