第二話、願望成就!?
私は一寸先の未来をイメージとして捉える力を生まれた時から持っていた。簡単に言えば、予知能力を私は持っている。
私の予知は幅が狭い。せいぜい30分先 (これもムラがあるけど)の自分に降りかかる何か、自分と縁のある家族以外のそれしか知ることはできない。
人の運命は変えることが出来ないと、したり顔で述べる人が世の中にはいる。それが本当かどうかは分からない。だけど、私は実際変えれるか試した事が何度もある。
確かに無理みたい。例えば、さっきの真由美の時だって、真由美が水しぶきをかからずに済む事は絶対できない。あらかじめその事を彼女に話したとしても、絶対水にかかる運命にあるのだ。少し遅れて、全く違う場所で、全く違う方法で、水をかぶっていただろう。
だけど――、一つだけ運命を変える方法を私は知っている。それはつまり……
「真由美、どけ!」
「えーなになに」
登校途中、二人で歩いていると、地面に鈍く光るものを見つけた。それは100円玉だ。本来これは真由美が拾うものだ。だけど、私が『身代わり』になる事で彼女に代わって――
「ラッキー100円見っけ!」
「はや〜、私も見つけてたのに……」
「早い者勝ち〜」
得る事ができた。言わば、彼女に降りかかるはずだった小さな幸運を、私が予知で知ることにより、身代わりとなって運命を変えたのだ。
真由美は負けず嫌いな所があるから、とっても悔しそうな顔をしていた。
ふふふ、ギブアンドテイクなのだよ。私は不幸の身代わりを受け持った代わりに、小さな幸運をあなたから、せしめただけなんだ。
教室の中は騒がしい。あんたたち、人生長いんだから、授業の合間の短い時間くらい、大人しくしなさいよ――――とか思っている間にも、騒がしいのが来たよ……
「沙耶、なにつまんなさそうに、椅子座ってんだよ」
「別に〜?」
「はぁ、君は相変わらず、荒んでますね〜」
この男子は中学校時代から知ってる笠間弘樹。何故か私と同じ高校にやってきてごちゃごちゃと話しかけてくる。実は彼に告白をされた事がある。私はきっぱり断った。だけど、しつこいのだ。頑張るんだ。諦めないんです。この高校にも私を追って入学したと断言されました。
ここまで来ると、ストーカー? そうかもしれない、だけど、それなりに彼の良いとこも分かってきていて、友達として接してはいます。飽くまで友達までだけど。
――さてと、授業が始る。先生様がお出でになられたよ。
「だからよぉ、俺言ってやったんだよ、一昨日きやがれってな……〜」
英語の先生がなぜか、自分の過去話を熱くく語り始めた。授業には関係無いんだけど、お笑いみたいな面白いネタフリを永延と生徒に聞かせていた。
あんた、脱線しすぎだよっと思うんだけど、これが楽しい。
周りのみんなも笑ってる〜、お日様も笑ってる〜じゃないんだけど、大ウケ中。
あの人も……笑ってる…… 私の恋心をがっちり掴むあの人もね……
私は笑いながらも、あの人の横顔を、ちらちら視界にいれていた。
もう……心は決めている。実行に移すのみなのだよ……
――昼食時間。
「沙耶〜、今日、どうするの?」
「うう、ちょっと待って……まだ気合が入らない」
私はこの後に及んで、尻込みしていた。腰が重いのだ。尻が重いのだ。尻軽女が羨ましい。
だけど、私は本気なんだ。神谷慶介に惚れています。ぞっこんです。だから――
一度深呼吸して、上から見下ろす真由美をみて、気合をこめた頷きを披露した。
真由美は息を呑んだ。どうやら、同じくらい緊張してくれているらしい。
神谷君が、一人で教室出た、――行くしかない!
私はさっと立ち上がると、疾風となって彼の後を追った。
しかし――もう一人同じような人がいたのだ。同じタイミングを見計らってたらしい。
これは……イメージが……ヤバイ。
私は彼に後ろから声をかけるのを一瞬躊躇った。
だけど――、真由美と同じく、悪いけど、身代わりに……ごめん! これだけは譲れないの!
「神谷君〜、ちょっと話があるんだけど……」
階段を下りる前に彼を捕まえた。私が声をかけた後、踵を返す女子が一人いた。
須川祥子、同じクラスの女の子で、あまり目立たない娘なんだけど、知らなかった。
まさか……、同じ人を好きになっていたなんて、この直前まで私は知ることができず、咄嗟の判断で身代わりを決意し、彼女から奪ってしまった。
「屋上に行かない?」
神谷君が優しく私を見つめた。頬が熱くなるのを感じる。私は静かに彼の手の辺りを眺めて頷いた。
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「でも、本当に俺なんかでいいの?」
「はい……」
屋上のフェンス際に手を掛けながら、彼も少し緊張しているのだろうか、震えている気が。
いや、この振るえは私ですか!? あぁ、恥ずかしい、止まってよ。
もう爆発しそうです。このまま脳が点滅して、ロケットのように空に飛び立ってもおかしくないくらい。それくらいもう恥ずかしい。だけど……
「じゃ、付き合ってみますか」
「はい!」
なんか、成立してしまったんです。私の交渉は成功してしまった。もうこれは疑いようも無く、カップル誕生の瞬間でした。心臓が早鐘を打っているけど、足も力が入らないくらい震えているけど、願望成就したんです。もう死んでもいいかも。




