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男性が少ない世界で執事っぽいVしてます  作者: そういう作品だったらいいなって
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056 個人Vチューバーも大変な件

 パソコンの画面の青白い光だけが、暗い部屋の壁をぼんやりと照らしていた。

カーテンは年中閉め切ったままで、外の世界が昼なのか夜なのかも、もう何年も正確には分からない。


 私のVチューバーの名前はシンディ。

世間一般の基準で言えば、立派な「引きこもり」だ。


 小さな頃から、要領が良い方ではなかったけれど、小学校、中学校、そして高校まではどうにか周りに合わせて学校に通うことができた。


 けれど、自分の内面にある脆さや、人間関係のちょっとしたすれ違い、大きな挫折をうまく受け止めきれなくなり、大学受験に失敗したことをきっかけに、私の時間は完全に止まってしまった。


 人の目が怖い。声を聞くだけで動悸がする。誰かと会話をすることすら、今の私には途方もなく高い壁だった。


 分かるかな?家の中では普通なんだ。けど外に出ようとすると震えるように縮こまっちゃうんだ。


 玄関のドアノブに触れることさえできなくなり、外の世界から完全に遮断された部屋の中で、私はただ息をしているだけの存在になった。


 それでも、人間というのはわがままだ。


 どれほど社会から逃げ出し、誰とも関わらない道を選んだつもりでも。


「誰かと繋がっていたい」「自分の存在を誰かに認めてほしい」という小さな灯火までは完全に消し去ることはできなかった。


「……何か、私にできることはないかな」


 外に出て働くことはできない。

 面接なんて到底無理だ。

 人と対面して会話をする仕事なんて夢のまた夢。


 だけど、この暗い部屋のパソコンの画面越しなら、もしかしたら。そんなすがりつくような思いで、私はVチューバーとして活動を始めることにした。


 最初は、誰でも使える無料の適当なアバターを借りて、名前も自分で決めた。

『sindeii』。

 それは、社会からドロップアウトして、心も身体も死んだも同然の今の自分をそのまま表した、自嘲の塊のような名前だった。


 配信を始めても、誰も来なかった。

当たり前だ。宣伝もしていなければ、上手なトークができるわけでもない。ただ画面の隅っこで、誰に見られることもなく、一人で黙々と農場系の地味なゲームを遊んでいるだけ。画面の向こうの誰かと話す勇気すらなかったから、ただひたすら画面に向かって呟くだけの、独り言のような配信だった。


――あの人が来るまでは。


 その日も、私は死んだような目で、一人淡々と画面を見つめていた。

 Vチューバーだからって、死んだような目っておかしな話だとおもうよね。

でも、目の動いてなければ口も全然動いてなかったら、それはただの人形みたいなもので。他人から見ると怪しく見えたんだ。


 そこに、たった一人の一見さんがやってきた。それが、のちに『Friday』と呼ばれることになる女性だった。


Friday『おい!大丈夫か!?』

Friday『死んだような名前でそんな暗いゲームをして……死んだらダメだぞ!生きてくれ!』


 Friday氏は、私の名前を「死んでいい」と勘違いし、文字通り慌てふためきながらチャットに飛び込んできたのだ。

 私はその必死すぎる勘違いに驚きながらも、カタカタと震える手でキーボードを叩いて返事をした。

 配信中でもメッセージを打ち込むことで視聴者のチャット欄で応対ができることのプラットフォームには感謝していた。


sindeii『……あ、あの……違います。死ぬ気なんて、ないです……』

Friday『なんだ、生きてるのか? よかった……!』

sindeii『ただ、今の私は社会に出られなくて……何か、少しでも外の世界と繋がりたくて、気分転換にこうしてゲームをしながら配信をしているんです……。名前も、社会的には死んでいるも同然だから、自虐のつもりで『sindeii』ってつけただけで……』


