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カーテンコール

「あ、てっちゃん、また売れたよ」

「よし。売れたのは……15番、ピンクの『トリ』だね」

 ぼくは「トリ」を紙袋とビニール袋で丁寧にラッピングし、「15」と書いた付箋を貼り付けた。

「修、10個売れたから、そろそろ発送に行ってきて」

「おし、じゃあ準備ができた商品をこのリュックに詰めてくれ」

「ちょっと待って。ぼくもこの出品が終わったら一緒に行くよ。ついでに何か食べ物も買ってくる」

「じゃあ、ブラックの缶コーヒーを買ってきてよ。亜紀ちゃんはミルクティーでいい?」

「うん。あとなにか甘いものが食べたいな」

「了解。シュークリームとかでいいかな?」

 修と慶次君を送り出した後、ぼくらは出品作業を再開した。ラビリンスのゲームセンターで大量に獲得したぬいぐるみをフリマサイトで売りさばき、17Sの運営資金にあてるのだ。

 ぼくらが最終ボスを倒してラビリンスをクリアーした後、主宰はラビリンスの閉鎖を発表した。あまりにもマニアックな問題や強すぎる対戦相手のせいでほとんどの参加者はあっさり脱落してしまい、動画の視聴数は落ち込んでいたらしい。

 ぼくらが持ち帰った「ギリ」と「トリ」のぬいぐるみは高騰した。今後二度と手に入れることができないかもしれないということで、コレクター魂を刺激しているようだ。

「てっちゃん、焦って一度に出品すると値崩れしちゃうからね。品薄感を演出して、できるだけ高値で売るんだよ」

 


「ドンドン」

「あれ、慶次君達もう帰ってきたんだ。早いね」

「開いてるよ。勝手に入ってきていいよ」

「てつーー」

 ドアが乱暴に開かれ、ジャージの上下を着て大きなリュックを背負った優美姉ちゃんがドスドスと上がり込んできた。

「げ、お姉さん……練習の帰りですか?」

「てつ、約束、忘れたわけじゃないでしょうね?」

「え、約束って……」

「ほら、ラビリンスで、賞金が入ったら4割よこすって言ったじゃない。わたしたち、あんな寒いところでチアリーダーまでしてあげたんだから」

 ああ、すっかり忘れていた。ぼくらはクイズ対戦で姉ちゃん達に負けて失格になりそうだったところを、判定を覆してドローにしてもらっていた。確かにその時、賞金の4割を姉ちゃんに支払うって約束していた。

「そうだったね。仕方ない。4割払うよ。ちょっと待って」

「へえ、素直じゃん。偉いわね」

 姉ちゃんは言い出したら聞かないから、ここで逆らっても時間の無駄になるだけだ。ぼくはTシャツの胸ポケットから賞金の4割に相当する金額を探り出し、姉ちゃんに手渡した。

「はい。あの時は助かったよ。ありがと」

「な、なによこれ?千、二百円?ちょっと、ふざけんじゃないわよ」

 姉ちゃんの顔が真っ白になり、怒りのためにぷるぷると震えだした。

「ラビリンスをクリアーしたら億万長者になるって話だったじゃない?どういうこと?」

「うん。でも『ギリ』に手伝ってもらって調べたんだけど、ぼくらの前にラビリンスをクリアーした人は見当たらなかった」

「う」

「ぼくは『観察』のスキルを修得した後、アプリをすみずみまでチェックしたんだけど『アン』を『円』に換金する方法はどこにも書いていなかった」

「え、それって、でも『1アン』は『1円』と同等の価値だって……」

「そう。でもそれはあくまでもラビリンス内だけのことで、ラビリンスの外に出たら『アン』にはなんの価値も無くなるってことだったんだ」

「そ、そんな……」

「だから、それに気づいたぼくらはパパのところに行く前にスポーツショップに寄って、フットサルシューズとかユニフォームを買った。ラビリンスをクリアーしたとき、みんな2、300アンずつしか残ってなかったんだ」

「じゃあ、パパは、主宰は……」

「最初から賞金を払うつもりはなかったんだ」

「でも、それじゃああんまりだって、監督や慶次君がお父さんと掛け合って……」

「金額も大したことなかったしね。クリスマスプレゼント替わりだって、10倍の3千円払ってくれたんだ。だから姉ちゃんには4割、1,200円。クリスマスプレゼントだよ」

「くっ、クリスマス、プレゼント……」

「それより姉ちゃん、早く衣装を着替えないと。そろそろカーテンコールが始まるよ」

「え、もうそんな時間なの、やべっ」

 今回のカーテンコールはラビリンス側の出演者から順にステージに上がり、1人ずつ紹介されたあと、最後にぼくたち17Sのメンバーが5人揃って登壇する。全員集合したら一列横隊になって、お腹を叩きながらあのダンスを踊ることになっている。パパが子供のころに観ていた、あの伝説のコメディー番組のオマージュだ。


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