表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命の令嬢は忘れられた予知夢を映す―ヘルバフォリア王国物語  作者: 天麻いち
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/32

17. 告白と拒絶


 はっと振り返り目を見開く。

 そこにはナイゲル殿下が立っていた。

 固まる私たちに対して、なぜか殿下も驚いたように目を見開いて固まっている。


 時が止まる。


 一瞬の後、場違いな軽い声が沈黙を破った。


「ちーっす、先輩!」


 ひょっこりと殿下の後ろから出てきたウィンクル侯爵令息は、固まっている私たちと殿下を見比べて、つんつんと殿下をつついた。

 殿下がはっとして動き出す。


「いや、すまない。盗み聞きするつもりはなかったんだが」


 そう言いつつ教室に入ってきた殿下は、緊張している私たちに鋭い視線を投げた。


「君たちの話していたこと、詳しく聞かせてくれるか」


 その有無を言わせぬ口調に思わずびくっと肩を震わす。

 すると、サリーがさりげなく私の前に出て口を開いた。


「……どこからお聞きに?」

「クライス殿が話していたあたりからだ」


 二人が私に目配せをする。私に任せるということか。

 私は顔を下げる。

 いつかはこういう日が来るのではないかと思っていた。言ったところ思い出してくれるとは限らない。むしろ狂言だと思われるかもしれない。

 それでも、言うべきだ。この夢は殿下のものだから。


 ふうっと深呼吸をして進み出た。

 心配そうな顔のサリーに少し微笑んで殿下の前に立つ。


「お話します。ただし……」


 殿下が私の言葉に怪訝そうな顔をする。


「これから話すことは殿下の胸のみにとどめておくことを誓っていただけますか……殿下の御名に」


 その言葉に全員が驚いた顔をする。

 名前に誓う行為はこの国ではもっとも強力な縛りだ。それを王族である殿下に言う行為。無礼ではすまないと分かっていた。


「リア……」


 サリーが私の手を握る。私は大丈夫だと目で合図し、強く握り返した。

 この誓いは必ず必要だ。私と、私を信じてくれる皆を守るために。

 殿下は私を真っ直ぐ見ている。私も殿下を真っ直ぐ見る。


 しばらくして、殿下が口を開いた。


「わかった。ナイゲル・ヘルバフォリアの名に誓って、他言しないと約束しよう」

 私は安堵に息をついた。

「僕も!」


 横から黙ってやり取りを見ていたウィンクル侯爵令息が声を上げる。

 その軽い誓いで緊張が解け、私は二人を振り返って頷くと、今までの全てを話した。



「つまり、私が覚えていないが予知夢を見ていて、アルスト嬢はそれを見る力があると?」

「は、はい」

 

 まとめられるとより荒唐無稽に聞こえる。

 私の返事に殿下はしばらく考え込んでいたが、静かに口を開いた。


「にわかには信じられない」


 痛いほどの沈黙が落ちる。

 そうか。思い出してはもらえなかったか。

 私たちが何も言えないでいると、殿下はにわかに立ち上がって言った。


「すまないが、予定があるので失礼する」


 その言葉を残して私たちに背を向けると、慌てるウィンクル侯爵令息を連れて教室を出ていってしまった。



***



「すごい話だったね」


 教室を出ると、ヴィンが話しかけてきた。


「信じられないような話だけど、でも彼らの行動の筋は通ってるよね」


 ヴィンは、私の反応をうかがうように言葉を切りながら話し続けている。


「ウィンクル領で見た人影や落ちていた火薬も、彼らの言う氾濫の原因っぽいし」


 ヴィンはそこまで言うと、私を振り返って、遠慮がちに言った。


「……何か、思い当たることがあるんでしょ?」


 その言葉に私は目をつぶる。


「いや、何でもない」

 

 絞り出した言葉は、ひどくかすれていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