9. 作戦会議1
次の日。私たちは空き教室で頭を突き合わせていた。
「エド、クラスの人たちは何て?」
サリーが問いかけると、エドガー様……いや、エドガーは声を潜めて答える。
「そこにいた人すべてはわからないが、少なくとも負傷者の中には貴族はいないようだ。まあ、夕方に貴族が街のほうに出かけることはあまりないし、爆発の範囲は狭かったから妥当だな」
その言葉に私たちは少し落胆する。そう簡単にはいかないか。
「爆発の原因は、地下での違法火薬製造によるものだそうだ。詳しくはまだ調査中らしい」
火薬……というと、最近北の帝国で開発された兵器か。王国でもごく一部の研究施設でしか扱われていないという。過去にも何件か違法火薬による事故があった。
それにしても王都で違法火薬製造が行われていたとは。よほど肝が据わっているのか。
「そして、氾濫場所のほうだが、地形や学園からの距離などを勘案して、三か所程度に絞れた」
エドガーは地図を広げると、王都近くの三か所を指し示した。
「どこも王都と近く、領都付近に河川がある領地だが、そこからが絞れない」
皆でうーんと頭を悩ませる。
地図を睨みつつ考えていると、急にエドガーが立ち上がった。
「どこ行くの?」
「いや、このままでは埒が明かないから、とりあえずこの三か所のことを誰かに聞いてみようと思ってな」
それを聞いたサリーははあっとため息をつくとエドガーに言った。
「そういうことは言ってよね。私たちも行くわ」
振り返ったサリーに私も頷いて、私たちは教室を出た。
エドガーについて移動していると。
「もうすぐ、課外授業ありましたよね」
「あら、特産物の課題ですわね」
「楽しみですわ」
すれ違った生徒の言葉に私たちは顔を見合わせる。
「そういえば……一年のときにあったよね。数人で特産物の調査をして発表する課題」
「今の今まで忘れてたけど、あったわ」
私たちの言葉を受けて、エドガーはすれちがった生徒を呼び止めた。
「そこの令嬢方、一年生だろう。少しいいか。この中に一年の令息はいるか」
急なエドガーの問いかけにその生徒たちは戸惑いつつも、一人の生徒の名前を出した。
「確か、ヴィン・ウィンクル侯爵令息がいらっしゃいますわよ」
「そうですわね」
「ええ、いらしたわ」
その答えに私たちは顔を見合わせる。二人ともあまり知らないようだ。
「ウィンクル令息か。どこで会えるだろうか」
エドガーの問いかけに、生徒たちはすぐに口を開く。
「確か、A組でしたわよね」
「ええ、A組ですわ」
「同じクラスですの」
私たちが礼を言うと、その生徒たちはまた話しながら去っていった。
小鳥みたいで可愛いな。
まあそれはともかく、相談だ。
「ヴィン・ウィンクル侯爵令息か。ウィンクルでこの年というと、ウィンクル騎士団長の三男だな」
「じゃあ、その子が予知夢の持ち主?」
二人はこちらを見たが、私はわからないと首を振った。
サリーは少し考えて、いたずらっぽい目で私に声をかけてきた。
「じゃあじゃあ、見に行ってみましょうよ!」
「えっ」
「いいんじゃないか。見た目の特徴からも、わかることがあるかもしれない」
エドガーが賛同すると、サリーはぐいっと私の腕を引いて早足で歩き始めた。
「ちょっ、サリー、ちょっと待ってよー!」
抗議もむなしく、私は連行されていったのだった。




