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それは黒くて重かった  作者: D.K.B.Y.
第二章
11/45

再会と再開(前編)

なかなかペースが上がらず、少し遅くなりました。やっぱり話を創るのは難しいですね。

 ブンッブンッブンッ

早朝の冷たく静かな空気の中に聞こえる唯一の確かな音は、何か重たい物を規則正しく勢い良く振っている音であった。その音の発生源は古い造りの二階建ての家の裏側に有る井戸の近くで、そこに居る人影が両手で構えた大剣を全く重さを感じさせない速さで上段から地面すれすれまで何度も振り下ろしている。その人影は全身鎧を身に付けている事に加え、背中には巨大な盾を背負っているので、大剣を含めた全部の重さを合わせたら物凄い重さになるのではないかと、仮に見ている人が居たとすればそう思っていたに違いない。少し時が経ったところで、両手持ちの構えからの素振りは済ませたらしく、大剣を片手で構え直し、もう片方の手に背中の盾も装備して鍛錬を続ける。盾と大剣を持ち替えて同じ回数ずつ振っていると、次第に陽も昇ってきて周囲が明るくなってくる。城壁沿いのこの場所は、直接陽が当たるのは昼近くになってしまうが、それでも周囲の明るさに人影の姿も良く見えるようになってきていた。決めた数を振り終わり大剣と盾を立てかけると、次いで脱いだ兜の下から出てきたのはダスクの満足そうな顔で、用意しておいた手拭いを井戸水で濡らして水気を絞ると流れる汗を拭い始める。更に鎧を脱いで汗を拭いてから着替えようとしているダスクの後ろから、少し呆れたような聞き慣れた声が掛けられる。

「暗いうちから走った後に、たくさん素振りだもんね。よく飽きないな~、キミは」

「飽きるとかって問題じゃ無いんだけどな。

 日課を再開しただけだし、学院も始まるから鍛えないと駄目なんだよ、黒炎」

家の出入り口の方をダスクが振り返ると、そこには見慣れた黒炎の姿があり、口調と同じく紅い瞳に呆れたような光を浮かべてダスクを見ている。

「それよりも、お腹減ったから朝ごはんよろしく~」

「了解。着替えて片付けたらすぐ用意するから中に戻ってなよ」

「早めによろしくね」

そう言って機嫌良さそうに尻尾を振りながら家の中に入っていった黒炎を、苦笑しながら見送ったダスクは、着替えを終えて装備を全て持つと、黒炎の出入りした扉を通って家の中へと入る。洗い物をまとめて置いておく場所に放り投げ、装備を組み合わせて暖炉の部屋の隅に置くと、さっそく朝食の準備を始めた。焼いたパンに生野菜と炒めた腸詰を挟んだサンドパンと、熱いお茶を用意したダスクは、暖めておいた暖炉の部屋へと運んでテーブルに自分の分を、床の黒炎専用の器に黒炎の分を分けて置く。待ちかねていた黒炎の尻尾は勢い良く振られていた。

「いただきま~す。お腹と背中の皮がくっついちゃいそうだったよ」

「大げさだな。簡単なモノだけど満足してくれよ」

「ダイジョブだよ。ダスクの料理だって美味しいよ」

「そっか、それならいいけど。予鈴前に学院長室に行きたいから早く食べよう」

「りょ~かい。一週間遅れだけど初日だから、キミも緊張してるんじゃない?」

「多少はね。まあ学院の空気には慣れてきたから、後は友達が出来るかどうかかな」

「ダイジョブだよ。今迄だってけっこう出来てたじゃん」

「そうだな。とにかく頑張るよ」

今日の事を話しつつ、いつもより早めに食事を終わらせたダスクは食事の片付けを終わらせ、歯磨きをして部屋に上がると、今日で三日目になる制服に身を包んで鞄を持つと、暖炉の部屋で待っている黒炎の元へと戻る。

「だんだん見慣れてきたけど、その服かっこいいよね」

黒を基調とした制服は軍服にも似た質実剛健なデザインであるが、所々に華美にならない様に飾り付けがされ、王都の学院の中では人気の有る制服らしく、スカート着用の女性用は特に評判が良いらしい。

「まだ着慣れない感じだけど、悪くはないな。丈夫で動きやすいし」

「機能重視ってのがキミらしいな~。さあ、いこっか」

「そうだな。早めに行っておいた方がいいだろう」

そう言ったダスクは暖炉の火を消して戸締りを確認後、黒炎に続いて家を出て施錠する。先程よりも高くなった陽に照らされて、既に周囲は明るくなっており、学院の中央塔も綺麗に見えていた。扉を通って校舎へと入ったダスク達は、二日で色々歩いて覚えていたので迷う事も無く学院長室へと辿り着く。ノックをして入ると、初めて来た時と同様に立派な造りの席に座った学院長と、微かに笑みを浮かべたセシリアが出迎えてくれる。

