俺の進路も考えてみませんか?
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お昼休みのひと時。
「屋上は気持ちいいな」
「そうねー。人もあまり来ないし、いい穴場よね」
「うちの学校、割とこういうところ緩いよな。普通は立ち入り禁止とかなんだろうけど」
「生徒の自主性を重んじるだっけ? ま、恩恵に与りましょ」
「そだな。それはともかく腹減ったぜ」
「お腹空いたわね。今日はあたしのお弁当でいいのよね?」
「That's right.」
「あんたネイティブ加減に磨きがかかってない? はい、お弁当」
「いつもありがとね。英会話はゲームで覚えるのが一番だ」
「ゲーム中ってものすごい汚い会話が飛び交ってる気がするんだけど?」
「妹がログインして来るとなぜか皆紳士になるんだよな。お前さっきまでFで始まる単語乱発しとったくせにーってな」
「ぶははは、男の子だねぇ」
「結構、根はいい奴が多いぜ。あちらさんは総じてフレンドリーだし。ログインすれば向こうから挨拶してくる仲の奴も何人かいるしな」
「ふーん、楽しそうね」
「まぁ、そうは言っても最近は一時期程はハマッてないけどね。3Dプリンタが届いたんでそっちに時間を取られてるのもあって」
「あら、届いてたのね。どう、早速使ってみた?」
「おう。動作確認がてら、お試し用3Dデータを出力してみたんだけど特に問題は無かったな。ただ、結構やかましいのと出力にえらい時間がかかるのには閉口するな」
「そうなんだ。時間がかかるってどれくらいかかるの?」
「物によってはになるけど…… 多分、複雑で大きいと丸1日くらいかかるんじゃないかな?」
「えーーー!? そんなにかかるの?」
「いや、まだ実際にそこまでのデータを出力したわけじゃないんで本当はどうかは分からないけれど、おそらくそんな気がする」
「へーー。うるさくて時間がかかるのはちょっと困りものね」
「そうなんだよ。だから夜中は動かせないんで、朝学校に行くときに出力を開始するようにしてる。昼間は家に誰もいないし、今作ってる実験モデルくらいだったら昼前には終わってるし」
「実験モデルって?」
「ああ、単純な形のやつだよ。例えば直方体と三角錐を組み合わせたようなものとか。まだ全然慣れてなくて今は手探りでやってる感じかな」
「ふーん。……ねえ、ハートマークとか作れる?」
「ああ、それくらいなら簡単だぞ」
「文字も入れられる?」
「文字か…… 確かモデリングソフトにフォントを立体化させる機能があったはずだから、それを組み合わせればいけると思うぞ」
「じゃじゃじゃじゃあさ、あたしとあんたの名前の入ったハートマーク作れない? キーホルダーにしたいの」
「おお、大胆だなおい。いいぞ、まだやったことない機能使うから多少試行錯誤することになるけど。しばらく時間をくれ」
「わ、やった! 嬉しい! それって世界で一つだけのオリジナルよね?」
「そうだな。俺がデータ作るんだからそうなるわな。うん、なんかそう考えるとキーホルダー一個でも愛着がわくな」
「えへへー 友達に自慢しちゃう」
「ははは、ほどほどにな」
「でさ、妹ちゃんフィギュアっていつ作れそう?」
「いやー、モデリングソフトって一朝一夕で何とかなるもんじゃないわ。あれは奥深い。今のところ夏休みの課題って考えてる。そこそこちゃんと時間を取らないと無理だってわかった」
「へー、結構大変なのね?」
「大変は大変だけど、やり甲斐はあるな。3Dモデリングそのものにも興味が出てきて、ちょっとヤバイかも」
「ヤバイって?」
「のめり込みそう」
「あんたね、受験があるんだからちゃんと控えてよ?」
「わかってるって。だから時間を区切ってやるようにしてるよ。妹にも俺がハマッてたら注意をしてくれるように頼んでるし」
「だったらいいけどね。妹ちゃんもお兄さんの面倒を見なけりゃならないなんて大変だこと」
「えーいうるさい」
「ふふ。で、製作系趣味でハマれそうなのが出来た感想は?」
「そうだなー。もっと早く手を出しておきたかったってのが本心。正直、こんなに面白いとは思わなかった」
「それは良かったわね。あたしは多分そうなるんじゃないかなーって思ってはいたけど」
「この趣味、勧めてくれてありがとうな。俺、実は進路なんてなんも考えてなかったんだけど、物を作るってのがこんなに面白いのならこの方面に進むのもいいかなって最近思い始めててさ。どうかな?」
「いいんじゃない? 絶対いいと思うわよ? 特に他に無いんでしょ? じゃあ今実際に面白いと思ってることがあればそれを最有力候補にしても何も問題はないと思うわ」
「そうかー。そうだなー。3Dモデリング技術とか仕事にも生かせそうだしなー」
「そうそう。大学でその道に進むのもいいんじゃない? 理工学部とかかな?」
「おお。まったく白紙だった進路がどんどん具体化してきたぞ」
「まあ、今はとりとめもなく話してるだけだけど、ちょっと真剣に考えてみたらどうかしら? 白紙よりはマシでしょ?」
「ああ、そうするよ。ありがとうな。なんか夢が広がってきた」
「夢って?」
「例えば…… お前が小学校の先生になって子供たちに勉強を教えるのに、オリジナルの教材を俺が作るとか」
「あ、なんかそれいい! 楽しそう!」
「だろ? お前と二人で、どういうのがいいのかとかさ、一緒に考えて作るの」
「いいわねー…… え、でも、そ、それって………… もしかしてあたしとずっと一緒にいてくれるってこと?」
「あ………… 今のは無し。忘れてくれ」
「ちょ、なによ!? どういうこと? あたしのことが嫌いなの!?」
「いや、そうじゃなくて」
「じゃあ何よ!?」
「その、なんだ、そういうことはまた改めてだな」
「え……」
「きちんとだな」
「……」
「その…… な?」
「……」
「……」
「……はい」
「うん。ごめんな」
「ううん。その、怒ってごめんね」
「うん」
「……」
「好きだよ」
「……」
「……」
「……うん」
「真っ赤だな」
「ううううううるさい! 泣ぐぞ!」
「泣きながら言うなよ」
「うるざい! うるざい!」
「ごめんごめん」
「ううううううううう」
「頭撫でちゃる」
「ううううううううう」
「いい子いい子」
「ううううううううう」
「好き」
「ううううううううう」
進路というか人生が見えた気がした
まだチューもしてないのに。




