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それは黒くて重かった  作者: D.K.B.Y.
第六章
43/45

脇道に逸れる

投稿速度を上げるには、とにかく書く事ですね。これからも精進していきたいと思います。

 アフ・オルトレスから北上する街道には、早い時間帯に出発して先を急ぐ旅人や荷物を満載した荷車が散見出来る。陽が昇り始めてから間もないので未だに気温が低いが、その街道を三人の騎馬と並走している大小の影にとっては身体が温まって丁度良い運動だと感じているらしく、走り始めてからそこそこ長い時間が経っているにもかかわらず軽い足取りのままだった。

「せかされてないから、走るのも気持ちいいね~、ダスク」

「そうだな、黒炎。ほどよく力が抜けてるから楽に走れる」

大小の影、ダスクと黒炎は騎馬と並走していながらも、普通に歩いているような気軽な口調で会話をしていた。その様子を感心と呆れの混ざった視線で眺めているのは、馬上のアル達三人であった。

「なんというか、底無しの体力だなぁ」

「そうかな~。これくらいはフツウだよ。

 それよりも、ずっと気になってたんだけど、もう一人居るんじゃなかったっけ?」

「そういえばそうか。もう一人はどうかしたんですか?アルさん」

何かおかしいと感じていたダスクは、黒炎の言葉を聞いてやっとアル達の人数が一人足りない事に気付く。今迄アル達と同行した時には毎回今のメンバーだったので失念していたらしく、ダスクは兜に隠れて見えていなかったが少し恥ずかしそうな表情で質問をしていた。

「う~ん、なんというか、基本的には良い()なんだけどね。

 まだ機嫌が直ってなかったらしくて、僕達よりも早く出ちゃったんだ」

「ありゃ~。一人で行かせちゃってダイジョブなの?」

困ったような表情で答えるアルに、事態を楽しんでいるらしい黒炎は楽しそうな感じを崩さずに、とりあえず心配する言葉を掛けていた。

「大丈夫だと思うよ、たぶん。なんだかんだいって、旅の経験は豊富だからね」

「そっか、それじゃあそのうち会えるんだね。楽しみだな~」

「結局、アルさん達とは何度も会っていたのに、その人に会うのは初めてだもんな。

 それで、どんな人なんですか?アルさん」

「どんな……一言で言うなら、良くも悪くも自分を貫く人間かな」

「ふふっ、簡単に言うならそうなるわね。

 ちょっと自分勝手なところがあるから、今回みたいに機嫌を損ねて一人で先行しちゃったりするし」

「くっくっくっ、あやつはある意味自分の欲求に正直なヤツじゃからな。

 度々(たびたび)こんなふうに振り回される事も有る」

あまり良い事を言っているとは言いがたいが、三人とも苦笑しながらなので、苦労をかけられる事があっても、それも含めて好ましいと思っているらしいとダスク達にも感じられた。

「仲良しなんだね~」

「ああ、苦楽を共にしてきた仲間だからね。

 今日は先行してるけど、北上して最初の大きな森で休んでるって置手紙に残していたよ」

「なるほど。そういうところは律儀なんですね。

 ところで、その仲間の人の名前ってなんていうんですか?まだ聞いていませんでしたけど」

「ん?そういえば言ってなかったっけ。彼女の名前はエリスっていうんだ。

 結構クセのある性格だけど、どうか仲良くしてやってくれ」

「おっけ~」

「はい、こちらこそ。アルさん達と同じように仲良くしてもらえると嬉しいです」

そんな事を笑顔で話しながら進んで行くうちに、前方の街道脇に大きな森が見えてくる。顔を見合わせて頷き合った一行は、街道から進路変更して森へと入って行った。

 ザッザッザッ

草むらをかき分けて進んでいくと、前方に少し開けた場所が見えてきたので、言葉で確認する事も無く視線だけで同意してその場所へと向かう。

「ヒトの居た気配が残ってるけど、これがエリスのかはわからないや」

早速いつも通りに呼び捨てにしている黒炎の声を聞きながら、ダスクも地面に残っている人間と馬の足跡に気が付いていたが何者のものかは判別できずに首を捻っていた。

「多分間違ってはいないよ。え~と……ほら、あった。ここに伝言が残ってる」

馬から降りて周囲を探っていたアルの言葉に、その場の全員が指し示す場所へと近付いて視線を凝らす。


 【なんか助けが必要みたいだから先に行くね。後から追っかけて来てね~ エリス】


「……なんというか、言っていた通りの人みたいですね」

「あははは、そういう事みたいだから僕達も進もうか、ダスク」

「了解です。僕達も何か手助け出来るかもしれないですから」

困ったような表情になっているアルに頷くダスクは、残されていた伝言が見ているうちに自然に消えていく事に気付いて驚く。

「文字が消えてくよ。これも魔法なのかな?すごいな~」

「おそらく、我々の誰かが読むと消えるようにしておいたのじゃろう」

同じく驚いて紅い瞳を見開いている黒炎の言葉に、傍らのバーナが黒炎の頭を撫でながら教えてくれた。

「あの()ったら、良かれと思ったらすぐに行動しちゃうんだから、もぅ」

「まあまあ、僕達もすぐに追い掛けよう」

(なだ)めるように声を掛けるアルに、ミリーは大きく息を吐き出してから表情を真面目なものに変えて頷く。それに合わせるように、全員が頷いて先へと進む体勢になっていた。