「おはようございます」

「おはよ~」

「おはよう。補習も終わって今日から初めての通常授業だが、良く眠れたかな?」

「はい。勉強は苦手ですが、初めての事は楽しみです」

「そうか、それは良かった。セシリアくん、今日からの説明をよろしく頼むよ」

「畏まりました」

そう返事したセシリアは、立ち上がってダスク達の正面に歩いて止まる。

「もう分かっているとは思いますが、各授業には予鈴と本鈴が鳴ります。

 予鈴が鳴ったら、本鈴までに各授業を行う教室へと移動しておいて下さい。

 午前の授業は共通の学科なので君の所属するクラスで受けてもらいます。

 担任の教師が迎えに来るので、一緒に行って簡単な自己紹介を最初にしてもらいます。

 それ以降のカリキュラムはこれに記してありますので確認をお願いします。

 午後からは貴方の専門に関する授業になります。

 学院長に聞いてはいますが、重装兵という事で間違いありませんか?」

「僕の装備がそれに当てはまるのならそうです」

「うむ、ダスク君の装備は重装兵以外では運用不可能なモノだ。

 まあ、重さも関係なく動ける君は、少々規格外ではあるがな」

「ありがとうございます、学院長。

 そういう事ですので、午後のカリキュラムも記してあります。

 この中で実習という授業がありますが、個別とチームのモノがあります。

 個別は個人で武技を鍛えるモノで、同じ専門コースの生徒同士で模擬戦を行ったりします。

 技量によりますが、腕利きの実技担当教師とも手合わせ出来る機会もあるかもしれません。

 チームの方は新学期が始まって二週間以内にチームを組んで学院に登録してもらいます。

 チームごとに様々なミッションを行ってもらい、その結果を報告してもらいます。

 一年ごとに集計して進級出来るかを判定しますので、良いチームメイトを得る事が重要になります。

 貴方は学院へ遅れて到着しましたが、期限は変えられませんので今日から一週間が勝負になります。

 出来るだけ周囲の人間と交流をもって、良い仲間を作って下さい。

 おおまかに説明しましたが、何か質問はありますか?」

少しの間、渡された時間割表をジッと見ていたダスクであったが、聞きたい事があったらしく、セシリアの顔へと視線を向ける。

「午後の専門の授業に所々空いている場所がありますが、そこは何をして居ればいいのでしょうか?」

「その時間は各々が自由に行動して構いません。希望すれば他のコースの授業も受ける事が出来ますよ」

「なるほど、分かりました。説明ありがとうございます、セシリアさん」

「いえ、これも仕事なので気にする事はありません」

「ねえ、ボクは何をしていればいいのかな?」

学院長室をうろうろしていた黒炎が、話が一段落したと判断して声を掛けてくる。

「さすがに毎日ずっとここに居るのも厳しいだろうね。

 私もセシリアくんもここをちょくちょく空ける訳にもいかないし、さてどうするのが良いかな」

その学院長の言葉に、ダスクもセシリアも無言でどうすれば良いか考え込む。単純だが難しい問題に、黒炎以外は真剣な顔になっていたが、黒炎自身は気楽そうに尻尾をゆったりと振りながら待っている。

「午前の共通科目の時はここに居てもらって、午後の専門科目の時にダスク君と一緒に居てもらうか」

「学院長、それは……」

「セシリアくんの言いたい事も分かるが、これが一番簡単な解決方法じゃないかね?

 黒炎君には軍用犬の肩書きを付ければいい。戦闘用じゃなく、偵察用なら大丈夫だろう」

「いいんですか?ありがとうございます、学院長」

「ありがと~。さすが学院長のおっちゃん」

嬉しそうなダスク達の様子に、諦めたように溜め息を吐いたセシリアは、しょうがないなという風な顔になると、自分の机に戻って何かを出してくる。

「学院長の許可が出ましたので特例として認めます。黒炎くんはこれを身に付けていて下さい」

そう言ったセシリアの差し出した掌に載っているのは、このオルフィエルド学院を表す紋章が彫られたペンダントだった。

「これは身に付けた本人の意思で取り外しが出来ます。

 そういう魔法が掛けられていて、他の人間には取り外しは出来ませんので気を付けて下さい」

「りょ~かい。それじゃあ首に掛けてよ、セシリア」

それに応えて頷いたセシリアは、黒炎の前にしゃがんでその首に掛ける。ついでに黒炎の頭を撫でているセシリアの目の前で、長かったペンダントの鎖が自動的に適した長さに調節されていった。

「どう?似合ってるかな?」

「うん。装飾品なんて付けた事無かったけど、黒炎に意外と似合ってるよ」

「うむ、君の瞳と似た色の石だから良く似合ってるな」

ダスクと学院長の言葉を聞いて、確認する様にセシリアの顔を見る黒炎に、二人に同意してセシリアは頷く。

「みんなありがと~。ボクも学院の生徒になれたみたいで嬉しいよ」

その言葉が正しいという事が、ブンブンと勢い良く振られる尻尾で分かり、黒炎以外はその様子を微笑ましく見ていた。

 コンコン

扉をノックする音に我に返った一同は、一斉にその方向へと顔を向ける。学院長の了承する言葉に続いて入室してきたのは、不景気そうな碧瞳とくすんだ長めの金髪の三十代後半位の男性で、痩せた身体に学院長と同様の黒で揃えた服と教師を示す茶色のマントを纏っている。ダスク達の目には少し卑屈そうに見える人物であった。

