表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/10

三話 英雄なんて知りません!

※受付嬢の長台詞は読み飛ばしてもらっても結構です


「ポチ、中々優秀ではないか。」


一時間かけて歩き回った人里を、こいつは30分で見つけた。


……なんか負けた気がする。


いや犬に負けるって何だよ僕。


人里は、なんというか……和だった。


(和って何だよ僕)


西洋ファンタジーの予定だったんだけどな。


(ここ異世界じゃない?でもポチいるし……いやポチいる時点で現実の方がおかしいだろ)


ポチがクゥンと鳴いた。


うん、かわいい。許す。


で、なんで街の人たちこっち見て固まってんの?


僕の顔そんなにヤバい?


あ、そうか。


血だ。


服ベットリ血まみれだわ。


完全に殺人鬼じゃんこれ。


違う違う、僕そんな強くないって。


ただの社畜だって。


「……あ、あれは……」


街の誰かが言った。


(風邪かな?声ガラガラだな。ブラック勤務か?)


なんだかんだありつつもギルドについた。


想像通りのギルドだ。


「不思議な世界だな。」


僕はポチを両腕で持ち上げる。


ポチはつぶらな瞳でこちらを見つめてきた。


……うん、かわいい。


こんなの抱っこしちゃうだろ普通。


ギルドの中は入る前からガヤガヤしていた。


(意外と栄えてるな。てか、コミュ症の僕が入って大丈夫か?)


僕は扉に手をかける。


……やめる。


やっぱりかける。


いや待て落ち着け。


知らない場所+初対面だぞ?


難易度高すぎるだろ。


「……何やってんだ僕。」


僕はついに奮起してギルドに入る。


ハァハァ。一日分の勇気全部使ったぜ。


さてさて、受付……。


ん?一日の勇気全部使ったから、「え、えっと……あ、あ、ぼ、冒険者登録……」みたいにしかいえないのでは?


ここで「冒険者登録したい(イケボ)」って言えば受付嬢までゲットじゃねえか!


グフフ。ここは異世界ライフのために僕本気出します。


僕はカウンターに近づく。


「いらっしゃいませ!冒険者登録ですか?」


ま、眩しい!


「も、も、まちろろろんでござる。」


ミ、ミスったアァァァア!


はい、終わった。受付嬢とキャッキャウフフが絶たれた。


僕のハーレム候補が……。


「ん?その腕に抱いてるの……。」


受付嬢はポチを見つめる。


「ワン!」


ポチは元気よく鳴く。


お利口さんやなぁ。


思わず関西弁が出てしまった。


ん?何だ?受付嬢が慌ててる。


まさか犬ダメ系?今の時代アウトだろ?


ん?そもそも常識って通じるのか?


「そ、それって皇帝狼(エンペラーウルフ)ですか……?」


「何それ?」


へぇ。ポチそんなゴツイ名前だったのか。


「知らないんですか?」


受付嬢は本をカウンターから取り出す。


どうやら図鑑みたいだ。めんどくさ〜


「知らないんですか!?!?いやいやいやいや待ってくださいちょっと待ってくださいね!?普通“なんかデカい狼いるな〜”で終わらないんですよ!?まずですね、皇帝狼(エンペラーウルフ)っていうのはSランク危険指定魔物で、過去には討伐隊が半壊したり都市封鎖が行われたり、魔力測定器が壊れたり色々あるんですけど、それより問題なのがですね、なんであなたそんな普通なんですか!?


いやもう最近のギルド忙しすぎるんですよ!?昨日は酔っ払い冒険者が“僕は竜を倒した”とか言いながら井戸に落ちるし、一昨日は“スライム食べたら強くなる”とかいうバカが救護室送りになったし、その前は受付七番のマリアさんが寿退社して人手足りないし!こっちは三日連続残業なんですよ!?しかも上司が“笑顔を絶やすな”とか言うんですよ!?無理ですよ!!人間ですよこっちも!!


……あ、話戻しますね。


えっと、皇帝狼(エンペラーウルフ)は非常に縄張り意識が強く、通常は人間に懐きません。というか懐いた記録がほぼありません。むしろ見つかったら避難警報レベルです。あと単独でAランク冒険者部隊を壊滅させた記録もあります。


なのに何ですかその“ポチ”って。


名前の時点で緊張感ゼロなんですよ。


あと何なんですかその抱っこの仕方!?完全に犬扱いじゃないですか!!普通Sランク魔物見たら腰抜かしますよ!?なのにあなた“モフモフ〜”みたいな顔してるじゃないですか!!


しかも血まみれで来るし!!最初殺人鬼来たと思ったんですよこっちは!!でもよく見たらコミュ症っぽいし!!どっちなんですか!?怖いんですか怖くないんですか!?


あとギルド入る前ずっと扉開け閉めしてましたよね!?見えてましたからね!?あれ五分くらいやってましたよね!?入るんですか入らないんですかどっちなんですか!?!?」


「……結論わかんねぇや。」


「最後まで聞けや!!!」


こうして受付嬢との会話が続く。


「まぁとにかく、あなたには極秘任務に参加してもらいます。」


ん?極秘任務?


「あなたには聖騎士団と共に前戦で戦ってもらいます。」


は?頭おかしいの?


「あなたは、兎にも角にも、この村を救った英雄です。英雄様、このホッカイドウをお救いください。」


英雄なんて知りません!


僕は必死に逃走ルートを考える。


落ち着け僕。


こういう時は冷静になるんだ。


まず出口確認。


次に周囲の人数。


最後にポチを抱えて全力ダッシュ。


……よし、完璧だ。


「逃げますね?」


「何でバレた!?」


僕はずるずると受付嬢に引きずられる。


「嫌だぁぁぁぁぁ!!社畜に命懸けの追加業務させるなぁぁぁぁぁ!!!」


極秘任務。

聖騎士団。

英雄扱い。


……いや待て。


僕ただの社畜なんだけど?


しかも周りはガチの戦闘態勢。


逃げたい。

帰りたい。

できれば布団に入りたい。


だが、そんな僕を無情にも戦場へ連れて行く受付嬢。


次回――


「もやしとはひどいな!」


コウの今後の話の続きが気になったら★とブックマークを押してくれるとコウが追加任務に渋々言ってくれるかもしれません!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
公くん南無
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