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第六章 冒頭

 三吉の手を引く椿。


 梅屋の前に立ち、茫然と立ち竦んだ。


 そこに梅屋の暖簾は無かった。


 まつりが書いた、依頼者に向けた歓迎の文言も、簡易だけど可愛い料金看板も無かった。


 店の中に人の気配は無く、煙管の香りも、酒の匂いも……。



 

 通りがかりの男に声を掛ける。

「すいません、梅屋に何かあったのでしょうか?」


 すぐに答えは返ってきた。

「あの怖い顔した旦那が店じまいしてたよ。」


 椿の眼が見開かれる。


「依頼も片っ端から断ってたみたいだな。」


 男は指で眼を吊り上げる。

「帰れっていつものやつで。」


 椿は後ずさる。


 男が眉を下げて付け加えた。

「鬼っ子と優男の旦那が何か説明してたけど、聞こえてはこなかったなぁ。」


 椿は男に頭を下げ、三吉を抱き抱える。




 そして、宛もなく走り出した。




 仙蔵は煙管を口に当て、その姿を見詰めていた。

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