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日常①


如月先生とニアのおかげで私は高校生になれた。


一年遅れの高校一年生で、ニアは先輩になった。


初めて制服に手を通した時、私のセーラー服姿を見てお母さんは感激していた。


でも私はついこの前まで小学生だったのに、いきなり高校生になったことに戸惑いを隠せなかった。


中学校に行っていないけど、友達はできるだろうか。普通の十五歳としてみんなと打ち解けるだろうか。


けど勉強面は心配なかった。


たくさん勉強したから。


学校で習うことだけじゃなくて、ファッションや美容、流行のものも雑誌を何冊も買って勉強した。



始業式の日、校長先生の長いお話を聞きながら私は緊張していた。


人混みの中でニアを探したけど見つけられなかった。


教室に入ると、担任の先生がやってきた。髪は短く、背の低い綺麗な女の先生だった。


「担任の山瀬弥生です。一年間、よろしくお願いします」


山瀬先生は一礼して、それから生徒の各机の上に置いてある教科書の数や内容に不備がないかの確認を促した。


私は確認する際に、一冊の教科書を床に落としてしまった。


それを拾ってくれたのは隣の席の女の子だった。


「あ、ごめんなさい。ありがと」


私はそう言って教科書を受け取る。


「あたし、深田南。よろしくね」


「よろしく。私は堅田東雲」


「東雲ちゃんって呼んでいい?あたしのことは南でいいよ」


「あ、じゃあ私のことも東雲って呼んでよ。南」


「わかった。そうする。よろしくね。


あたしお父さんが転勤族で、中学はこの辺じゃないから友達ができるか不安で。


隣の席が東雲で良かった。東雲とは仲良くなれそう」


「私も正直友達ができるか不安だったの。そう言ってくれて良かった。


お互い友達作り頑張ろうね」


私と南はお互いの拳を小さくコツンとぶつけた。


移動教室も帰りも体育の二人組も南と一緒だったし、


帰りにファミレスで一緒に宿題をやったり南の家に遊びに行ったりした。


小学校の頃ニアと同じことをしていたなあと少し懐かしくなった。


私はニアにメールをした。


『友達できたよ』


数分後、ニアから返信が来た。


『良かったじゃん。私も安心だわ』


『ありがと。本当に良かった。ニアに教えてもらった勉強が役に立ったよ。如月先生にも感謝だわ』


『またファミレスで語ろう。今週の土曜日空いてる?』


『空いてるよ。学校近くのファミレスで会おう』


『オッケ。大好きよ、しの』


『私も大好き。土曜日楽しみにしてる』



土曜日、いつもはしないお化粧までして、私の一番のお気に入りのスカートを履いた。


部屋にある姿見で何度も服装をチェックして、「いってきます」と家を出ようとした。その時。


「男か」


玄関の近くの喜翔の部屋のドアが開いた。私は急いで靴を履いて逃げるように家を出た。


「待てよ」


という喜翔の声と玄関が閉まる音が同時に聞こえた。私は走った。


心が一瞬で恐怖心に染まった。喜翔が追いかけてきている気がしたけどそんなことはなかった。


私はホッと胸を撫で下ろして、急ぎ足でファミレスへ向かった。


「しのー!」


ニアはもうファミレスの入り口に着いていた。手を振るニアに駆け寄った。


「ニア!お待たせ」


「待ってないよ、大丈夫。入ろっか」


「うん」


私たちはテーブルに着くと、ドリンクバーと軽食を頼んだ。


私は新しくできた友達のこと、制服にまだ慣れないこと、


勉強はなんとかついていけていることなどを話した。


ニアは受験勉強の話や進学の話をしてくれた。


進学先の候補に都内の有名な大学の名前がいくつか出てきて、ニアならいけると思った。


二人で談笑していると、「こんにちは。お嬢さんたち」と声をかけられた。


その声を聞いて、あっと嬉しくなる。顔を上げると、案の定そこには京がいた。


「如月先生!」


ニアも嬉しそうに声を上げた。


「先生もお友達と?」


「まあね。東雲は本当にニアちゃんと仲良しだなあ」


「まあね。小学生の頃から仲良しだから」


ニアはハッとして「先生、一問だけ教えてください」と参考書を開いた。


京も「どれどれ」とニアの側に行って解説を始めた。


大好きな二人が仲良くしている様を満足げに見つめていた。


「あー、なるほど。じゃあ答えはこうですね?」


「そうそう。正解」


一通り京の解説が終わると、ニアは「スッキリした」と笑顔になった。


「じゃあ、僕は友達のところに戻るよ」


京はにっこりと笑ってそう言って、私の耳のそばで「また連絡する」と囁いた。


その様を見て、ニアが目を見開く。京がいなくなるなり、


身を乗り出して、「しの、もしかして、先生と……?」とキラキラした目で訊いてきた。


「そうなの」


私は恥ずかしくなって口元を両手で隠した。


「おめでとう!初めての彼氏でしょう?」


「そうだよ。初彼。幸せだよ本当に」


「いいな。私も彼氏ほしいな」


「ニアならできるよ。好きな人いないの?」


「いないことはないんだけど……」


ニアは恥ずかしそうに口をもごもごさせた。


深く追求しようとしたタイミングで、注文していた軽食が運ばれてくる。話題はそこで好きな芸能人の話に切り替わった。



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