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第四章 冒頭
川のせせらぎが心地良く耳に流れ込む。
見上げた空はただ、広く。
暖かな日差しが瞼を優しく閉じさせる。
腕を頭の下で組み、寝転ぶ玄之丞の顔を覗き込む子供。
子供はそっと、つまんでいるものを玄之丞の鼻先に乗せる。
その姿を見て、銀二とまつりは頬を膨らませ、震えている。
玄之丞の鼻先を小さな六本の肢が掴む。
「おい、寝かせてやってくれ。」
女は子供を抱き抱え、銀二とまつりの元へと戻る。
直火焼きの香りが鼻をくすぐる。
女はまつりから串を受け取ると、首をかしげる。
「香りはいいのだが……これは一体。」
まつりは眼の前で齧って見せる。
「猪は獲れたてが一番だよ。」
「はは、薬喰いは不慣れかな?」
女はじっと眺め、恐る恐る口に運ぶ。
そして俯く。
「……!」
顔を上げた女の顔は、飴を舐める少女のように輝いていた。
目を離したすきに子供は再び玄之丞の元へ歩き出す。
「あ、こら、三吉!」
女——首落としの椿は慌てて三吉へと走り出す。
玄之丞の鼻先から、一匹の蝶が青空へと羽ばたいて行った。