 画面の向こうのFriday氏は、私のその不格好で情けない告白を、笑うことも、否定することもなく、ただじっと聞いてくれた。

そして、その日の配信が終わる間際、彼女はこう言ってくれたのだ。


Friday『そうか……。それなら、今日からお前は『しんでいい』じゃなくて、『Cindy』と書いて『シンディ』だ。生きて、ここでこうして配信をしているんだから』


 それが、私のVチューバー人生で初めて、誰かと心を通わせた瞬間だった。


 それから、Friday氏は驚くべき行動に出た。

彼女は自分の知り合いで、イラストレーターとして技術を持っていた『Misfortune』氏に私の話を熱心に持ち込んでくれたのだ。事情を聞いたMisfortune氏は、「それなら、私が彼女にふさわしい姿を作ってやろう」と、どこか儚げな銀髪のオリジナルアバターを、一切の見返りも求めず、無料で仕立て上げてくれた。


 無料アバターだった私が、ちゃんとした「自分の姿」を手に入れた瞬間だった。


 『Misfortune』氏と『Friday』氏。

その二人との交流が始まってから、私の毎日は少しずつ変わり始めた。


 相変わらず、私の配信には他の一般の視聴者はほとんど来ない。来るのはいつも、その二人だけだった。けれど、その二人がチャットで他愛のない話を振ってくれたり、私の下手くそなゲームプレイにツッコミを入れてくれたりするだけで、部屋の空気が温かくなっていくのが分かった。


「私……こんな風に、誰かと笑い合ってもいいんだ……」


 外に出られない無力な人間でも、この狭い部屋の片隅で、誰かの「友達」になれる。視聴者が全然増えなくても、そんなことはもうどうでもよかった。私には、この二人というかけがえのない居場所ができたのだから。私はそれだけで、十分すぎるほど幸せだった。


 ただ、私が遊んでいるゲームはどうしても地味なものが多かった。農場を耕したり、ただ淡々と作業をしたりするだけのゲーム。だから、新しい人がふらっと入ってきても、すぐに退屈して去ってしまうことがほとんどだった。


 それでも、私は幸せだった。あの二人がいれば、それだけでよかったから。


――それから時は流れて。


 その日、相変わらず私は、殺風景な荒野の真ん中でひたすらごつごつとした岩や石を積み上げるだけの、まるで賽の河原のような地味なゲームを遊んでいた。


 このゲームの特徴は視聴者が参加できて一緒に遊べる簡単なゲームで、一人でも出来るし、仲間とも遊べる。そしてそれほどスペックもいらない基本のゲームだったので、何度かMisfortune氏とFriday氏とも遊べた。

 ただ二人は我慢強くないのか、何度もFワードを連呼しててびっくりしちゃったけど……。


 それから何度もプレイして、相変わらずの不器用さで、少し高く積み上げるとバランスを崩してガラガラと崩れ落ちる。それを何度も何度も、無言で繰り返すだけの苦行のような配信。それでも徐々に慣れてくると、何段も積み上げる事が出来るようになってきた。それを二人が喜んでくれて私も嬉しかった。


 そこに、ひょっこりと新しいアカウントがやってきた。それが、『Nobody』氏だった。Nobody氏は、ひたすら石を積んでは崩し、積んでは崩している光景をしばらく無言で眺めていた。

 そして、耐えかねたようにチャットで聞いてきてくれた。


Nobody『おい……なんだこのゲームは。どうしてこの子は、石を積んでいるんだ……?』


 見かねたMisfortune氏とFriday氏が、すかさずチャットで説明に入った。


Misfortune『いや、これはそういうゲームなんだよ』

Friday『彼女はな、こうやって石を積むことで、心の平穏を保っているんだ……!』


 それから事の詳細を聞いたNobody氏は、なぜかチャット欄で文字通り「号泣」した。

Nobody『そんな……! 社会の片隅で、誰にも見られず、ただ一人で石を続ける姿があまりにも健気で、あまりにも切なすぎる……!!私は今日から、この子の視聴者になる……!!』