「もうそんな時間か。彼が君の担任になるグレゴリーだ。グレゴリー、ダスクをよろしく頼むよ」

自分の所属するクラスの担任の教師の登場に、慌てて一歩踏み出して一礼して口を開く。

「ダスク・ウォールです。これからよろしくお願いします」

「ああ、わかった、わかった。

 分かりました、彼はお預かりいたします。それでは時間も無いので失礼します、学院長。

 さっさと行くぞ、ついて来なかったら置いて行くからな」

不機嫌そうな顔でそう言ったグレゴリーは、学院長に一礼してセシリアには愛想の良い笑みを向けてから、答えも聞かずにさっさと部屋を後にする。ハッキリとした態度の違いに呆気にとられていたダスクは、見えなくなった背に慌てて追いかけながら口を開く。

「それでは行って来ます。黒炎の事よろしくお願いします。おとなしくしてろよっ、黒炎」

早口でそれだけ言い、扉の向こうへと消えていったダスクの走る足音が遠ざかっていくのが聞こえてくる。グレゴリーが言葉通りに待つ事も無く教室へと向かって行ったのが、部屋に残った面々にも分かった。

「あいそがないっていうか、変わったヒトだね」

「彼も教師としては優秀な(ほう)なんだがね。

 何度か注意してるが、相手の身分や立場によって態度を変えがちなのが欠点だな」

「ボクはべつにいいけど、ダスクはタイヘンそうだな~」

そんな会話を聞きながら、グレゴリーが来てから一瞥もしていないセシリアは、変わらずテキパキと自分の仕事を処理し続けていた。

 カツカツカツ

早足で前を歩くグレゴリーに何か声を掛けようとするダスクであったが、その背は無言でこちらを拒絶している様で、諦めておとなしくその後をついて行く。しばらく歩いた後に、ある教室の前で足を止めたグレゴリーは、しかめた顔でダスクへと視線を向ける。

「ほとんどの生徒が平民のお前と違って貴族や役職の有る家の子供だから、失礼の無い様にしてくれよ。

 とばっちりは担任の俺にふりかかるんだからな。

 それじゃあ呼ぶまでここに居ろ」

ある意味清々しい態度で自分本位の事をダスクへとぶつけたグレゴリーは、フンッと鼻息を出してから教室の中へと入っていった。ザワついていた教室からは、下手に出て生徒を(なだ)めるグレゴリーの声が聞こえてくる。ある程度しずかになった教室から自分を呼ぶ声が聞こえてきたダスクは、深呼吸をして緊張を(ほぐ)してから入室してグレゴリーの隣に立った。教室中から向けられる視線を毅然とした態度で受け止めながら顔をしっかりと正面に向ける。グレゴリーに自己紹介を促され、ダスクは口を開いた。

「王都からはとても遠いですが、ノースアタロス村から来た、ダスク・ウォールです。

 分からない事ばかりですが、これからよろしくお願いします。

 専門は重装兵なので、同じコースの人が居ましたら、色々教えて貰えると嬉しいです。

 あ、後、実習のチーム決めが残り一週間なので、組んでも良いと思う人が居ましたら助かります」

「余計な事はいい。お前の席は……あそこの一番後ろだな。さっさと座れ」

不機嫌そうな顔でそう言うグレゴリーに、慌ててクラスメイト達に一礼したダスクは、席の間を通って自分の席に向かう為に足を踏み出す。自分の席へ視線を向けていたダスクには見えていなかったが、左右の席の右の先頭に座っているヒョロリとした金髪の生徒が、ニヤリとした顔でダスクの足を引っ掛けるように足を通路へと出していた。それに同調したらしく、すぐ近くで同じ様な顔で同じ行動をしている銀髪と(あかがね)色の髪の生徒も居た。周囲の生徒達は面白そうな余興が始まったと、それを楽しむ顔で見ていたが、予想に反して何事も無く通り過ぎていくダスクの様子に、一様に不思議そうな顔になっていった。足を出していた金・銀・銅の三人組は、信じられないモノを見たような顔でダスクを見送る。席に座って顔を上げたダスクの視界に、自分を注視する生徒達の姿が映るが、突然の事に驚いたダスクは自分の後ろを見ても何も無いと確認して、更に分からなくなる。その様子に、ハッとした生徒達は連絡事項を話し始めたグレゴリーへと視線を戻す。それに合わせて自分も視線を前に向けたダスクには気付く事は出来なかったが、悔しそうな顔でダスクの方を見る三対の目が睨む様に向けられていた。