 そこからどちらの方向へ進んだのかを植物の枝の折れ具合や地面の状態を確かめながら進むダスク達の足取りは少し遅くなっていたが、着実にエリスの加わった集団、森の外に残された(わだち)から比較的大型の荷馬車に加えて両手で数えられるくらいの騎馬が居るらしい、を追いかけていた。当初は街道に戻ってから北上すると考えていたが、予想に反して街道に戻らずに裏道のような場所を通っている事が分かった。それに関して、ほとんど旅をした事の無いダスクと黒炎はおかしいとは思っていなかったが、アル達は何か心配事があるらしく表情を曇らせており、それは時間が経つにつれて深くなっていく。いつまで経っても合流する気配が無い事も一因であり、朝早く出発したにも関わらず、空を見上げれば既に陽が傾いて赤く染まり始めていた。

「やっぱりおかしいな。

 街道を使わないのもそうだけど、こんな道を必要以上に急いでいる。

 追われているような乱れも見られないから、襲撃を受けたというわけでも無さそうだし。

 助けを必要とする場所がこの方向に在ると思っていたけど、この先には村も町も無いはずだ。

 これではまるで他人(ひと)の目を避けなければならない者みたいじゃないか」

先頭を走って道の様子を確かめていたダスクと黒炎に止まるように声を掛けたアルの言葉に、急いでいたので短時間で昼食を簡単に済ませなくてはならなかった不満が黒炎の口からつい漏れてしまう。

「急ぎ過ぎだよ~。それよりも、ちゃんとした食事が食べたかった~」

「こらっ、そんな事言ってる場合じゃ無さそうだぞ、黒炎」

真面目な話になりそうだったので、慌ててダスクは黒炎を(たしな)める。それを見て一瞬笑みを浮かべていたミリーだったが、すぐに表情を引き締めてアルと視線を合わせていた。

「それじゃあ何かあったって事?また(●●)(だま)されちゃったのかしら。

 まあ仮にそうだったとしても、あの()に限って簡単にやられるとは思えないけどね」

「うむ。相手を全員撃退するのは無理だったとしても、隙を作って離脱するのは可能じゃろう」

「確かにそうだね。だけど、それが出来ない状況に追い込まれてしまったのかもしれない。

 例えば、自分以外に弱い立場の者が居て人質にされたとかね」

「ふむ、その可能性はありそうじゃな。

 まあ、まだ無事だろうとは感じておるが、いつまでもそうだとは限らぬ」

「そうなの?」

バーナの言葉に反応して反射的に黒炎が問い掛けるが、ダスクも気になっていたので無言でアル達の方を見ながら答えを待つ。

「バーナの勘は良く当たるから。とにかく、エリスが捕まってるものとして行動する?」

「その方が良いかもしれないな。ほら、あれを見て。本当に危機的状況になっているようだ」

そのアルの言葉に、彼が指し示す方向へと皆が視線を向けると、そちらから小さな光が空中をフワフワと漂いながらこちらへと近づいてくるのに気付く。

「あれはそういう時に使うものなんだ」

「なるほど」

不思議そうにしている様子に気付いて説明してくれたアルにダスクは頷き、飛んで来る光が近付いて来るのを見守っていた。

 バッ

「あっ、こらっ」

すぐ近くまで来た光の動きを目で追っていた黒炎が突然飛び上がるのを見て、ダスクは慌てて止めようとするが、間に合わずにパクリと食べられてしまう。

「何やってるんだよっ、黒炎。大事な手がかりっぽいのに」

「あぅ、ごめん。なんかフラフラと飛んでるのを見てたら身体が勝手に動いちゃって。

 食欲が満たされてないからかな~、あははは……」

怒った風なダスクの言葉に、黒炎は申し訳無さそうに耳を伏せて力無く尻尾を垂らす。その様子を眺めていたアル達は、手がかりが失われたかもしれないのにそうとは思えない変わらぬ笑みを浮かべていた。

「あはは、大丈夫だよ。ほら、見てごらん」

その言葉に視線を上げたダスク達の目に、相変わらず空中に浮いている小さな光が映る。

「そういえば、なんにも感触がなかったかも」

「はぁ、良かった。実体の無い光だったんだな」

黒炎を警戒しているのか、視線を一身に集めているのが嫌なのか、光は少し先程よりも高い位置で漂っていたかと思うと、突然ダスク達が向かっていた方向へと戻って行ってしまう。その速さにすぐに見えなくなるかと思いきや、途中で止まってまるでこっちが付いて来ない事を苛立っているかのように明滅し始める。

