おじさま道は険しいのですよ?
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おっさんとおじさまは違います。
「ぜい、ぜい、ちょっとした、丘って言っても、結構な、高さ、ある、ふいいい」
「はあ、はあ、いい、運動には、なるわ、ねえ」
「お前が、走るから、ふう、こんな、目に、ふうう」
「ふう、はあ、ちょっと、はしゃぎすぎた、かしら」
「ふうううううううううう」
「はああああああああああ」
「ふうう。あそこのベンチに座ろう」
「はあ。いいわね」
「ふう、よっこいしょっと」
「はあ、おっさんくさいわよ」
「掛け声は大事」
「くしゃみの後は?」
「コンチクショーベランメー」
「おっさんオブおっさん」
「俺はおっさん道を究めようと思っている」
「ちょっとやめてよ」
「男が年を取れば誰もがおっさんになるのだ。ならば、若いうちからおっさん度を磨くのが男の本懐というもの」
「おっさん度。男の本懐」
「ふっ。女、子供にはわからん崇高なる道だ」
「馬鹿じゃないの。女子からすればおっさんに価値は無いのよ? ゼロどころかマイナスよ?」
「何!? おっさんを目指すのは間違いなのか?」
「あーのーねー。どこの世界におっさんが好きな女子がいると思ってるの?」
「いや、だって渋い中年男性が好きだってのもいるって聞いたぞ?」
「それは『おじさま』よ。おっさんとは全く違う別次元の男よ。おっさんは悪、おじさまは正義」
「うーむ、そうなのか。おじさまは『よっこいしょ』とは」
「言わない」
「はっくしょんコンチクショーベランメー」
「ありえない。そもそもおじさまはくしゃみなどしない」
「何だと!? おじさまはくしゃみしないのか!?」
「そうよ、女子の前ではそんなことしないのよ。エチケットなのよ。当然よ」
「うーむ、全然違うんだな。俺はおっさんを目指していたぞ」
「今日限りであんたのおっさん道はおじさま道に分岐しました。おじさま道に邁進してください。でないと青春は暗黒に包まれます」
「ふおっ!? それはいかん。おじさま道がどのようなものであるかわからんが、取り急ぎおっさん道は一時保留としよう」
「再開の可能性を残すな」
「では問うが、具体的な違いを教えてくれないか。よっこいしょとベランメーは置いといて」
「そうね、例えばここからは町が一望できるわね。そして今まさに空が夕焼けに染まろうとしている」
「おう」
「おっさんだとね、『こんな景色見とっても腹は膨れんわ』と言う」
「割とひどい」
「おじさまだと、『夕日が綺麗だね。町の明かりもポツポツと点き始めてる。あの灯りの数だけそれぞれの幸せがあると思うと、僕は君との明かりを灯したくなるんだ』と言う」
「長い。どっかで聞いたことあるような」
「た、例えばよ! あたしとしては、あんたにはおっさん道じゃなくておじさま道を進んで欲しいわけ。わかる?」
「ううむ、なるほど確かにおっさんはひどいかもしれんな」
「わかればいいのよ。で、よ。あんたはこの景色を見てあたしに何て言うの?」
「いきなり来た! 抜き打ち実地試験」
「厳しく採点するわよ?」
「そ、そうだな。えーっと、確か、夕日が綺麗だね。町の明かりもポツポツと点き」
「それパクリ。カンニング。0点だからね? やり直し」
「ま、まぁそうだよな。それでは。…………あーっと。んん、……ごらん、山向こうに日が沈んで、空は青と赤のグラデーションに染まってるね。まるでこの瞬間を祝福しているようだ。夕日が射して君の横顔が茜色に染まっている。僕の時間は神様に止められてしまったよ。……とか?」
「あああああんた、そんなセリフどこで覚えてきたの!?」
「いや、今必死になって考えた。まずかったか?」
「あんた変なところで才能あるわね!? あーっと、えーっと、まぁまぁ及第点よ。ギリギリ合格としといてあげるわ」
「そ、そうか。かなり知恵を絞ったつもりだったが、おじさま道は大変なんだな。これは修行が必要だ」
「ちょちょちょっと、あんた、修行はあたし以外の人とやっちゃだめよ? わかった?」
「えーーー!? そんなぁ、それじゃなかなか道が究められないじゃん。実践が重要じゃないの?」
「それはそうなんだけど、おじさま道はあたし以外禁止! これは決定事項!」
「うーん、まぁ、お前がそう言うんならわかったよ」
「そう、それでいいのよ」
「ふむ。まあ実際、この景色は綺麗だよな。……お前、えらく赤くないか?」
「うううううううるさい! 夕日のせいだよ!」
「そ、そうか? うーん、それにしてもやっぱ赤いような…」
「だまれ! 景色を見てろ! こっち見んな!」
「いや、景色も綺麗だけど、お前も綺麗だしな」
「な!」
「あれ、さらに赤くなった?」
「ううっ」
「赤い」
「うっ」
「綺麗」
「……」
「ずーっと見ちゃう」
「……」
日が沈み切るまで固まってた。
たらしかよ。




