表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不時着した零戦を改造して歴史を変える?〜不死の体を手にした俺は第二次世界大戦を無双する〜  作者: よみ はじめ
変わりゆく歴史編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

99/110

変わった歴史

変わった歴史


 史実では、昭和十七年八月七日、アメリカ軍がガダルカナル島へ上陸した。


 島では日本軍が飛行場を建設していたが、完成を目前にして奪われ、やがてその飛行場はヘンダーソン飛行場と呼ばれるようになる。


 そこから始まった戦いは、半年にわたって続いた。


 日本軍は幾度も兵力を送り込み、多くの艦艇と航空機、そして熟練した搭乗員を失った。補給の届かない島では、戦闘だけでなく飢えによって倒れる兵も相次いだ。


 だが、この世界では、その歴史は起こらなかった。


 ガダルカナルへ迫ったアメリカ軍の進攻部隊は、一機の青い零戦によって戦力を奪われ帰って行った。


 日本軍は飛行場を守り切り、建設を終え、航空隊を進出させた。


 ミッドウェーでも、史実のように四隻の空母を一度に失ってはいない。赤城を失い、蒼龍は大破したものの、加賀、飛龍、翔鶴、瑞鶴は健在だった。


 太平洋における戦力の釣り合いは、すでに史実とは大きく異なっていた。


 アメリカ軍は攻める力を失いつつあった。


 そして日本軍は、次にどこへ進むべきかを考え始めていた。


     ◇


 ラバウルの第八艦隊司令部。


 壁一面に広げられた南太平洋の地図を前に、数人の参謀が立っていた。


 ガダルカナル島には、新たに赤い印が付けられている。


 飛行場完成。


 航空隊進出。


 その横には、現地から届いた報告書が重ねられていた。


「戦闘機隊の進出は予定どおり完了しました。滑走路の状態も良好です」


 報告を聞いた参謀の一人が、地図に目を戻した。


「敵艦隊の動きは」


「現在のところ、ソロモン南東海域に大規模な艦隊は確認されていません。偵察機が数隻の小型艦を発見しましたが、いずれも南へ退避しています」


「進攻部隊を失った直後だ。すぐに同じ規模の兵力を出すことはできんだろう」


 別の参謀がそう言うと、部屋の空気が少し緩んだ。


 ガダルカナルを取られずに済んだ。


 それだけではない。


 敵は上陸に使うはずだった輸送船や護衛艦艇、搭載していた兵員まで一度に失っている。被害の全容は分からなかったが、ただの敗退ではないことだけは明らかだった。


「ならば、今のうちにガダルカナルの防備を固めるべきです」


 若い参謀が口を開いた。


「飛行場を拡張し、燃料と弾薬を備蓄する。敵が再び来たとき、航空隊だけで迎え撃てる態勢を作ります」


「それだけでは足りん」


 地図の前に立っていた男が、低い声で遮った。


 その指が、ガダルカナルから南へ動いた。


「敵が攻めてこないなら、こちらから近づけばいい」


 指先が最初に止まったのは、ニューヘブリディーズ諸島だった。


 ガダルカナルとヌメアの間には、大小さまざまな島が連なっている。


 北にはエスピリトゥサント島。


 さらに南にはエファテ島。


 その先には、アメリカ軍が南太平洋の拠点としているヌメアがあった。


「これらの島を押さえれば、ガダルカナルから南へ航空基地をつなげられる」


「しかし、兵站が伸びます」


「だから一足飛びにヌメアを狙うのではない。島を一つずつ確保し、そのたびに飛行場を造る」


 参謀たちは黙って地図を見つめた。


 ガダルカナルからヌメアまでは、直線でも千五百キロを超える。


 だが、その間にある島々を使えば、航空機の進出距離は大きく短縮できる。


 輸送船団の護衛にも使える。


 哨戒機を飛ばせば、敵艦隊の動きも早く察知できる。


 島を取るごとに、その次の島が射程へ入る。


「エスピリトゥサントには、敵の飛行場があるとの報告があります」


「ならば、なおさら放置はできん」


「攻略には空母の支援が必要です」


「連合艦隊に意見を具申する。まず航空偵察を強化しろ。港湾施設、飛行場、配備機数を調べる」


 別の参謀が、地図上のヌメアを見つめた。


「敵は、ここで立て直すつもりでしょうか」


「他に場所はない」


「では、南下を続ければ、いずれ正面からぶつかります」


「そうなるだろう」


 その声には、勝利を確信する響きはなかった。


 ガダルカナルでは、確かに日本軍が勝った。


 しかし、その勝利の大半は、正体の分からない青い零戦によってもたらされたものだった。


 いつ現れるのか。


 どこから来るのか。


 誰が操縦しているのか。


 日本軍は、そのいずれも正確には把握していない。


 若い参謀が、ためらいながら口を開いた。


「あの零戦は、次の作戦にも現れるでしょうか」


 誰もすぐには答えなかった。


 やがて、地図の前に立つ男が静かに言った。


「現れることを前提に作戦を立てるな」


 参謀たちの視線が集まった。


「あれは我々の指揮下にある機体ではない。助けられたことと、頼ってよいことは別だ」


 その言葉に、部屋の空気が引き締まった。


「我々は我々の戦力で南へ進む。そのうえで、もしあの零戦が再び現れたなら、その力を無駄にしない」


「はっ」


「まずはガダルカナルを完全な航空基地にする。同時に、エスピリトゥサント方面への偵察を始めろ。敵が守りを固める前に、次の一手を決める」


 命令を受けた参謀たちは、それぞれの持ち場へ散っていった。


 机の上に残された地図には、ガダルカナルから南へ、島々が弧を描くように並んでいた。


 その先にあるのは、ヌメア。


 これまで日本軍は、アメリカ軍の反撃を待ち受けていた。


 だが、歴史は変わった。


 今度は日本軍が、南へ向かって動き始めようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