「早く来いってさ。あれに付いて行けばエリスの居場所に案内してくれるはずだ」

「なるほど。なかなか便利なものですね」

「ふふっ、あの()らしいわ。

 おそらく、ずっと大人しくしていて、周りが油断した頃にあれを送ってきたのでしょうね」

「そっか、意外と余裕あるんだね~」

「うむ、今迄はそうじゃろうな。但し、それがいつまで続くかわからんがな」

「そういう事。さあ、急ごうか」

そのアルの言葉に頷いた一行は、徒歩や騎乗して光の導きに従い先を急ぎ始めた。

 険しい道を辿(たど)って進むうちに次第に山を登って行く事になり、途中でアル達は馬から降りて手綱を引きながら進むと、周囲は木々が生い茂って深い森へと変わり視界がほとんど(さえぎ)られるようになってきた。おそらく、エリスを連れて行った何者かが拠点としている場所に向かっており、悪事を生業(なりわい)にしている者らしく、関係の無い人間が出来るだけ訪れない場所を選んだ結果なのだろう。とりあえず、ここからは彼等の事を賊とでも呼ぶ事にする。

 ガサガサッ

草むらをかき分けて辿り着いたのは良く考えられた場所であり、木と石で建造された砦のような建物の裏手の崖の上で、そこから降りるには命懸けになりそうなので見張りは崖下を巡回しているだけという、こちらからすれば好条件の場所であった。砦はその崖でグルリと囲まれた袋小路のような場所を利用しているので、入口を塞いで門を配置する事で崖を防壁に利用した堅牢な造りを実現している。正面から入ろうとするならば守備側に大きく有利に働くので、普通に門を突破しようとすればやっかいそうである。ここに来るまでに日が沈んでいるので少人数とはいえ4プラス1の集団で覗き込んでも目立たなくなっているのは好条件だが、先導してくれた光は既に消えているのでここからは自分達で目的の人物を探さなくてはならない。

「さて、どうしようかな」

「寝静まるまで待つ?」

「ふむ、それまで何もされなければ良いのじゃがな」

「う~ん、そうだよね。急いだ方が良いかもしれないんだけど……」

アル達三人は小さな声で救出作戦を考えようとしていたが、それを不思議そうな様子で見ていた黒炎が口を挟む。

「どうして話をしてるの?早く助けに行こうよ」

「そのつもりだけど、捕まってる人が複数だったら危ないからね。人質にされるかもしれないし」

「ダイジョブだよ。ボク達とアル達で手分けしてやればいいんじゃないかな」

「僕もそう思います、アルさん。

 急ぐ必要があるのなら、迷っている場合じゃありません。

 僕が正面から行きますから、アルさん達はどうにかしてこちらから救出に向かって下さい」

「それは……いいのかい?」

あまりにも普通の調子で言うダスク達に、一瞬何かを言いかけたアルだったが、見回りをしている者達の力量から比較すればダスクにとっては簡単な事であると理解出来てしまい、一拍置いて表情を真剣なものに変えて言葉の続きを確認へと変えていた。

「はい。

 アルさん達の仲間なら僕に、僕達にとっても友達ですから当然の事ですよ」

言葉の途中で忘れないでくれと自分を見上げてくる黒炎に気付いて言い直したダスクは、早速とばかりに身を反転させて移動しようとする。

「ちょっと待って。本当にいいの?アル」

平然としたやりとりだったのでそのまま流してしまいそうになっていたミリーだったが、ハッとしてダスクを制止してアルと視線を合わせる。

「これじゃあまるで私達が……」

「そうじゃない。でも、そう考えても仕方がないかもしれない。

 だけど、これは仲間として信頼して任せているんだ。確かにその力が有るんだからね」

「私だって力量は充分過ぎるほどだと思うけど」

なおも心配そうな表情のミリーに、ダスクは心配してくれる人間のありがたさを感じながらも自分が行く以上に安心出来る方法は無いと確信していたので、安心させるように声を掛ける。

「心配してくれてありがとうございます、ミリーさん。

 だけど、スカルトパシオンの時と比べたらなんでもない状況ですから、安心して下さい」

そう言うダスクの声には(りき)みもなにも感じられないので、短時間で内心の葛藤(かっとう)に決着を付けたらしいミリーは大きく息を吐き出していた。

「……そっか、わかったわ。でも、無茶はしないでね。危ないと思ったらすぐに退()くのよ」

「はい、そうします」

「ダイジョブだよ。あんなやつらダスクの敵じゃないし」

頷くダスクに加えて、その隣で自慢げに言う黒炎の様子にミリーは思わず微笑んで頷き返していた。

「話はまとまったようじゃな。ダスク達にはこやつをつけておくから、何かあればすぐにわかる」

そう言ったバーナは懐から見覚えのある赤いトカゲを取り出して黒炎の頭に載せる。その感触をくすぐったく感じていた黒炎であったが、すぐに動かなくなったらしく気にならなくなったようである。

