おまけ バッドエンド
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
「おまけ」はほんの悪ふざけです。忘れてください。
「ま、待て、てつ、早まるな。そこはファールだろう?」
「そんなルール、ないよ。パパ、ママ、ごめんね」
「な、なんでここでママが出てくるんだよ?」
パパはいち早くぼくの殺気に反応して、両手を使って「ピー玉」を防御しようと試みる。だが、パパにしみ込んだゴレイロの本能がそれを許さない。ここで「ピー玉」を防御するために両腕を体の正面にもってくると、体の両脇ががら空きになり、失点に直結する。
「砕け散れ、ピー玉・クラッシュ!」
「う、ぎっ」
激しい衝突音が鳴り響いた。パパは両手で「いなり」をおさえたまま真後ろに倒れ込んだ。
「ど、どこだ?ボールは?」
ぼくは、パパの「ピー玉」を潰すとみせかけて、ボールをコートに思いきり叩きつけていた。ワンバウンドしたボールはパパの頭を超え、ペナルティーエリアの中央付近に着地している。背後で続けざまに、重たいものが地面に落ちた時のような音がした。
「てっちゃんの弾丸シュートが『ピー玉』に、ううっ、想像しただけで吐き気が……」
慶次君が自陣のゴール前で股間を抑えたままうずくまっている。
「哲也君、そのシュートは二度と……」
「う、撃たないでください」
南監督と松山さんまで、股間に両手を挟み込んだまま転げ回っている。くっ、誰か、ボールを……パパが立ち上がる、前に……
そ、そうだ「ピー玉」のついていない、亜紀ちゃんなら、動けるはず。
「亜紀ちゃん、頼む。あ、亜紀ちゃん、あれ?」
亜紀ちゃんは、ぼくの左前方でセカンドポストに入っていたが、なぜか股間を抑えてしゃがみ込んでいる。
「あ、亜紀ちゃん、どうして……」
「ごめんね、てっちゃん、だますつもりは、なかったんだよ」
「て、てつ、忘れたわけじゃないだろうな?おれたちの、劇団の名前は……」
「え、そ、そんなことが……」
やばい、パパは脂肪燃焼モードのままだから、防御力や回復力も20%増しで……
「言ってみろ、てつ。おれたちは……」
「げ、劇団『たくわんボーイズ』ま、まさか……」
「そうだ。劇団員であるおれやお前には当然『たくわん』も『いなり』も『ピー玉』もついている。そして、それは……」
「くっ、パパ、頼むよ。それ以上は、言わないでくれ」
パパはゆっくりと立ち上がり、ペナルティーエリア内で静止していたボールを拾い上げた。ダメだ、あまりのショックで、足に力が入らない。押し寄せる幻痛に耐えかねて、亜紀ちゃんの小さな体は小刻みに震えている。
「残念だったな、てつ」
フットサルのルールでは、ゴレイロがペナルティーエリア内でボールを確保した時、パントキックを蹴ることもできる。そして、パントキックが相手ゴールに直接入った時にはゴールが認められる。
パパが慎重に蹴り上げたボールは、ペナルティーエリア内でうずくまる慶次君の頭上を越え、ゆっくりとゴールネットに吸い込まれた。