 こうして、私と、たった三人の優しい女性の常連たちによる、奇妙で温かい「苦行配信」の構図ができあがった。

Friday氏、Misfortune氏、Nobody氏。


 世間から見ればちっぽけで、社会のレールから外れた吹き溜まりのような場所かもしれない。だけど、私にとっては、ここが世界で一番温かい場所だった。


 それから、何日も、何週間も、そんな平和な時間が過ぎていった。

私は相変わらず外に出ることはできないけれど、画面の向こうの彼女たちと話すために、毎日パソコンの前に座るのが楽しみになっていた。少しずつ、自分の声で言葉を紡ぐこともできるようになっていた。言葉は詰まるけど、それでも話せるようになってきた。変な笑い声も増えちゃったけど。


 すると、


Nobody『もっと役に入りきったほうが良い!』

Friday『どうせなら、このまま引き篭もりキャラにしよう!』

Misfortune『自分の事をネタに出来るくらい、元気になれればそれもいいかもしれないね』


 といってくれて、思わず笑ってしまった。

 それも良いのかなって、なんだか変な努力をした結果シンディというキャラクターが出来上がってきた。


 今のシンディがあるのは本当に奇跡の様な存在。


――そして、あの「事件」が起きたのは、そんな穏やかな日のことだった。



 いつも通り、その日も三人のお友達――Misfortune、Friday、Nobodyが見守る中、私は画面の向こうでいつものように石を積み上げていた。

 お世辞にも華やかとは言えない、地味で、静かで、私たちの世界だけの時間が流れていたはずだった。


――その時だった。


 チャット欄の隅っこに、一つのアカウントがひっそりと入室してきた。

 画面のシステム上、このプラットフォームでは男性のアカウントが入室すると、ネームプレートやIDの表示カラーが特有の色へと変化するというギミックがある。


『kojinyou_fin』


 名前を見たとき、大声をあげそうになった。

 最初はフィン様の偽者かと思った。けれどそんな事をする度胸のある人は絶対にいない。

 あと、多分フィン様自身はその仕様を全く知らなかったのだと思う。

 チャット欄に張り付いていたMisfortune、Friday、Nobodyの三人は、その一瞬の変化にすぐ気がついた。


(((男性のアカウント……!?なんでフィン様?フィン様だよね!)))


 三人は一斉に息を呑み、動揺を走らせた。

しかし、そのアカウント名を見た瞬間、彼女たちの動揺は恐怖と圧倒的な緊張へと変わった。

 今やコアな世界でも知る人は知る男性Vチューバー。

 男性の為、あまり騒いだり出来ない、時の人。


 圧倒的なカリスマと狂気的なまでの輝きを放つ、あの『フィン』様だった。


(……え?うそ……どうして……?)


 頭が真っ白になった。

私たちの小さな、誰も覗かないようなこの小さな家に、フィン様が迷い込んできたのだ。


 それでも緊急時を思い出して直ぐに私は配信者の専用ボタンを押した。

 それはFriday氏が面白話の一つとして教えてくれた機能のほんの些細な事。


Friday『もしも、配信人数を制限したかったら制限ボタンを押すんだよ。シンディはまだまだ大変な時なんだからね』


 これによって、いきなり沢山の視聴者が増えることもないし、ここからはシークレット配信になるから私の安全は保たれる。


 そんな中チャット欄に居た三人の女性たちが冷や汗を流しながら、必死にパニックを抑え込んでいた。


(ちょっと待って、なんでフィン様がここに!?)

(気づかれないようにしなきゃ、彼女の心臓が持たない!)

(静かに、息を潜めて見守るらないと……!)


