八話 思考が全部読まれます
今の現状を社畜でもわかるように解説しよう。
気づけばヤンデレ副騎士団長とロリ試験官が僕を見る目が360度……あ、一周してるわ。
180度変わってる。
まさに異常事態だ。
この形でハーレム出来ても地獄なのだが。
「もやし様♡このアイリ、まず奴隷として何をいたしましょうか?」
目が怖い!
さっきまでイキってた副騎士団長どこ行った!?
「な、何を……コウ様は私のものよ!」
僕は誰のものでもありません……。
「あらあら、セロリの分際でよくそんな愚行ができますね?」
「は?うるさいわねチェンソー女。」
セリはあっかんべーをしてアイリを挑発する。
「そんな“奴隷♡”とか言ってる時点で負けてんのよ。重いの。怖いの。キモいの。」
「なっ——!?」
「コウ様も引いてるじゃない。ねぇ?」
やめろこっちを見るな。
僕は今、“関わったら死ぬ”を本能で察知している。
こういう時に役に立つ社畜スキル!
その1――
「気配を消す」
会議で面倒事が始まった瞬間、
存在感を限界まで薄くする。
目を合わせない。
呼吸を浅くする。
「私は壁です」を全力で脳に叩き込め。
なお、失敗すると——
「コウ様♡」
「もやし様は私の隣にいなくてはいけません♡」
地獄が始まる。
——なお現在進行形で始まっている。
実際僕は大失敗をかまし二人に完全にロックされてしまった。
……助けてくれ。
想像の範囲だとムフフでキャッキャだよ?
でも実際ハーレムを手に入れると地獄と学んだ。
うんうん。一つ学びだ。
「もやし。俺、”ラノベ”という禁書を読んだのだがまさに状況が似てるのだが……。まさか、禁書に出てくる唯一神?」
いや何をどう読んだらそうなる。
ずっと言ってるだろ?ただのもやしだって。
「こんなところで遊んでる場合ではありません。」
遊ぶ……?アイリさん遊ぶを国語辞典で調べていただいたらどうでしょうか?
こういう時に役立つ社畜スキル。
その2——
余計なことは言わない。
これは社畜だけじゃなくても大事なスキルだが、社畜だと最も必要だ。
ほら。僕のように内心にとどめておけばバレ……
「もやし様♡”遊ぶ……?アイリさん遊ぶを国語辞典で調べていただいたらどうでしょうか?”って思われましたか?」
は?
思考が読まれてる!?
「へ、へぇ……その根拠は?」
僕が引きつった笑みを浮かべると、アイリさんは頬を赤らめながら胸に手を当てた。
「わかるのです。」
いや怖い怖い怖い。
「もやし様のことなら、呼吸、視線、鼓動、筋肉の動き、空気の揺れ、全てで理解できます♡」
やめろ。
なんでそこだけ化け物スペックなんだ。
「ちなみに今、“なんでそこだけ化け物スペックなんだ”と思いましたね?」
「ヒィッ!?」
「ふふっ♡やはり心が通じ合っています♡」
通じ合ってねぇよ!
一方通行なんだよそれは!
「さてそろそろ、騎士団教会に行きましょうか。」
「「もちろん、私が全力で護衛いたします!」」
頼もしい。
……だが、めちゃくちゃ怖い。
そんな人たちが増えました。
【次回予告】
ついに到着、聖騎士団本部。
そこにいたのは——
傷だらけの騎士達。
崩れた訓練場。
そして、誰も座っていない騎士団長の席だった。
……あれ?
思ったより空気重くない?
だが、そんな空気をぶち壊すように響く声。
「副騎士団長と試験官が同時に認めただと……!?」
「まさか本当に“救世主”が……」
やめろ。
嫌な予感しかしない。
しかもなぜか会議室に連行される僕。
「では——次期騎士団長について話し合おう。」
待て。
今なんて言った?
次回――
「え?ビビってただけなのに騎士団長?ムリムリ!!」
社畜に世界は救えません。




