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第三章 五幕

「ああ、旦那。」

 依頼人が駆け寄る。

「ええとそちらの方は……。」


 硝之介は手を差し出す。

「同門だ。縁あって同行する事になった。」


 その手を依頼人は両手で握る。

「さいでしたか!よろしくお頼み申します。」


 玄之丞は新兵衛に向かって歩き出す。


 依頼人は玄之丞の袖を掴み、頭を下げる。

「頼みます、旦那。新兵衛は……あいつはいいヤツなんでさあ。」


 玄之丞は少し立ち止まり、小さく呟く。

「……ああ。」


 硝之介はその様子を静かに見ていた。




「……大丈夫、どこも怪我してないから……。」

 新兵衛は玄之丞に気付くと、深々と頭を下げた。

「すいません、お侍さん。先ほどは助けて頂き。」


 玄之丞は男の後ろ……お玉を見詰める。


 硝之介が周りに眼をやると、通り過ぎる誰もがお玉に見惚れていた。

「……成程、噂以上の傾国、か。」


 新兵衛はその言葉を聞き、向き直る。

「お玉さんはもう、そんなんじゃないんです。」


 その顔はやつれてはいる……しかし眼に精気は籠っていた。


 新兵衛を庇う様にお玉が躍り出る。

「そうたい、うちはもうあんなもんに興味なかと。」


 そしてゆっくりと振り返る。

「今は……この人がおれば。」


 妖艶で、無邪気な微笑みを向ける。


 玄之丞は懐から煙管を取り出す。


 続けて、硝之介も煙管を取り出し、呟く。

「どうやら、釣れたようだな。」


 気付けば、周囲に人の姿は無く、代わりに武装した商人風の男達が四人を取り囲んでいた。




 煙を吐き出し、灰を落とす。


 その灰が地面に落ちる——二つの影が交差し、消える。


 響く金属音。


 背後で轟く爆音。


 新兵衛は震える手でお玉を庇うように構える。


 お玉はか弱く周囲を見渡す。

 目の奥で玄之丞の刀裁き、硝之介の動き、敵の戦力を見る。


 そして新兵衛の袖を引く。

 新兵衛はその目線を辿り、叫んだ。

「お侍さん、危ない!」


 玄之丞は目を細め、跳ぶように二歩下がる。

 そこに無数の矢が突き刺さる。


 新兵衛は叫ぶ。

「朱の人、後ろだ!」


 硝之介は背後からの振り下ろしを小太刀で受け、身を捻りながら刃を滑らし距離を取る。

 刀を振り下ろした男の足元で筒が爆ぜる。


 そして呟く。

「……灰色程ではないが、些か分が悪いか。」


 そして商人達の背後を睨む。

「流石は奴の精鋭……か。」


 玄之丞へ眼をやる。


 商人三人と同時に切り結びながら、玄之丞は小さく頷く。


 前衛の商人の後ろで、荷を背負った商人風の男達が……呪符を広げる。

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