日常②
帰ると、玄関に大きな革靴が置いてあった。お父さんだ。
「ただいまー!」
私は元気にそう言ってリビングに入ると、案の定お父さんがいて、「おかえり」と微笑む。
「お父さんもおかえりなさい」
「ただいま。ボストンバッグにお土産が入っているよ」
「わーい。ありがとう、嬉しい」
「しの、手洗いうがいしてきなさい」
「はーい」
なんでもない会話が幸せだと、このところ感じている。
多分、京と付き合うようになってから。今はまだ京との関係を両親に言えずにいるけど、
そのうちお話しできればいいなと思いながら家族団欒の時間を過ごした。
誰も喜翔の話はしなかった。
「東雲。聞いてるのか?」
ハッとして前を向く。京が怪訝そうにこちらを見ていた。
「ごめんごめん。なんだっけ」
「大丈夫?ここの問題が分からないんだろう?説明するから、聞いて」
「うん。その前に、えっと、なんかさ」
話し始めようとした私の目を、京はまっすぐに見つめた。
京はかっちりとした服装で、髪もちゃんと整えられていて、
前から思っていたけどこんな安いファミレスには似合わない。
「あのね、こんな安いファミレスで会うのが申し訳ないというか。
京ならもっと高いレストランの方が合ってるんじゃない?
前みたいに京が友達とここに来てるのはなんとも思わないんだけど、
デートで来るのはなんか申し訳ないというか。
いや、別に高いレストランに連れて行ってって言ってるわけじゃないのよ?
私はこっちの方が気を遣わなくて済むし。ただ、京はここで良いのかなって」
「ああ、正直なところ、」
京はふふっと笑った。
「僕は東雲がいれば場所はどこだって良い」
私は照れくさくなって、「そう、それなら良いの」と言った。
京は「そんなこと気にしなくて良いんだよ」
と優しく言って私の頭を撫で、「じゃあ、この問題の説明をするよ」
とシャーペンを手に取った。