 連絡事項の伝達が終わり授業が始まると、勉強の苦手なダスクは授業に集中してさっきまでの事はすぐに忘れてしまった。チームを組む期限が迫っているので、授業と授業の間の時間になる度に周囲の生徒に声を掛けてみるダスクであったが、急に他の生徒と話し始めたり、まるで聞こえていないかの様な態度をとられてしまう。自分の話し方が悪いのかと思いつつ、あまりの反応の悪さに今日は諦めようと思ったところで午前の授業の終わりを示す鐘が鳴った。荷物を片付けて鞄を持ったダスクは黒炎と合流する為に学院長室へと足を踏み出すが、落とした視線の先に行く手を阻むように立つ誰かの足の先が見えてくる。いつまでも避ける気配の無い足に視線を上げると、そこにはダスクの足を掛けようとしていた金・銀・銅の三人組の姿があった。疑問に思っている事を伝えるように三人組の顔を見ると、三人で揃えたようなニヤニヤ顔でダスクへと声を掛けてくる。

「無駄な事はやめた方がいいぞ。平民風情とチームを組む者が居るわけがない」

「くっくっく、下賎な者らしくずうずうしい奴だな」

何を馬鹿な事を言っているんだと思ったダスクは、呆れてモノも言えなくなり、そのまま黙って三人組の方を見る。それを違う意味にとった金が、まあまあという素振りを銀と銅に向ける。

「まあ待て。寛大な俺としては条件次第ではチームに入れてやってもいいぞ。

 平民は平民らしく、我らに膝をつき、忠誠を誓うがいい」

最初の言葉に少し顔色を明るくするが、続く言葉に先程以上に呆れたダスクは、やれやれとした仕草で首を振ると、少しも考える間も無く返事を返す。

「何を言っているんだ君達は?そういう事なら遠慮させてもらうから、僕はもう行くよ」

失望感に力が抜けそうになるが、毅然とした顔で三人組を避けて進んだダスクは扉へと手をかける。あっさりと提案を蹴られた三人組は少しの間固まっていたが、ハッとして怒りの顔になると、揃ってダスクの方へと身体を向ける。

「わざわざ声を掛けてやったにも関わらず、その態度とはな。さすがは平民だなっ」

「くくっ、下賎な者はどこまでいっても下賎な者らしい」

「この先、チームを組んでくれる物好きが居るとは思えんがな。せいぜいあがいてみせるがいい」

それらの言葉に反応する事も無く、ダスクは堂々とした態度で教室を後にする。その後姿を苦々しげな表情で見送った三人組に、周囲の生徒達はとばっちりを恐れてダスクを相手にしない事にしようと話し合っていた。その中で(ただ)一人心配そうな顔でダスクの出て行った方向を見ていた女性徒が居た事には誰も気が付かず、友人に呼ばれたらしい女生徒が肩までの髪を揺らして友人へと駆け寄る頃には、その顔は笑顔に戻っていた。

 学院長室で黒炎と合流したダスクは昼食の為に我が家へと戻っている途中であった。しばらく歩いて人気の無い場所に来たところで、黒炎は歩きながらダスクへと視線を向ける。

「そろそろいいかな。何かあったのかい?」

学院長に最初の授業の感想を聞かれたが、差し障りの無い事だけを答えておいたダスクではあったが、長い付き合いの黒炎には隠せなかったらしく、わずかな空気の違いを察知されたようだった。

「やっぱり黒炎には隠せないか。ちょっとクラスで色々あったんだよ」

「学院長のおっちゃん達もなんとなく気付いていたっぽいよ」

「ははは、かなわないな。自分達よりは身近な黒炎に任せたって事か」

「さすがは年の功ってやつだね」

「そんな事言ったら、学院長はともかく、セシリアさんは怒ると思うぞ」

「あははっ、ナイショにしといてよ」

表には出さないようにしていたつもりのダスクであったが、学院長達にも悟られていた事で知らずに張り詰めていた気持ちが緩むのを感じる。学院に入るまでは学院長達に世話になるのは気にならなかったが、学院で学ぶ場に立ったら自分達で問題を解決していこうと思っていたダスクは、必要以上に力が入っていたらしい。深呼吸をして吐く息と一緒に悪いモノを吐き出すと、気分も落ち着いて冷静に話をする事が出来そうであった。

