運命
如月先生とは塾のない日も会うようになった。
如月先生は私が外で喜翔と接触することを恐れていて、
ボディガードとしてそばにいさせて欲しいと言った。
それが始まりだった。私がベランダから飛び降りたのがかなり衝撃的だったようだった。
私は一緒にいて心地よさを感じていたので買い物に行く日は必ず如月先生に連絡した。
如月先生はいつも連絡してから二十分以内に私の家まで迎えに来て、
用事のある日は予めこの日はボディガードできませんと連絡が入るようになっていた。
如月先生は通院のお供もしてくれた。
何度かそうしていて、病室から出て待合室で本を読む如月先生を見ることに幸せを感じるようになっていた。
横顔が素敵だった。
私に気づいて小さく手を挙げるその仕草も好きだった。
私は、もうボディガードと守られる側の関係では満足できなくなっていた。
それに気付いてたのかどうかは知らないが、告白したのは如月先生の方だった。
「男性に恐怖心を抱いているのは分かります。
あなたのお兄さんがあなたに何をしたのか全ては分かりません。
でも私に守らせてください。全ての恐怖からあなたを守らせてください。
好きです。僕とお付き合いしてくれませんか」
そんな言葉に一本の立派な赤い薔薇が添えられていた。
私はとても嬉しくて、でも少し怖かった。
この人までも豹変して私を傷つけることになったらどうしよう。
兄のように私に暴言と暴力を力任せにぶつけてきたらどうしよう。
男の人に力で敵わないのはよく分かっている。
それでも賭けてみようと思った。
今までどんなところにでも付き添って、寄り添ってくれていた彼がいつまでも私の側を歩いてくれるだろうと。
「はい、喜んで」
私は笑顔でその薔薇を受け取った。
如月先生は幸せそうな顔をして、私を恐る恐る、ゆっくりと抱きしめた。
私はその広い背中に腕を回した。
「京、と呼んでください」
「京。もう敬語はやめませんか」
「やめよう、お互いに」
私たちはお互いに微笑みあった。とても幸せな一日だった。
京と付き合ってから、彼の呼び名だけでなく生きやすさも変わったと思う。
何かあった時にそばにいてくれる人がいる安心感で生きている幸せを感じた。
三年間眠っていたけど目を覚まして良かったと思える。
彼と出会う為に目覚めたのではないかとも思えた。私は運命を感じていた。




