女性だけの会社13
男性にとって不快な内容が含まれている可能性があります。男性の方がこの小説を閲覧されて、気分を害されても、当方は一切責任を負いかねます。
本作品は純粋な空想科学小説です。フィクションであり、実在する人物団体名とは一切関係ありません。また本作品に描かれている科学技術のほとんどがフィクションであり、現実に可能になっているものではありません。将来可能になるかどうかは現在の時点では言及できるものではありませんが、いくつかは紹介、実用化してほしいと作者は切に願っております。
奈津子は意識を失った父親の頬の内側にそっと綿棒を入れ細胞を採取した。
翌日、奈津子は行動した。超小型のドローンに、同じく超小型のカメラをつけて、実家のそばに飛ばした。音はほとんどないし、母は加齢による難聴が進行しているので、小さな音には気が付かないはずだ。
蒸し暑くはないが、そこそこ熱いので、一階の窓は開け放たれている。父親は昨日から病院に入院している。その付き添いに母親が泊まり込んでいると踏んだが、そうではないようだ。まあ、その方が好都合ではあるが。奈津子は一階のリビングの窓から家の中にドローンを侵入させる。かつて母はたいていの時間をキッチンで過ごしていた。今もその習慣は変わらないだろうと思い、そこを回避する。
兄の部屋のドアには、下に隙間がある。三センチほどの隙間だが、尚子が開発したドローンは2.5センチほど、低速ならその隙間をくぐらせることができる。ドローンはプロペラがむき出しではなく、ガードされているので、少々の衝突でも、障害物があっても墜落することはない。
奈津子にとって、十数年前まで住んでいた家だ。間取りは変わっていないので、簡単にルートを割り出せる。ドローンはドアをくぐったが、そこで紙の中に突っ込んだ。千円札だ。かなり大量なものだ。奈津子はドローンの出力を上げて、風でそれらを吹き飛ばした。部屋の中は暗い。奈津子はドローンをホバリングして、高さ2メートルくらいを保ち、部屋の中央に浮かせた。そして、ドローンの下部に仕込んでいた、ライトをつける。搭載したカメラの画面が電波で送られる。ごみごみした部屋。八畳間に物が散乱し、高く積まれている。部屋の中央に置かれたベッドの周りに堆積しているものはごみと雑誌、排せつ物の干物、腐った服、そして変色した毛布の中の人骨。
詳しく調べなければわからないだろうが、相当長い時間がたっていると思われた。毛布の変色は、死体が白骨化する際に血肉が溶けてそれがしみ込んだものだろう。ドローンにはにおいに関するセンサーはつけていないが、すでににおいが消えてしまったと思われるほど、乾いた骨と、乾いた毛布が映る。
もう長い間、父は世間体を気にして、兄を部屋から出そうという手段を放棄し、母はただ漫然と父に従ってきた。その結果がこの白骨だ。
奈津子はドローンを回収した。そして何とか心を落ち着けようと、兄との思い出を探ろうとした。でも思い出すのは悪いものばかり。一度として、仲睦まじい兄妹の記憶がない。思い出の中で最も強烈なものがレイプされかけたこと。それ以外にも性的な嫌がらせは後を絶たず、向けられた顔も、あざけりだったり侮蔑だったり、いいものは一つとして思い出せない。不意に涙がこぼれた。それでも兄なのだ。兄だったのだ。白骨のまま、ずっとあの部屋に閉じ込めておくには忍びない。だからと言って、正攻法で、父や母に真にが死んでいる、あのドアを開けてほしいといっても、相手にしてもらえないだろう。
「どうすれば」
記憶を探って、このあたりでよく放火事件があることを思い出した。築数十年、かなり乾燥している季節だ。木造の古い建築物なら燃えやすい。しかもこの辺りには防犯カメラもない。
公園の自動販売機でペットボトルを買う。もちろん指紋などつけない。それを家の向かいの空き家の塀の上に置く。朝になり九時を回るころ、そのペットボトルが日光を集め、その焦点を奈津子の実家のわきの電信柱のあたりに結ぶ。明日は古紙の収集日だ。律儀な母は必ず新聞をまとめて出す。それが燃え出すと、そのまま、そのあたりの枯れ草に引火し、ぼろぼろの朽ちた塀が燃え上がるのは容易だ。そしてそれは短く、母屋に引火する確率は非常に高い。
翌日の昼、奈津子のもとに警察が現れた。
「今朝の九時前後、どちらにおられましたか」
「会社におりました。従業員に聞かれても構いませんし、業者の方と応接室で応対したのが、九時少し前でした。その方々の電話番号をお教えしましょうか。それで何があったんですか」
警察はそれに答えず、メモして帰っていった。
数日して、兄の死が警察から伝えられた。死後五年以上経過し、死因はわからないが、事件性はないということ。誰かに殺害された形跡がないことが、現場検証から分かったと伝えられた。火事で一階と二階の一部が燃え、その現場検証の時に、白骨死体を発見したということだと説明された。その後、実家から兄の葬儀の連絡はなく、赤城奈津子は、実家と決別した。
父親から採取した細胞から取り出した遺伝子は、奈津子と血縁関係がないとはっきり示していた。実家と決別することに何の躊躇もなかったが、それでも、今まで育ててもらったことには感謝した。母親は、実の子供ではないとわかっていながら、それでも最低限の衣食住を整えてくれたのだ。感謝以外の何物でもない。兄はこれを知っていたのだろうか。知っていたとすれば、あの態度は当然だっただろう。かわいそうではある。でもそれだからと言って、レイプしようとした行為は許せるものではない。
それにしても奈津子の本当の親って誰なんだろう。どこにいるんだろう。
「私は、だれ。何者なの」
新たに浮かんだ疑問は解けそうにない。
稚拙な文章ですが閲覧していただきありがとうございます。なるたけ時間をおかずに続きを掲載したいと思います。次の掲載をぜひ閲覧のほど、お願い申し上げます。




