083 執事のフィン、観光動画な件
画面中央に『Dreams hopes iron blood』のロゴが浮かび上がり、優雅なBGMとともに、執事服に身を包んだフィンのアバターが画面手前に現れて軽く一礼する。
「初めましての方は初めまして、執事のフィンです。今回は、多くの方からご好評をいただいているVRゲーム『Dreams hopes iron blood』、通称DHIBの魅力を伝えるべく、簡単な観光ご紹介動画を撮影してまいりました」
背景には、見渡す限りの星海と、そこに浮かぶ巨大な黒鉄の宇宙都市が広がる。
「この『DHIB』というゲームは、一言で表すなら『何でもできる世界』です。
重厚な世界観やフレーバーテキストは確かに存在はしますが、複雑で縛りの厳しいメインストーリーや歴史的背景はあえて最小限に留められています。なぜなら――この世界では、プレイヤーの皆様が物語の主人公だからです」
画面が切り替わり、様々なプレイヤーが冒険やクラフト、飛行や戦闘を楽しんでいるダイジェスト映像が流れる。
「戦場を駆け抜けるエースパイロットになるも良し、広大な宇宙を旅する商人や冒険者になるも良し、街でまったりとお店を開くも良し。自分だけの好きなプレイ方法を見つけて、この世界での『もう一つのセカンドライフ』を存分に楽しめる。誰でも気軽に遊べて、自由気ままに没頭できるのが、このVRゲームの魅力となっています」
場面は切り替わり、黒を基調とした重厚で無機質な帝国軍拠点へ。
「さて、まず最初にやってまいりましたのは、軍国主義的な重工業デザインが立ち並ぶ『帝国側』のエリアになります」
突然「フィン様だーーっ!!」「本物だ!スクショ撮らせてください!」とプレイヤーに囲まれそうになるフィンの映像。
「……あはは。ログイン直後の設定をうっかりミスしてしまいまして、一般プレイヤーの皆様に思いっきり声をかけられてしまいました。『ごめんなさい、今日はお仕事中なんです』ということで、仕事用のシークレットモードを適用して事なきを得ました!街中でのお声がけ、ありがとうございます」
場面は漆黒の星間定期船の展望室へ。窓の外を流れる光速ジャンプの光の帯と、やがて視界いっぱいに広がるエメラルドグリーンの王国星。
「気を取り直しまして、帝国側から星間定期連絡船に乗り込み、緑と白亜の都市が広がる『王国側』の星へと航行します。見てください、この窓の外に広がる星海の美しさ。広大な宇宙をこうして船で旅できるなんて、まさにこのゲームならではの醍醐味ですね」
場面は王国の賑やかなバザー街から、鐘楼の陰にある隠れた地下ドックへ。
「そして、このゲームの面白いところは、メインの大通りだけでなく、こういった街の隠しスポットにも様々な『遊び場』が用意されている点です。
例えばこちらは有志やNPCによって運営されている『人型兵器の非公式レース場』です!人型兵器の機体さえあれば、どなたでもエントリーが可能となっております。冒険の合間に、自慢の愛機でスピードを競い合うのも楽しいかもしれませんね」
画面には、出撃シリンダーからせり上がってくる『強襲用型カラドボルグ』の雄姿。
「それでは早速、僕もレースに体験参加してみましょう!
なお、僕の愛機カラドボルグは少し特殊な仕様となっておりますので、本来はこのようなレース場で使うような機体ではないです」
レース中の映像。バイク型マシンを駆るプレイヤーとの熾烈なデッドヒート。最後にカラドボルグが機体を地面に激しく擦り付け、火花を散らしながら超絶なインカットで抜き去るシーン。
「ごらんの通り、全く使いこなせておりません!機体性能自体は僕のカラドボルグの方が圧倒的に上なのですが、見ての通りの超接戦でした。プレイヤー自身の技術さえ向上させれば、お隣のプレイヤー様のようにこの様なモンスターバイクで凄まじい曲芸走行だってできてしまう奥深さがあります。
今回はたまたま最後に運良く前に出られましたが……正直、次は多分勝てませんね。これは完全にまぐれの勝利だったと言えるでしょう」
場面は一転して、白亜の街並みにあるオシャレなカフェのテラス席へ。テーブルの上には出来立てのケーキと湯気の立つコーヒー。
「レースの後は、王国の街中にある素敵なカフェでひと休みです。見てください、このケーキ!焼き目やクリームの質感がとんでもない解像度で再現されています。なんと、手に持ったフォークでサクッとリアルに切り分けることだって出来るんですよ。すごいですね!」
フォークでケーキを一口切り分け、コーヒーのカップを持ち上げる動作。
「コーヒーの再現度も本当に見事です。香りまで漂ってきそうな香ばしさで、まるで本物そのもの。もしよろしければ、画面の前の皆様も手元に本物のコーヒーや紅茶を用意して、一緒にティータイムを楽しむのも大いにアリですね!」
映像は再び、王国の広場で優しく微笑むフィンのアップへ。
「ざっと駆け足で見て回りましたが、『Dreams hopes iron blood』の魅力、少しでも伝わりましたでしょうか?戦いたい人も、走りたい人も、ただ景色や雰囲気を楽しんで癒やされたい人も、誰もが自分らしくあれる世界です。是非、この機会に皆様もこの世界へ遊びに来てみてはいかがでしょうか?それではまた、どこかの空の下でお会いしましょう。執事のフィンでした」