 手元が狂い、せっかく積み上げた石の塔が、ガラガラガラと音を立てて盛大に崩れ落ちた。


「あ、あわわわ……っ!」


 私は息を呑み、血の気が引くのを感じながら、青白い光を放つモニターを見つめた。

 思わず零れた情けない悲鳴と共に、マウスを握っていた手が盛大に痙攣した。

画面の中で、石の塔が、お城の崩壊劇のように盛大に砕け散る。


 頭の中が真っ白になり、私は椅子の上で小さく丸まった。


(どうしよう、どうしよう、どうしよう……!)

「……ふ、ふふふ……。ふひひひ……」


Friday『大丈夫かシンディ!』

Misfortune『石を崩したショックで精神が崩壊してるよシンディ!』

Nobody『いつもよりも気持ちが荒れてるよシンディ!落ち着けシンディ!』


 心臓が不規則に跳ね回り、呼吸が浅くなる。冷や汗が背中を伝うのが分かった。

 もしかして私の電脳空間のどこかにバグでも発生して、悪霊でも呼び込んでしまったのだろうか。


 しかし、チャット欄の隅っこでは、先ほどから三人の「お友達」たちが必死に私を励まそうと、ものすごい勢いで私だけに見えるシークレットメッセージを飛ばし続けていた。


Friday【シンディ! 落ち着け、深呼吸だ!気絶するな!】

Misfortune【大丈夫、画面の向こうの彼はただの物好きよ……多分だけど!とにかく平常心を保って!】

Nobody【シンディが石を崩したショックで宇宙の真理に目覚めかけてる!しっかりしろ!】


 みんなの必死のパニックと優しさが、痛いほど伝わってくる。

そうだよね、私にはこの3人がいてくれる。いくら相手がすごい人だとしても、私はここでいつも通り、ただの「シンディ」でいなくちゃいけない。


 私はプルプルと震える手でキーボードに触れ、何とか画面の向こうの不気味さを隠そうと、声をしぼり出した。


kojinyou_fin『なんで石を積んでるのですか?』


「ひぎっ!?」


 自分でも驚くほど上ずった、裏返った声がマイクを通じて響く。

あぁ、これじゃあ完全に変質者だ。逃げ出される、絶対に通報される。

心の中で盛大に土下座しながら、私は冷や汗を拭った。


「あ、あわわわわ……し、新規の……新規の方が……!」


 焦るな私。みんなだってこの場から逃げないでいるんだ。

 シンディ、私はシンディ!Vチューバーなんだから。


Friday【私たちだって一緒だよ】

Misfortune【フィン様なんかに負けるな!】

Nobody【呼吸を整えろシンディ!】


「ご、ご新規さん、いらっしゃい……。こ、ここは、そういうゲームだからね。ただ石を積むだけ。ひたすら、高く、高く石を積むだけなんだよ……ふふふ……ふひひひ……」


Friday【良いよシンディ!】

Misfortune【説明は私達に任せて!】

Nobody【そのままがんばれシンディ!あと男性相手のAI判定でBANされたらごめんね】


 みんな男性側にも警告様のボタンがあるのに、そんな事も臆せずに冷静を保ってこちらにコメントを残してくれた。


Misfortune『新顔かな?力抜けよ、びびらないびびらない』

Friday『素人は四段いければ良いほうだから』

Nobody『このゲーム、ただ石を積むだけなのに妙に奥が深いんだよ。シンディはこれでも縦積み十段までいけるツワモノだからな』

Nobody『今やってるのは、一番難しい「たて積みモード」。ほらシンディ、新規さんが見に来てくれてたぞ!ちゃんと挨拶!』


 挨拶って言われても!