「それじゃあ僕達は騒ぎが起きるのを合図として潜入するから、出来るだけ時間を稼いで欲しい。

 無理に倒す必要はないから、(きみ)ならそこそこの力でも大丈夫だろう?」

「了解です、アルさん。可能なら全員倒しちゃっても構いませんよね?」

「あはは、余裕が有れば好きなようにしていいよ」

「あははっ、グズグズしていたらアル達が助ける前に終わっちゃうかもしれないよ」

「ふむ、そうしてくれても良いのじゃぞ。潜入するのも疲れるからの」

黒炎とバーナは茶化すような会話だったので、一行は笑みを浮かべて余計な力を抜く事が出来た。最後にミリーがダスクの肩に右手を載せ、黒炎の頭を左手で撫でながら声を掛けてくる。

「いってらっしゃい。気を付けてね」

その言葉に頷いたダスクと黒炎は、相変わらず重さを感じさせない動きで暗くなった山道を砦の正面へと向かう。その背中はすぐにアル達の視界から見えなくなっていた。


 ザザザッ

草むらをいくつか抜けてやっと正面に抜けたダスクと黒炎は、砦の入口の周囲は見通しを良くする為に伐採されているので、少し離れた木の陰から砦の入口の様子を確かめていた。

「見張りは二人、いや、上にも二人か。とりあえず普通に歩いて行って声を掛ければいいかな」

「そうだね。シュギョーの旅で、やっつけに来たって言えばイイんじゃないかな~」

「なるほど。捕まってる人を助けに来たって言えば人質にされるかもしれないからな」

「へへ~、頭イイでしょ」

「ああ、助かったよ。それじゃあ危険だろうから、見てても良いけど離れていろよ」

「おっけー。バーナのトカゲも一緒だから、おとなしく見てるよ」

背中から下ろした荷物の見張りも黒炎に頼んだダスクは、大剣と盾は背に固定したまま手ぶらで木の陰から開けた場所へと進み出る。装備の色のせいか、しばらく見張りに気付かれずに砦へと近付けていたが、さすがに堂々と歩いていたので松明の炎に照らされた金属の輝きは隠せなかったらしい。

「誰だっ!」

砦前の見張りからの誰何(すいか)の声を聞きながらも、しっかりと姿が見える場所まで進み出たダスクは、決めていた通りに行動を開始する。

「修行の旅をしている者ですが、この辺りに罪を犯している人達が居ると聞いて()らしめに来ました」

ダスク自身は胸を張って格好良く宣言したつもりだったが、それを聞いていた見張り達は一瞬沈黙した後、一人残らず吹き出していた。

「……っぷ、あっはははっ、なんだコイツ。たった一人で頭オカシイんじゃねえのか?」

「くっくっくっ、声からするとガキみたいだし、ちょっと馬鹿なんだろ。

 痛い目にあいたくないだろ?早く帰ってお(かあ)ちゃんのオッパイでもしゃぶってなっ」

「「ぎゃはははっ」」

腹を抱えて笑う見張り達の様子に、兜の内側で憮然とした表情を浮かべていたダスクであったが、砦内からこちらへ興味を持った視線が増えてくるのを感じて作戦が順調に進んでいると実感していた。

「……」

 ブオンッ、ズシンッ

「「っ!?」」

しばらく黙っていたダスクは背から大剣と盾を手に取り、大剣を水平に振ってから地面へと突き立てる。その振動に見張り達は笑いを止めさせられ、武器を持ったダスクに警戒心をかきたてられていた。

「おいっ、得物(えもの)を出したからには覚悟は出来ているんだろうな?

 もう謝っても許してやらねえぞ」

「許してもらうつもりなんて最初から無いですよ。退屈ですからさっさとかかって来て下さい」

自分たちを軽視するような言葉を若輩らしきダスクに掛けられて、その場に居る見張り達は賊らしい表情を無精ヒゲの目立つ顔に浮かべて睨み付けてくるが、鎧の表面で弾かれているかのように微動だにしない様子に苛立ちを(つの)らせたようである。

 ザザッ

そのまま黙ったままのダスクの態度に本格的に頭に血が昇ったらしい見張り達は、自分の得物の間合いへと駆け寄って来て腰の曲刀を抜く。

「あの世で後悔しなっ!」

()らえっ!」

全く躊躇(ためら)わずに、二人の見張りが挟むようにして凶器をダスクへと振り下ろしてくる。そのまま鎧姿が打ち倒される事を上から見下ろしながら予想していた見張り台の二人は、次の瞬間我が目を疑う事になった。

 ドガガッ

ほとんど同時に後方に吹き飛ばされた見張りの二人は、入口の門にぶつかってそのまま地面に倒れていた。おそらく打ち所が悪くて気絶してしまったのだろう。それを見ていた上の二人は少しの間呆然としていたが、ダスクが門の目の前まで近付いたところでやっと何が起きたのかを理解していた。