「なるほどね~、なんでそういうコト言うんだろ。わっかんないな~」

ダスクの報告を聞いた黒炎の第一声がこれである。その言葉に苦笑しながら、同じ事を考えていたダスクは一つ溜息を吐く。

「そうだよな。せっかく同年代が集まってるんだから、共に強くなっていけばいいと思うんだけど。

 わざわざ身分の上下?で排除する意味が分からない」

「へ~みん?っていうのがボク達だけだとすると、メンドクサイコトになりそうだね」

「そうだな。積極的な三人組もそうだけど、周りで見てるだけの人も変わらないからな。

 行動とかで僕の印象を変えていくにしても、チームを組んでくれる人が居ないと駄目だし」

「時間がないからね~」

一様に悩んだ顔で歩いていたが、校舎から出る扉が見えてきても良い考えは浮かばず、ひとまず棚上げにして昼食を摂る為に我が家へと戻る事にした。手早く腸詰と野菜のサンドパンを作って食べたダスクは、装備を整えて黒炎と一緒に午後の専門コースの授業を受ける為に校舎へと戻る。位置的に見て、学院の敷地の南東に有る、訓練場に面した教室に移動した。そこにはすでに数人の生徒が鎧姿で待機しており、黒炎を連れたダスクを不思議そうな顔で迎える。彼等の鎧は装飾も多く、赤や青の純色や白や黒に彩色されて目に鮮やかなのに対して、ダスクのくすんだ黒色はみすぼらしく見えるらしく、すぐに好感の持てない視線に変わる生徒も居た。それでも午前中のクラスでの出来事と比較すれば何でもない様な事なので、ダスクは落ち着いたまま空いている席に座り、黒炎もその傍らに横になる。黒炎の事はペンダントの存在があり、珍しく軍用犬が居ると思った生徒は居たが、それ以上疑うような視線を向けられるような事は無かった。時間になって本鈴が鳴ると、教室の扉が開いて存在感の大きな人物が入ってくる。猛禽類の様に鋭い碧瞳と短く刈った金髪の二十代後半位の抜身の剣の様な男性で、見上げるような身長に分厚い筋肉がバランス良くついた戦う身体をしている。教室内をぐるっと見回してダスク達の姿を確認すると、渋い落ち着いた声で話し始める。

「新入りが居るようだから、もう一度自己紹介しておく。

 私は前衛の実技全般を担当しているアーノルドだ。

 私が認めるのは実力だけだ。くだらない事をするような人間はここには要らない。

 自分を鍛える事だけを考えて精進していってくれ」

その内容に、ダスクは学院長からアーノルドへ何かが伝えられたのではないかと思い、黒炎も同じ様に思ったらしく、どことなく嬉しそうな様子でダスクの顔を見ていた。

 そこからは重装兵の戦闘中の動き方等を教わった後、待ち望んでいた実技訓練を行う為に訓練場へと出る。黒炎は教室の中からその様子を楽しそうに尻尾を振りながら眺めていた。整列して待っていると、年季の入った重装兵用の鎧を着たアーノルドが大剣を持って出てきて生徒達の前に立つ。

「まずは軽く準備運動をしたら訓練所の外縁を十週走って来い」

完全装備のまま走るのは重さもあって苦しいものなので、生徒達はうんざりしたような声を出していたが、毎朝長距離を走っているダスクは皆とは逆に、それだけでいいのかとついつい考えてしまう。走り始めた生徒達の最後尾について行きつつ、遅く感じるペースがここのやり方なんだなとダスクは思っていたので、走り終わってしゃがみ込む面々に合わせて、全く疲れていないのに座っていた。

「さて、それでは一人ずつ総当たり戦をしていくぞ。

 重装兵はその場を維持するスタミナが必要となってくるからな。

 見所の有る奴には私も参加して鍛えてやろう」

先程にも増してうんざりしたような声が上がるが、言った事はほとんど撤回しないアーノルドの性格を分かっていた生徒達は、諦めたように立ち上がって自分の装備を確認していく。見た目からしていかにも強そうなアーノルドに、強い人間と手合わせ出来ると、ダスクは張り切って心の準備を整えた。

 そこからは一人ずつ全員と一騎討ちを短時間ずつ続けていく。たまにアーノルドが加わって余力のありそうな生徒を、同じ位疲れる程度に揉んでいった。最後にダスクの番になり、教室で余所見をしていた黒炎はもっと良く見ようと教室から出て見やすい場所へと移動する。

「新入りの力量も知りたいから全員頑張れよ。今回はどういう状態でも、最後に私もやるからな」

その言葉を聞いた生徒達は、ご愁傷様という風な顔でダスクの方を見ていたが、ダスクはどうしようかと悩んでいた。思った以上に自分以外の生徒達との力量に差が有る事が分かって本気では動けないと思ったのと、午前の出来事が頭に浮かび、ここで更なる反感を生んだらマズイ事になると判断したからである。心を決める暇も無く、無情にもアーノルドの開始の言葉が掛けられる。

「始めっ!」

同時に向かってきた生徒の攻撃を盾で弾いたり、剣で受けながら、それぞれに合わせていこうと結論付けたダスクは、それがいかに難しい事かを意識する事も無く、その通りの事をいとも簡単に続けていった。剣を合わせた生徒達は一様に、なかなかやる奴だと思っていたが、アーノルドだけはダスクが何をやっているかを分かっていたので、不機嫌そうに鋭い目を徐々に鋭くして見ていた。最後の生徒と戦い終わったところで、少し疲れを感じても、まだまだ元気なダスクの前にアーノルドは進み出る。

