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第四章 九幕

 矢を放たれた城も矢を返す。


 城へと手を翳す定道の横から具足の男達が城を目指し、走る。


 門を守る兵は中に避難し、城代の指示を受けた兵達と入れ替わる。


 兵達は刀を抜き、具足の男達を迎え撃つ。


 兵達の眼の前に橙で背に暁の紋が刺繍された、薄灰色で統一された野羽織の集団が現れた。


 兵達の困惑に野羽織の一人が振り返る。

「我ら"暁衆"、党首様の命により助太刀させて頂く。」


 城代が前に進み出る。

「その羽織、以前我らの前に立ちはだかった貴殿らを信用せよと?」


 野羽織は瞳を閉じ、頷く。

「我らは全て敵味方の別なく目的の為に動く。」


 そう言い残し、その野羽織も前へと進んでいった。




「つまり、最初の一撃の時に朝霧殿を糸で引っ張って攻撃から庇った、けど吊ったまま放置してた、と。」

 腕を組みながら、椿は眉を顰める。


 榊は頷き、煙管を咥える。


 朝霧が火を寄せる。


 椿は二人を訝しそうに眺める。

「おい、くっつくな!昨夜のは何だったんだ!」


 朝霧の眼が玄之丞へ向く。

「……え?ふふふ。」


 朝霧の口元が優しく微笑む。


 玄之丞も煙管を取り出す。


 朝霧は駆け寄り、火を寄せる。


「そっちもくっつくな!答えになってない!」

 椿の眼が吊り上がる。


 榊は吐き出した煙を眺め、玄之丞へ顔を向ける。

「旦那、その二刀変わったとこ無いんか?」


 玄之丞は腰の二刀を順に少しずつ引き抜く。


 榊は眼を細める。


「茎に刻まれとるかもしれへん。」


 椿は眼を開く。

「さっきの金属音か!」


 朝霧が呟く。

「差し詰め……"天部斬"肩車と往反といったところかしら。」


 玄之丞は煙を追う様に空を眺めた。




 そして、その瞳の先に、その男は居た。




 榊は鍔に指を掛ける。

「何や、おどれ何でおるん?」


 椿も倣い、柄を握る。


 そして榊へと眼を向ける。

「新手か!」


「……ちゃう。」


「違うのか!?」

 椿はゆっくりと玄之丞へ眼を向ける。


 玄之丞は無言で矢を男へと突き出した。


 男の背負う茜羽の矢と同じ、先程の矢を。


「……横槍を刺してしまい、すまなかった。」

 須王は頭を深く下げると、背を向けて歩き出した。


 椿は榊へ眼を向ける。


「……弟や。化け物の。」


 椿は白法衣を思い出し身構える。


「ちゃうで。」

 榊は眉を顰め、奥歯を噛み締め呟いた。

「もう一匹おんねん。"人間の"化け物がな。」


 その一言に、藤原須王は軽く振り返り、頷いた。

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