私は引きこもりで、まともに人と目を合わせて話すことすらできない人間なのだ。そんな私が、よりにもよって今をときめく人に話しかけられている。


 けれど、ここで無視をしたり、怯えて逃げ出したりしたら、せっかくここまでお友達と一緒に築き上げてきた「石積み配信者としての誇り」が音を立てて崩れてしまう。


 私は唇を噛み締め、震える声をどうにかマイクに近づけた。


「ふ、ふふ……。石積み三年、地味なVチューバーのシンディです……。い、以後お見知りおきを……ふひひ」


 私はマウスを拾い上げ、散らばった石をもう一度画面の真ん中に引き寄せた。

 我ながら、闇を煮詰めたような不気味な笑い声になってしまった。


Misfortune『たまに情緒のネジがぶっ壊れるけど、中身はいい奴だから許してやってね』

Friday『昔は「しんでいい」って名前を、「シンディ」までに改変させて我々で手塩にかけて成長させたんだ』

Nobody『誇っていいぞ、シンディには私たちがついているからな』


 それでも大事な友達がサポートしてくれる。

 私は思わずに泣きそうになった。


 普通の人間ならここで「うわ、関わらんとこ」と即座にブラウザバックするはずだ。


 しかし、画面の向こうの『kojinyou_fin』は、すぐに立ち去らなかった。


kojinyou_fin「これって、『本当』に石を積むだけなんですか?」

Misfortune『はい』

Friday『そのとおりで』

Nobody『イグザクトリー!』


 その質問に、みんなが素早く答えてくれる。

 3人がまるで自分のことのように必死に弁護してくれる姿を見て、私の胸が熱くなった。誰も私を責めない。私を否定せず、守ろうとしてくれる。


 私は少しだけ勇気を出して、目を開けた。そして、マウスを動かして新しく石を拾い上げながら、ポツリと呟いた。


「これを……これをやるとね、不思議と心が落ち着くんだよ……ふひひ。是非、新規さんもやってみて欲しいな……。心がすっごく、穏やかになるヨ……。あ、一応、二人で協力して高い塔を目指す『協力モード』もあるから、もしよかったら、今度一緒に誰かとやってみてね……ふひひひ」


 画面の向こうで、その言葉を『kojinyou_fin』がじっと見ているような気がした。

少しの沈黙が流れる。


Misfortune【シンディーーー!】

Nobody【それは絶対に逆効果ーーー!】

Friday【私達それにのっかるの?大丈夫これ!】


 三人のシークレットコメントがとても忙しい。

 ごめんね、変な事に巻き込ませちゃったかも。


Misfortune『ちょっと早口になったぞシンディ!』

Nobody『キャラクターを維持しろシンディ!』

Friday『一緒に遊びたいの駄々もれしてるぞシンディ!』


――え?


 私は思わず息を呑んだ。

それでも的確に指示をくれるお友達。


 畳み掛けるように急に三人が気合を入れたようにメッセージを飛ばしてきた。


Misfortune『パソコンでもスマホでも視聴者参加型ボタンを押して見ると良いよ』

Friday『いまやってるシンディに協力してゲームが出来るぞ!』

Nobody『シンディが気になったのなら是非ボタンを押してくれ!』


 三人が何を言っているのか、私にはすぐに分かった。

それは、この地味な石積みゲームにひっそりと実装されている、画面の向こうの視聴者と一緒に同じフィールドで石を積み上げ、協力して高い塔を目指すという『協力モード』の参加ボタンだった。


(えっ、ちょ、ちょっと待って!そんな、いきなりそんな大それたこと――!)


 私が慌てて止めようとした、まさにその時だった。

画面の向こうから、ひとつのシグナルが飛んできた。


『プレイヤー [kojinyou_fin] が視聴者参加ボタンを押しました』


――えっ……!?


 私の意思とは関係なく、まさかあのフィン様ご本人が、自ら進んでそのボタンを押してしまったのだ。


 画面の向こうのフィン様は、きっと「面白そうだからちょっとやってみるか」くらいの軽い気持ちだったのかもしれない。


 だけど私にとっては、青天の霹靂を通り越して心臓が爆発しそうな一大事だった。

 私の脳内でパニックの嵐が吹き荒れる中、ゲーム内のシステム音が軽快に鳴り響いた。


『[kojinyou_fin] がパーティに参加しました』


 荒野の真ん中に、突如としてあのフィン様の代理オブジェクトが、ひょっこりと降り立ったのだった。

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