「なかなかやるな。少し休ませてやりたいところだが、お前だけ特別扱いするわけにはいかない。

 (強いなお前は。だが、手を抜いて戦うのは感心しないな。これが終わったらお前は残っていろ)」

言葉の後半は小さい声で、近くに居たダスクにしか聞こえていなかった。やっぱり力量の有る人間には悟られてしまうな、と思いつつ、自分でも良くない事だと思っていたダスクは素直に頷いていた。アーノルドとの一騎討ちが始まっても、ダスクは先程と同じ様にもっぱら受けにまわっていた。さすがにアーノルドの打ち込みは早く重かったが、ダスクと同じ様に手加減していたので、周囲の生徒達も不自然には思わなかった。それでもようやく疲労感が強くなってきたところでアーノルドは剣を止める。肩で息をするダスクの様子に、笑みを向けていた生徒達であったが、ダスクがアーノルドと剣を合わせていた時間が自分達の数倍の長さであった事に気が付かなかった。

「よし、全員終了したな。皆少しずつ成長しているが、まだまだ重装兵としては未熟だ。

 自主的にも鍛えておかないと、進級するのは難しいから心しておけ」

『はいっ!』

生徒達全員が声を揃えて力強く返事をする。その様子に満足そうに頷いたアーノルドは、これで今日の授業は終了だと宣言して生徒達を解散させた。思い思いに帰っていく生徒達を見送った後、残っていたダスクと、いつの間にか側に来ていた黒炎へと視線を向ける。

「お前が黒炎だな、話は学院長からは聞いている。私の前でも言葉を話しても大丈夫だ」

「そっか、ありがと~、アーノルド」

「気にするな」

フッと笑みを浮かべたアーノルドは、黒炎の頭を軽くひと撫ですると、表情を引き締めてダスクの顔を見る。怒られると思っているダスクは、真面目な顔で見返しながら判決を待つ人間のような心境で立っていた。

「それじゃあ今から本気で手合わせしようか。お前の本当の実力を知っておきたい」

「えっ!?」

考えていた事と違う事を言われて驚くダスクに、不敵な笑みを浮かべながらアーノルドは頷く。それを見たダスクは、徐々に言葉の意味が分かり、嬉しそうな顔になって了承の頷きを返していた。

「ありがとうございます。ご指南よろしくお願いします」

「ああ、遠慮なくかかって来い。指南になるかはお前次第だがな」

「がんばれダスク。キミの強さで驚かせちゃいなよ」

黒炎に頷いたダスクは、片手の盾を黒炎の傍らに置いてくると、アーノルドの前に立って大剣を両手で構える。その構えを見たアーノルドは同じ様に大剣を構えながら、思った以上にダスクの力量は高いと感じて気を引き締める。二人の間には、ピリピリとした緊張感が満ち、離れている黒炎の場所でもそれを感じる事が出来た。

 ガッ

黒炎がまばたきをした瞬間に、一気に距離を詰めた二人の剣が打ち合わされ、大きな音と衝撃が辺りに響く。そこから双方共、袈裟斬り等の斬撃や突きを出し合いつつ、体術を交えて打撃も打ち合う。その激しさは、二つの竜巻がぶつかり合っている様な荒々しさを感じさせた。数十合にも達した剣戟が三桁にも近付いたところで押され始めたのは、驚いた事にアーノルドの方であった。少しずつ大剣に歪みが出てきた為、思った所に剣がいかなくなったのである。それから数合で両側に分かれた二人は、構えを解いて剣を下ろす。そこにあった緊張感はさっぱりと消え去っていた。

「やれやれ、武器の方がもたないな。残念だがここまでだ」

「そうですね。身体も温まってきたところでしたが、こうなっちゃうと続けられませんね」

「それにしても、お前の力は思っていた以上だったな。さすがに驚いたよ」

「そう言う先生も強いですよ。武器が互角なら、どうなっていたか分からなかったです」

「ふっ、どうだろうな。

 それより、お前は今日みたいに生徒相手なら手加減しても構わんぞ。さすがに実力に差が有り過ぎる。

 訓練は今日と同じ様に、終わった後に私がみてやるからな」

「ありがとうございます。悪い事だとは思ってますが、鍛錬は自主的にもやっておきますね」

その言葉に満足そうに頷くアーノルドと、複雑な気持ちが顔に出ているダスクの傍らから、いつの間にか近付いてきていた黒炎が、普段通りに気楽そうな言葉を掛けてくる。

「話は終わった?イイモノ見せてもらったし、そろそろ帰ろうよ」

それを聞いたダスクは、確認するようにアーノルドの顔を見ると、許可の頷きが返ってくる。

「それじゃあ帰ろう。それでは失礼します、先生」

「またね~、アーノルド」

片手を上げて応えるアーノルドに見送られながら教室に戻ったダスクは、荷物を持って黒炎と一緒に校舎を通って我が家へと向かう。

「あの若さであの強さ、それに加えて平民か……学院という閉じられた世界では異端になりそうだ。

 この先苦労する事になるだろうな」

ダスク達が帰っていった方向を見るアーノルドの口からは、ダスク達の今の状況を正確に示す独り言がポツリと発せられていた。

 授業の終わったダスク達は一度我が家に戻って着替えると、街に出て買い物をしてきてから、空腹の黒炎にせかされながら作った夕飯を暖炉の部屋で食べていた。焼いた鶏肉と付け合せの野菜は薄めの味付けにして素材の味を楽しめる料理になっている。満足そうに食べていた黒炎は、食べながら何か考え事をしているダスクが気になって声を掛ける。