 カンッカンッカンッ

見張りの一方は襲撃を知らせる鐘を鳴らし始め、もう一方は弓を射てくるが、それらを気にも留めずに大剣を振り上げたダスクは、それを力一杯門の中央へと振り下ろす。

 ドゴッ、ズズゥゥン

叩き折られた(かんぬき)ごと門が砦の内側へと倒れて大きな音を響かせ、その向こうからは鐘の音を聞いた賊達が続々と集まってくるのがダスクの目に映っていた。


 カンッカンッカンッ

「始まったようだね」

砦からの情報を聞き逃さないように耳を()ませていたアルの言葉に、同じく聞き逃しようの無い鐘の音を聞いたミリーとバーナも頷いていた。

「大丈夫よね?」

「おぬしは心配性じゃのう」

「大丈夫さ。

 それよりも、せっかくダスクが作ってくれた好機、僕達は僕達の出来る事をやらないとね」

「わかったわ。バーナ、お願い」

「うむ、任せておくがよい」

杖を掲げたバーナが何事かを呟いたと思ったら、暗闇でも目立たない薄い光の膜がアル達三人を包み、そのまま地面からわずかに浮き上がらせて崖から空中へと導くと、ゆっくりと下へと降りていく。巡回していた見張りが入口の方へと移動していなければ、あっさりと見付かってしまいそうな速度であった。

 トサッ

着地の瞬間には(わず)かな足音を立てるが、その程度では誰の耳にも入らなかったようで、その場で少し様子を窺っていても近付いてくる賊の気配は感じられなかった。

「さて、うちのお姫さまはどこに居るのかな?」

「ふむ、向こうの建物に複数の気配を感じるが、それが捕まっている者のものかはわからぬ」

「そうだね。まあ、迷ってる場合じゃないから行こうか」

「ええ、そうしましょ。ダスクくん達の事も心配だし」

「くっくっくっ、だいぶ優勢のようじゃがな」

赤いトカゲから伝わってくる情報を話すバーナの言葉に笑みを浮かべた二人は、先程指摘していた建物へ向かって駆け出すが、さすがと言うべきか、その足元からはほとんど足音が聞こえてこなかった。


 ドガッ

「ぐえっ」

壁に叩きつけられた賊がみっともない声を上げて気絶すると、包囲している場所から進み出てくる者の流れが一旦止まり、距離を取って囲む賊達とダスクは睨み合い始める。そこかしこに少なくない数の賊が(うめ)き声を上げながら横たわっているので、否応無しに怒りを掻き立てられている賊達の頭はダスクを倒す事で一杯になっていたが、同時に恐れも感じているのが表情や前に出ない足から簡単に察せられた。時間稼ぎが第一の目的なので、ダスクはしばらく様子を見ているだけでいいかもしれないと考えていたが、予想に反して賊達の中から進み出てくる者に気が付き、やはりそう簡単には進まないと内心で苦笑する。

「……お前はいったい何者なんだ?その強さ、まさか軍隊の人間じゃねえだろうな」

「最初に言った通りですよ。僕みたいな若輩者(じゃくはいもの)が軍人なわけないじゃないですか」

他の賊よりも堂々とした態度なので、おそらく首領(しゅりょう)だと思われる相手の問い掛けに、ダスクは自分にとって隙にならない程度、もしかしたら他の人間の目には隙に映るかもしれない、に兜を持ち上げて顔を見せながら答える。

 ドガッ

「ぐえっ」

それを隙だと勘違いした者が一人、少し前に壁に叩きつけられて気絶した賊の隣に、全く同じ様に倒れて動かなくなっていた。

「ちっ、ここまでやられて相手の力量くらい理解しやがれっての。

 おい、ものは相談なんだが、俺達の仲間にならないか?報酬ははずむぜ」

「仲間?僕があんた達の仲間になるって本当にそう思うんですか?」

既に兜を元通りに装着しているダスクは、心底から呆れたような口調で訊き返す。ダスクの心情を察していそうな首領であったが、それでも口元に笑みを浮かべたままであった。

「若い時には夢や希望に満ちているのかもしれないが、人生ってのはそうそう上手くいくもんじゃねえ。

 それならそこそこのところで妥協(だきょう)してもいいと思うぜ」

「確かに上手くいくとは限らない。僕もそう思いますよ。

 いくら鍛えても、道(なか)ばで命を落とす可能性が無い訳じゃない」

「なら」

「だけどっ、そうだとしても、僕はその寸前まで精一杯生きる事をやめない。

 ましてや自分が悪いと感じる事になんて手を貸そうとは思わない」

そう言い切ったダスクは態度でも表すように大剣と盾を構え直し、時間稼ぎには必要でもこれ以上話を続ける意思が無い事を示していた。


 カチャリ

少し前、ダスクと賊達が戦っている最中、アル達は仲間が捕まってるであろう建物へと潜入を果たしていた。建物に窓は無く、唯一の出入り口である正面の扉を利用したのだが、その前に残っていた見張り二人はアルとミリーに気絶させられた後、建物内に引き入れられて縄で縛られ床に転がされていた。

