第六章 十八幕
地べたに転がる男を、まつりと十郎太は手際よく縛る。
朧は眉を下げ、男を眺める。
そんな中、まつりは顔向きを変える。
斬られた遊郭に、外の香りが舞い込んでくる。
「……おっさん。」
まつりが呟く。
十郎太はその横顔を見詰め、口を開く。
「行こう。」
十郎太へと振り返り、まつりは頷く。
立ち上がる二人。
朧の瞳が優しく見詰める。
まつりは朧に向き直り、口を開く。
「まだ他に物騒な人いるかな?俺、行か……。」
朧の指がまつりの唇に当てられる。
「血の現場には行けないのでしょう?」
まつりの瞳が、少し横に流れる。
朧は微笑む。
双子のような禿がそれぞれ、面を持ってきた。
「あなた達は、朝までここに居た。」
「え?」
朧は受け取った面を、そっとまつりにかける。
「ここで私と朝食を頂いた。」
十郎太へ眼をやると、手招きする。
「おかわりもいっぱいした。」
十郎太へと面をかける。
禿が包みを運んできた。
朧は包みを受け取り、二人の首に下げる。
ほかほかのおにぎりが、丁寧に包まれていた。
「……ね?」
朧は小さく眉を下げると。
「どうか、ご無事で。」
深々と頭を下げる。
まつりは笑顔を返す。
「俺、夕月さん嫌いじゃないよ。」
朧は微笑む。
十郎太も頷く。
そっと、朧の唇が十郎太の耳に寄る。
「大人になったら、またいらっしゃいね。」
十郎太の顔が茹で蛸の様に染まる。
途端に、その体は宙に浮く。
まつりが拳を振り上げている。
朧は袖で口元を隠しながら笑っていた。
熊五郎は月を眺める。
腰の刀を握る手が、震える。
ふと視線を下げる。
鼻緒が切れていた。
梅屋で三吉を膝で寝かしつける銀二。
何かが割れる音がした。
そっと優しく三吉の頭から膝をどかすと、客間へ。
店内を見渡す。
ふと、眼を停める。
瓢箪が落ちて、割れていた。
宴席で三味線を弾く朝霧。
客達はみな楽しげに酒を交わす。
そんな景色を、微笑みながら眺める。
べん……。
演奏が止まる。
客が振り向く。
朝霧は切れた弦を見詰めていた。
ひゅうぅ……。
ひゅうぅ……。
榊は振り下ろす。
須王は矢を素早く射掛ける。
椿が叫ぶ。
玄之丞が仰け反る。
膝から崩れる玄之丞を椿は抱き止め、叫ぶ。