「美味しそうに食べないとせっかくのご飯がもったいないよ」

「ん?ああ、そうかもしれないな」

反応の薄いダスクに、不満そうに尻尾を膨らませた黒炎は、自分の分の料理を一気に食べて水で流し込むと、イスに座っているダスクのすぐ側に近寄って顔を見上げる。

「今日の午前中のコトを考えてるのかい?そういうのって、なるようになるしかないんじゃないかな~」

「そりゃそうかもしれないけど、無責任な事言うなよな」

少しイライラした風に反射的に言葉を返したダスクであったが、のんきそうに自分を見上げる黒炎の姿に毒気を抜かれたらしく、一つ溜息を吐いて普段通りの顔に戻る。

「はぁ、僕だって分かってるんだけどね。諦めずに声を掛けていくしかないんだって事は」

「じゃあ、そうすればいいよ。ゼンブの生徒の中に良いヤツの数人くらいは居ると思うし」

「……そうだな。とにかく週末までの残り四日間あればなんとかなる、って考えよう」

「うん、やっぱり前向きにいかないとね。ボク達らしくないってば」

「ははは、そうかもな。ありがとう、黒炎」

「お礼を言われるコトじゃないよ。

 まあ、どうしてもって言うなら、今度何か美味しいモノを買ってくれればいいよ」

会話をしながら気分転換も出来たダスクは、笑顔になりながら黒炎の頭を撫でていた。

 それから食事の片づけ等を終わらせて寝る準備をしながら、明日からも頑張っていこうと一人気合を入れるダスクを余所に、気楽な黒炎はすでに寝床でスヤスヤと夢の中であった。


 次の日も朝の日課を終わらせて登校したダスク達であったが、状況は昨日よりも益々手強くなっており、午前中は全く成果が出ないままであった。午後の専門コースでは少しずつ同じコースの生徒達と打ち解けてきてはいたが、チームを組むには違うコースの生徒が少なくとも二人は必要なので、ほとんど前に進んでいないのと同じであった。終了後にアーノルドとの鍛錬が終わり、帰る準備をしていたダスク達は、背後からアーノルドに声を掛けられる。

「集中しないと鍛錬の意味が無いぞ。何か心配事でもあるのか?」

「すみません、ちょっとチームメイト探しが難航してまして。明日からは気を付けます」

「そうか、まあ頑張れ。手を抜かずに頑張っていれば、いずれ見ていた誰かが助けてくれるさ」

「はい。それしか出来ないので、最後まで頑張って探します」

その言葉に頷いたアーノルドに見送られてダスク達は我が家へと帰って行った。食事等を済ませてベッドに入りながら、明日も頑張ろうと心に決めつつ眠りへと落ちていった。


 残り三日の今日も朝の日課を済ませて登校したダスク達は、いつものように学院長室で別れて、ダスクは教室へと向かっていた。今日こそは見付けると決意を新たにしながら教室の扉に手を掛けようとしたところで、教室の中からどこか聞き覚えのあるような声が言い争うのが聞こえて来る。一方は、ここ数日ダスクを悩ませている事の元凶である、金・銀・銅の三人組で、ダスクが他の生徒に声を掛けようとすると決まって邪魔をしてくるので、悪い印象ばかりが積み上がっていた。そしてもう一方は、女生徒の声で、まだその女生徒と会話をしていないはずなのにも関わらず、何故か聞き覚えのある様な懐かしい様な気分になる声であった。数日ではあったが、喧嘩をする様な雰囲気の無かったクラスなので、興味が湧いたダスクはそのまま様子を見る事にする。

「貴方達は貴族でしょ?

 クラス中に相手にするなって言ったり、話し掛ける邪魔とか姑息な真似をして。

 直接には何も出来ずに卑怯な事ばっかりしてて、みっともないと思わないの?

 身分の上下を出すなら、身分に見合った態度くらい出来ないのかしら」

「はっ、没落貴族が何を言っている。貴族とは名ばかりの家に住んでるうちに平民かぶれになったか。

 お前も我らに無礼な真似をして許されるとでも思っているのか?」

「ふんっ、貴方達に許してもらおうなんて思っていないわ。

 私は貴族らしい振る舞いをしなさいって言ってるだけなんだから」

「ちっ、生意気な女だな。お前達、少し罰を与えてやれ。そうすれば改心するだろうからな」

「女相手に暴力ね、どこまで残念な頭をしているのかしら。貴族というより蛮族だわ」

「こいつっ、ここまで愚弄されたら手加減出来んぞ。何をためらっているんだ、さっさとやれっ」

命令された生徒が女生徒に向かおうとしたのだろう、教室の中から他の女生徒の悲鳴が廊下まで聞こえて来る。

 バンッ

意図的に大きな音を立てて扉を開いたダスクの視線の先には、一様に固まって動きを止めたクラスメイト達の姿があった。その中を普段通りの顔で抜けながら自分の席に荷物を置いたところで、金・銀・銅の三人組がいち早く我に返る。