「薄暗い部屋じゃな。ふむ、……光よ」

唯一残されたランプの弱々しい灯りでは室内は薄暗く、それが気に入らなかったらしいバーナは何事かを呟いて持っていた杖の先に光を灯すと周囲を照らし出す。窓が無いので光が外に漏れる事が無いのは、潜入しているアル達にとっては都合が良かった。

「意外と広いな」

入口から入ってすぐの部屋が見張りの待機場所のようで椅子や机が配置されており、机の上は酒瓶や食べ残しの載った皿や暇潰し用の賭け札で雑然としている。部屋の奥中央に細い通路がまっすぐに伸びており、その両側に等間隔で頑丈そうな扉が並んでいた。扉と扉の間隔は狭く造られているので、もし部屋の中に人が居れば、そうする事を自ら望んだ者以外は快適とは程遠い環境に嘆いているに違いない。(さいわ)い、順番に開いて確認していったこれらの個室には入居者は居らず、アル達三人は一番奥の突き当たりの扉の前まで辿り着いていた。

「中から複数の気配を感じる。

 個室には誰も居なかったし、今回はまとめてこの部屋に閉じ込められているのかな?」

「そうかもしれないわね。さすがに中の人も状況が変わったって気付いているかしら。

 あの()も脱出の準備をして……いないわね、多分」

「くっくっくっ、(わらわ)もそう思うぞ」

「あはは、さすがにそんな事は……ありそうだね」

溜め息を吐いたアルは入口の部屋で拝借していた鍵を使って扉を開錠すると、同行者達へと頷きかけてから扉を開く。

 ギィィィ

建て付けが悪いのか、(きし)むような音を立てて開いていく扉の隙間から、前触れの無い訪問に動揺するような気配が伝わってくる。中に居るのが捕まっている者だとすれば、賊に何をされるか分からないので恐怖を感じずにはいられないのだろう。それを考慮して必要以上に刺激しないようにゆっくりと扉を開ききると、顔に笑顔を浮かべて声を掛けようと一歩前に出る。

 ブンッ

「アルっ!?」

扉の脇に身を隠していたらしき何者かが、持ち上げた木製の椅子をアルの頭上から振り下ろしてきた。

 ガッ

「っ!?」

硬い物が肉体にぶつかる音がしたと思った直後、すぐそばから襲撃者の息を呑む音が聞こえてくる。凶器に利用された椅子はほとんど振り切られる事も無く、頭上でピタリとアルの手に受け止められていた。

「安心して下さい。僕達は賊の仲間ではありません。捕まっている友人を助けに来ました」

落ち着いた口調で話すアルの背後から進み出たバーナが光の灯った杖を高く掲げると、人が良さそうな顔に笑みを浮かべているアルの姿がハッキリと見え、室内に居た者達は自分達が助かりそうだと理解して目に涙を浮かべる者も居た。光に照らされた捕らわれていた者達は全員が女性のようで、恐らく力の強い男性は個室に隔離、女性達は大部屋にまとめて入れるのが決まりなのかもしれない。アルを襲った外套にフードを目深(まぶか)に被った女性は一拍置いて状況を理解したらしく、振り上げていた椅子から手を離してフラフラと後退してポスンとベッドへと腰を降ろしていた。

「あの()はどこかしら」

安全になったと判断したミリーは受け止めていた椅子を床に置こうとするアルの隣に進み出て室内を見回すが、喜び合う女性達の中に仲間の顔が無い事に気付いて表情を曇らせる。

「変ね、見あたらないわ。まさか、別の場所に……」

「そんな事ないと思うんだけど。彼女だけ別の場所に閉じ込める理由が無いからね」

「くっくっくっ、二人共どこを見ているのじゃ。ほれ、あそこに()るじゃろう」

「「え?」」

面白そうな口調で指摘してくるバーナへと不思議そうな顔を向けた二人は、彼女が杖を持つ手とは逆の手で指し示す方向へと視線を向けると、そこにベッドの上で外套にくるまって丸くなっている人影を発見する。

「……くぅ~、くぅ~」

微かに聞こえてくるのは可愛らしい寝息で、外套のフードから覗く金髪に縁取られた整った顔から、その人物こそがアル達がここへ来た理由であると分かったが、当の本人はそんな事はお構いなしで気持ち良さそうに熟睡していた。

