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不時着した零戦を改造して歴史を変える?〜不死の体を手にした俺は第二次世界大戦を無双する〜  作者: よみ はじめ
変わりゆく歴史編

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理解不能

理解不能


 アメリカ軍の港へ、艦船が次々と戻ってきた。


 先頭には駆逐艦。


 続いて巡洋艦。


 その後ろには輸送船。


 そして、三隻の空母。


 沈んだ艦はない。


 黒煙を上げている艦もない。


 艦体を大きく傾けた艦もなかった。


 だが。


 無事な艦も、一隻としてなかった。


 岸壁に集まった兵士たちは、戻ってくる艦隊を見つめていた。


 最初に入ってきた駆逐艦は、砲身を失っていた。


 砲撃で吹き飛ばされたのではない。


 砲身は途中から、鋭く断たれていた。


 切断された先端は甲板へ落ち、固定されたまま転がっている。


 その後ろから入ってきた巡洋艦も同じだった。


 巨大な砲身が、根元から落ちている。


 別の巡洋艦は、砲塔の基部を断たれていた。


 爆発した形跡はない。


 砲弾が命中した痕跡もない。


 ただ、巨大な鋼鉄の塊が途中から切れていた。


 兵士たちの声が、少しずつ消えていった。


 次に入ってきたのは輸送船だった。


 船体に大きな損傷はない。


 機関も動いている。


 舵も無事だった。


 だが、舷側に並んでいたクレーンとダビットが、根元から切断されている。


 上陸用舟艇は傾き、舷側へぶつかったまま動かない。


 ワイヤーは垂れ下がり、揚陸設備は使い物にならなくなっていた。


 船は動く。


 兵士もいる。


 舟艇も残っている。


 だが、それを海へ降ろすことができない。


 輸送船は、兵士を乗せたまま帰ってきた。


 最後に、空母が姿を現した。


 一隻。


 続いて二隻目。


 そして三隻目。


 岸壁にいた全員が、言葉を失った。


 三隻すべての飛行甲板に、大きな段差ができていた。


 甲板は途中から裂け、その一部が深く沈み込んでいる。


 隙間から、下の格納庫が見えていた。


 切断線を境に甲板の高さが大きくずれ、もはや一枚の平面ではない。


 艦載機が走れる状態ではなかった。


 発艦もできない。


 着艦もできない。


 空母は浮いている。


 機関も動く。


 帰ることもできる。


 だが、空母としての役目だけが失われていた。


「何が起きたんだ……」


 岸壁の兵士が呟いた。


 答える者はいなかった。


     ◇


 接岸すると、すぐに調査班が艦へ乗り込んだ。


 技術士官たちは、駆逐艦の砲身を調べた。


 巡洋艦の砲塔を調べた。


 輸送船のクレーンとダビットを調べた。


 そして、空母の飛行甲板へ上がった。


 どの切断面も、よく似ていた。


 鋼鉄は引き裂かれていない。


 爆風でめくれ上がってもいない。


 溶けた金属が垂れた跡も、ほとんどなかった。


 そこにあった鋼鉄だけが、途中から切れている。


 甲板も。


 桁も。


 砲身も。


 砲塔も。


 クレーンも。


 ダビットも。


 材質も厚さも違う。


 それなのに、すべて同じように断たれていた。


 一人の技術士官が、空母の切断面を見つめたまま動かなかった。


「どうした」


 隣にいた士官が尋ねる。


「……以前にも見た」


「何をだ」


「この切れ方を」


 技術士官は、ゆっくりと顔を上げた。


「青い零戦と交戦した戦闘機だ」


 周囲が静まり返った。


 以前、回収された戦闘機。


 その機体は、胴体の途中から切断されていた。


 爆発した形跡はなかった。


 空中で何かに衝突した痕跡もない。


 機体は、まるで見えない刃に触れたように、二つに分かれていた。


 当時、原因は分からなかった。


 機体の欠陥。


 内部爆発。


 高速飛行中の破損。


 いくつもの可能性が挙げられた。


 だが、どれも切断面を説明できなかった。


 そして今。


 同じような傷が、艦隊全体に残されている。


「同じものだというのか」


「分からない」


 技術士官は答えた。


「だが、違うとも言えない」


     ◇


 司令部の会議室には、損傷した艦の写真が並べられていた。


 切断された駆逐艦の砲身。


 根元から落ちた巡洋艦の巨大な砲身。


 断たれた砲塔基部。


 使えなくなった輸送船の揚陸設備。


 そして、大きな段差がついた三隻の空母の飛行甲板。


 その隣に、以前回収された戦闘機の写真が置かれた。


 胴体から切断された機体。


 司令官は、黙ったまま写真を見比べていた。


「報告しろ」


 技術士官が立ち上がる。


「爆撃による損傷ではありません」


「砲撃は」


「違います」


「魚雷は」


「命中していません」


「では何だ」


 技術士官は答えられなかった。


 司令官が写真を指す。


「この飛行甲板は、なぜ裂けた」


「分かりません」


「巡洋艦の砲身は」


「分かりません」


「輸送船のクレーンは」


「分かりません」


「駆逐艦の砲身もか」


「はい」


 会議室に、重い沈黙が落ちた。


 別の士官が口を開く。


「乗員の証言では、青い零戦から薄紫色の光が伸びた直後、損傷が起きたと」


「光?」


「一瞬だけだったそうです」


「砲弾は見たのか」


「誰も見ていません」


「爆発音は」


「ありません」


「では、光だけで鋼鉄が切れたというのか」


 誰も答えなかった。


 そんな兵器は存在しない。


 少なくとも、彼らの知る兵器の中にはない。


 一人の士官が、戦闘機の写真を手に取った。


「この機体も、青い零戦と交戦しています」


 司令官は写真を見た。


「偶然ではないのか」


「分かりません」


「艦隊すべてに、同じ偶然が起きたと?」


 返事はなかった。


 空母三隻。


 巡洋艦。


 駆逐艦。


 輸送船。


 それぞれ違う場所を攻撃されている。


 だが、壊されたものには共通点があった。


 艦載機を飛ばすための甲板。


 海岸を砲撃するための砲。


 兵士を上陸させるための設備。


 船体は残っている。


 機関も残っている。


 舵も残っている。


 帰還するための力だけは、奪われていない。


「なぜ沈めなかった」


 司令官が呟いた。


 誰も顔を上げなかった。


 沈められなかったのか。


 それとも。


 沈めなかったのか。


 その違いは大きかった。


 もし偶然なら、次も助かる可能性がある。


 だが、意図して残されたのなら。


 次は、残されないかもしれない。


「青い零戦は、何を搭載している」


 司令官が尋ねた。


 答えは返ってこなかった。


 机の上には、切断された鋼鉄の写真だけが並んでいる。


 以前は戦闘機だった。


 今回は艦隊だった。


 何が飛んできたのか。


 どのように切ったのか。


 なぜ爆発しないのか。


 なぜ必要な部分だけを失ったのか。


 誰にも説明できなかった。


 会議は、結論を出せないまま終わった。


 アメリカ軍に分かったことは、一つだけだった。


 あの青い零戦は、艦隊を沈めずに。


 艦隊から、戦う力だけを切り取った。


 だが。


 それが何によって行われたのかは、最後まで分からなかった。

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