前へ目次 次へ 43/84 第五章 冒頭 目の前には、只ひたすらに燃える村が広がっていた。 焼け付く鉄のような赤い匂いと、人々の言葉にならない声、地響き。 それは一瞬の内に広がった。 幼子を引っ張っていた誰かの手はまだ握られたまま、力無く垂れ下がるのみ。 泣いても叫んでも、この絶望が変わる事は無い。 それだけは理解できた。 だから、ひたすら眺めていた。 かつて彼を産み、育ててくれたその二人を。 月影村。 地図から消えたその村の名前を知ったのは、それからずっと後になる。