「「……」」

少し呆気に取られていた二人だが、アルは顔に苦笑を浮かべ、ミリーは片手を顔に当てて大きく息を吐き出してから寝ている人物へと歩み寄る。

「はぁ。ほら、起きなさい、エリス」

「……んぅ、もうチョットだけ~」

 ゴンッ

「あいたっ」

ミリーが無言で握った(こぶし)を寝ている人物の頭へと落とすと、覚醒しかけていたエリスは殴られた場所を両手で抱えながら上体を起こしていた。

「私達が助けに来てるのをわかってたくせに、のんびり寝てるなんて何考えてるのよっ」

「むぅ、待ってるだけなんだからいいじゃないの~。

 ミリーったらすぐ暴力振るうんだから。男女(おとこおんな)~、野蛮人~」

口を尖らせ(みどり)色の瞳を涙目にして文句を言うエリスの言葉は、独特の抑揚があって眠くなりそうなフワフワしたものを感じさせるのだが、聞き慣れているミリーは手の関節をポキポキと鳴らしながら睨み付ける。

「もう一発欲しいみたいね」

「きゃ~、助けてっ、アル」

(かば)うつもりなの?アル」

「僕を巻き込まないで欲しい……っていうか、こんな事してる場合じゃないんだけどなぁ」

棒読みに近い口調で言いながら思った以上に素早い動作でベッドから脱出したエリスは、アルの背後に隠れながらミリーに向かって舌をだしており、まるで小動物が威嚇(いかく)しているかのような光景を想起させる。平時ならば微笑ましいものを感じさせる状況なのだろうが、二人に挟まれて強制的に当事者にさせられたアルは勘弁して欲しいと思いつつ溜め息を吐いていた。

「まあ、焦らずとも大丈夫じゃろう。

 あの様子では、我らが加勢する頃にはほぼ終わっていそうな勢いじゃからな」

再び赤トカゲからの情報を伝えてきたバーナに一瞬同意しそうになったアルであったが、だからといってのんびりしている気分にもなれないらしく首を横に振っていた。

「こっちの事は任せるよ。例え必要ないとしても、僕はダスクを手伝いに行く」

「うむ、了解じゃ。こちらの事は任せておくがよい」

「いってらっしゃ~い」

バーナは頷き、エリスは手を振って送り出そうとしていたが、ミリーは心配そうな表情をアルへと向けていた。

「僕達の事は大丈夫。それより、怪我人が居ないかどうか調べて、居たら治療とかよろしく」

「わかったわ。気を付けてね」

安心させるように頷いたアルは唯一の出入り口である扉を抜けて、すぐにその背中は見えなくなる。それを見送っていたミリーは深呼吸をして気持ちを切り替えたらしく、癒し手としての表情で捕まっていた女性達へと歩み寄っていた。


 ドサッ

地面に重たい物が倒れる音と共に、気絶して横たわっている者達の仲間に(あら)たに加わった賊から視線を上げたダスクは、そこにもはや両手で数えられる人数しか残っていない事に気付く。

「おとなしく降参してくれませんか?貴方達では僕に勝てないのがわかったと思いますが」

「くそっ、なんなんだ、こいつの異常な強さはっ」

落ち着いた口調で降伏勧告をしてくるダスクの姿を睨み付けながら、首領は自分達が相手を子供だと思って甘く見ていた事を思い知らされる。加えて大剣が鞘から抜かれていない理由を、抜けないのではなく抜かなくても充分相手に出来る、そんな風にダスクに(あなど)られていると勘違いしてしまったせいで、頭に血が上り退き際を逃してしまったと後悔させられていた。

