第四章 十一幕
姫は眼を輝かせ、微笑みを浮かべる。
「おお、そなた達は……。」
小さく咳払いし、玄之丞の元へと駆け寄る。
「いつぞやの礼もまだ出来ておらなんだのに、良くぞ……。」
玄之丞はその小さく震える手に眼を向ける。
姫は視線に気付くと手を袖にしまい、榊へ振り返る。
「援軍のご助力感謝致します。」
そして小さく会釈すると小声で。
「あんじょう気張ってます、故。」
榊は氷のような眼をそのまま外に向け、小さく頷くと口角を上げる。
「別に、あんたの為にとちゃうで。」
その手は袖の中にしまい、重心を落としている。
玄之丞もまた、外に向けて半身になる。
別の階段から怒声が響く。
椿は柄に手を掛け、階段へと振り向く。
「おい、須王とやら。」
椿が声を掛けた男は弓を構え、低く矢を放つ。
茜羽の矢が階段の手摺越しに具足の男の米噛みを通り抜ける。
あげく、その矢はすぐ後ろにいたもう一人の具足の男も抜き、壁に吸い込まれるように消えていった。
椿は目を丸め、柄から手を離す。
「すまない、聞き逃した。」
須王は椿に向き直る。
「見事な腕だな。」
椿は須王に向けて口を開いた。
須王は後ろを振り返る。
榊が苦笑いを見せる。
「褒められてこんかったらしいわ。天下五弓が。」
椿は榊へ振り返り、再び須王を見る。
「……あの藤原須王なのか!?」
須王は首を傾げる。
「ああ、号は須王だが。」
みしみしという奇怪な物音が、天守に鳴り響く。