「くっくっく、平民臭さが増したようだな。まあいい、今はあの女だ。お前達、さっさとやるのだっ」

その言葉に再び銀と銅が女生徒へと向かい、近付く二人の姿を毅然と見返しながらも女生徒の顔はこわばり、手は震えていた。銀と銅が手の届く位置に来たところで、女生徒を護るように進み出た影があった。

「平民風情が我らとやるつもりか?隅で小さくなって震えていればいいものを」

その言葉で最後に目を閉じてしまっていた女生徒が目蓋を開くと、そこにはダスクの銀と銅と比べれば小柄な背中が見え、驚きながらも嬉しそうな顔になる。

「ついでに一緒にやってしまえ。男ならためらう理由も無いだろう」

それに頷いた銀と銅は、ダスクの左右の肩にそれぞれ手を掛け、まずは痛みで怯ませてやろうと力を込め始める。少しして痛みをこらえる様な呻き声が聞こえ始め、それを聞いた金は楽しそうにニヤリとした笑みを浮かべるが、直後に銀と銅が同時に膝をついて痛みをこらえ始めると、何が起きているのか分からず困惑する。

「何をしている、二人共。一体何が起きているんだっ!?」

周囲の生徒も驚いて注視していると、銀と銅の手首には軽く手を添えているだけの様に見えるダスクの手があるのに気が付いた。銀と銅はその手を外そうと反対側の腕も使って力を込めているが、少しも動く様子が無く、外れる気配が全く無かった。その事実に驚愕しつつも、何かを言おうとした金が顔を上げた瞬間、ダスクと目が合う。

「ひぃっ!」

貴族らしさなど全く無い無様な声に、周囲の生徒も同じ様にダスクの顔を見るが、既に普段通りの表情に戻っており、一様に不思議そうな顔になる。

「僕本人に何かをするのは我慢出来るけど、他の人間に何かをするのは許さないぞ」

淡々とした話し方が、それを聞いていた全ての人間に、ダスクが本気で言っている事を理解させた。そこでやっと銀と銅の手首から手を外したダスクは、後ろに向き直ると深々と頭を下げる。

「ありがとう。僕のせいで怖い思いをさせてごめん」

その様子を見ながら、懲りない金は苦々しげな顔になって言い放つ。

「ちっ、いい気になるんじゃないぞ。今回はここまでにしてやるが、次は容赦しないからな。

 それと、そんなに平民が良いならチームも組んでやればいい。下賎な者同士、丁度いいだろうさ」

それを聞いてまだ懲りてなかったのかと、頭を上げて詰め寄ろうとしたダスクの肩に、引き止めるように誰かの手が載せられる。

「いいわよ。私は彼とチームを組む事に何のためらいも無いから。

 誘ってくれていた人には申し訳無いけど、そういう事になったから。ほんとにごめんなさい」

誰が肩に手を載せていたのか確認しようと振り向きかけた体勢のまま、思っても見なかった出来事に固まるダスクは、嬉しい事なのに何故か困惑してしまっていた。

「ほらっ、しっかりしなさいよ。チームメイトが出来たんだから喜びなさい」

徐々に言葉の意味が理解できてきたダスクは、嬉しさよりも申し訳無さが湧いてくる。

「本当にいいのかい?この先も同じ様な事があったら巻き込まれると思うんだけど」

「構わないわ。意外と早く再会出来たし、友達は大事にしないとね」

「えっ!?」

その言葉に驚いたダスクは、慌てて女生徒の顔を見る。女生徒は、肩までの栗色の髪と明るい翠の瞳の可愛いというよりは美人顔の少女で、背はダスクより頭一つ分低く、小柄で少し控えめな体型に学院の制服が良く似合っていた。大人しそうに見える外見とは逆に、先程までの勝気な性格が特徴で、微かに薬草の香りが感じられる。栗色の髪は全部を短くしてある訳ではなく、両側の耳の前に一房ずつ前と変わらぬ長さの髪が垂らされてワンポイントになっていた。

「ああっ!?」

驚きに口をパクパクさせるダスクを楽しそうに見た女生徒は、時間になり教室に来たグレゴリーの声で席に座る生徒達と同様に席へと戻る。その場で立ったままだったダスクは、グレゴリーに注意されて席に向かいながらも、彼女がどうしてここに居るのか疑問に思っていた。


 やっとの事でチームメイトを一人作る事が出来たダスクであったが、何故彼女がここに居るのかが分からず混乱していた。チームを組む期限が迫る中、ダスク達は無事にチームメイトを見付ける事が出来るのだろうか。

楽しんで頂けたでしょうか。続きも早く読んで貰えるように頑張ります。

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