「……ちっ、しょうがねぇ。誰か商品の女を一人でいいから連れて来い。

 このガキの性格からいって人質くらいにはなるだろう」

「わかりやした、首領」

 ザッ

ダスクに聞こえないように音量を抑えた首領の言葉に一人の賊がコッソリと建物の方へと戻ろうとし、残りの賊はダスクの視線を塞ぐように壁を作る。

「……」

実際はダスクの目にもその姿は見えていたので一瞬足を踏み出そうとするが、それを引き止める必要が無い事に気付いて無言で見守る。

「余裕でいられるのもあと少しだぞ」

「何をするつもりかはわからないけど、それは上手く行かないと思いますよ」

「なんだとっ」

注意を引こうとしているらしく、話し掛けてくる首領にそう答えたダスクは残りの賊達へと視線を戻して下がった一人の事を頭から除外していた。

 ガッ、ドサッ

「こっちは大丈夫だ。無事に確保出来たからもう終わらせちゃっていいよ」

「なっ!?」

突然背後から聞こえて来た物音と声に驚いた首領が振り返ると、鞘に入ったままの長剣を構えたアルが悠然と立つ姿が目に飛び込んでくる。

 ガッ、ガッ、ドガッ

賊達は首領につられて視線を逸らしたり、そのまま視線を切らなくても集中が途切れてしまう。その隙を見逃すダスクではなく、短時間であっさりと無力化していた。

「結局、ほとんど一人で倒しちゃったな」

死屍累累という感じで地面に横たわっている賊達の合間を避けながら近付いてきたアルの言葉に、ダスクは頬をかこうとしたらしく兜の表面を籠手で触れる

「なんと言いますか、手応えが、その……」

「あははっ、相手が弱っちいからしょうがない、って言いたいんだよ」

「間違ってはいないけど、ズバリと言われたら気を悪くするだろ、黒炎」

「ダイジョブだよ。誰も聞いてる余裕なんて無さそうだし」

見回す先には気絶したり痛みに(うな)っている賊しか()らず、黒炎の言葉が正しいと認めなくてはならなかった。

「はぁ、まあいいか。それより荷物はどうしたんだよ?」

「あっ、終わったみたいだったからほったらかして来ちゃったよ」

「まったく、お前は。

 まあいいか。それでは僕達は荷物を取りに行ってきますけど、これからどうしましょう」

悪びれる様子も無い黒炎に呆れた口調になるダスクであったが、すぐに切り替えてこれからの事をアルに(たず)ねる。

「そうだなぁ、とりあえず縄で拘束(こうそく)して……ここだと、一番近いのはアフ・オルトレスか。

 少し時間はかかるけど、兵士に(しら)せれば捕縛に来てくれるだろう」

「なるほど。予定が遅れたとしても、これは必要な事ですから気にしないで下さい」

そう言って頷いたダスクが黒炎と共に荷物の回収に向かう様子を見送ったアルの表情は申し訳なさそうなものになっており、自分の仲間がきっかけでダスク達が王都に戻る日が遅くなるのを気にしているのが丸分かりであった。


 倒した賊達を拘束したダスク達は女性達が捕まっていた部屋にまとめて放り込むと、兵士を呼ぶ為にアルが馬を飛ばしてアフ・オルトレスへと向かった。それを待つ間はダスクが賊の見張りを(つと)め、捕まっていた女性達は細かな傷をミリーが治療していた。連れ去られた場所へそのまま帰すのは単身じゃなくても危険なので、兵士が到着してからそれぞれ送り届けてもらう事になる。


 三日後の朝、見張りをしているダスクがすぐ近くで黒炎とバーナが楽しそうに、バーナはほとんど表情が変わっていないが、話しているのを眺めていると、一人の女性が近寄って来るのが視界の隅に映る。ダスクより少し低い背丈に外套を着て頭からフードを被ったままの状態なので、女性という事は分かるが彼女が自分よりも年上か年下かは判別出来なかった。

「どうかしたんですか?」

そのまま話に夢中になっているように見える黒炎達は置いといて、最初に気が付いたダスクが女性へと声を掛ける。

「少し(よろ)しいですか?」

女性から返ってきたのは硬い口調の言葉で、助けられたといってもつい先日まで捕まっていたせいで男のダスクにはより警戒心が働いているようである。彼女の声を聞いたダスクは、フードから(のぞ)いている色白の口元から同年代だろうと考えていたが、その予想が当たっていたと分かって内心で満足していた。

「おぉ、おぬしはあの時の勇ましき者じゃな。あの情け容赦の無い椅子の一撃は忘れられぬ」

「っ!?あ、あの時はっ」

黒炎と話を続けていると思っていたバーナに突然話し掛けられたせいか、分かりやすくうろたえる女性はそれが恥ずかしい内容だったらしく、肌の見えている所を赤く染めてしまう。

「くっくっくっ、見事なものだと褒めているだけじゃ」

「うぅ……あっ」

その時の事を詳しく聞いていなかったので、何があったのか分からないダスクと黒炎が不思議そうな顔でジッと見ているのに気が付いたらしく、深呼吸を何度かした女性はまだ少し赤みの残っている顔でダスクへと視線を向けてくる。

「……こほん。

 失礼、お見苦しいところを見せてしまいました。

 お願いします。私を、私達を助けて下さい。貴方(あなた)の助けが必要なのです。

 黒の火獣(かじゅう)の加護を受けたる者よ」

咳払いをして区切りをつけた女性は、真剣な口調で助けを求める言葉を伝えてきた。

 ザワザワザワッ

ちょうどその時、砦の入口の方向から大勢の人間、おそらく兵士達が到着した騒がしさが伝わってくるが、それに反応して顔を向けたのは黒炎とバーナだけだった。聞き覚えのある言葉が有った事にも驚いたダスクであったが、それ以上にジッと訴えるように合わせてくる紫水晶(アメジスト)のような紫瞳の神秘的な輝きに絡め取られたかのようにも感じていた。


 アル達の仲間の最後の一人が運悪く(?)賊に捕まってしまったものの、その最後の一人であるエリス本人の導きでどうにか助け出す事に成功する。ついでに一緒に捕まっていた女性達も助ける事になったダスク達は、賊や女性達を兵士に任せる為にアルがアフ・オルトレスに戻る事になった。そして兵士達の到着した朝、女性の一人が助けを求めてくる。悪魔族が黒炎を示す時に使った火獣という言葉を知っているこの女性は、これからダスク達をどんな運命へと導いてゆくのだろうか。

楽しんで頂けたでしょうか。続きも早く読んで貰えるように頑張ります。

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