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不時着した零戦を改造して歴史を変える?俺は第二次世界大戦を無双する!【祝100話】  作者: よみ はじめ
変わりゆく歴史編

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二隻の空母

第七十七話 二隻の空母


 太平洋は静かだった。


 青く広がる海の上を、一隻の巨大な航空母艦がゆっくりと進んでいく。


 エンタープライズ。


 その周囲には巡洋艦と駆逐艦が展開し、少し離れた位置にはホーネットが続いていた。


 二隻の空母。


 それが、今のアメリカ海軍機動部隊だった。


 エンタープライズ艦内。


 作戦会議室。


 長机の上には太平洋の海図が広げられ、十数名の士官が無言で席についていた。


 誰も口を開かない。


 ミッドウェー海戦から数日。


 彼らは勝利を語るために集まったのではない。


 現実を受け入れるために集められたのだった。


 司令官が静かに口を開く。


「ヨークタウンは」


 報告士官は、手元の書類に視線を落とした。


「……浮いています。」


 会議室の空気が、わずかに動く。


 だが、その続きを聞く前に、誰も希望は抱かなかった。


「再び空母として戦えるかどうか……現時点では、誰にも分かりません。」


 沈黙。


 船体の軋む音だけが、小さく響いた。


「真珠湾まで曳航できたとしても、その後です。」


 報告士官は続ける。


「飛行甲板、格納庫、機関部、船体の歪み……すべてを調査しなければ判断できません。」


 誰も言葉を返さない。


 ヨークタウン。


 珊瑚海を生き延びた空母。


 その執念も、ミッドウェーで尽きようとしていた。


「……そうか。」


 司令官は短く答えた。


「残る空母は。」


「エンタープライズ、ホーネットの二隻です。」


 その言葉だけが、静かな会議室に重く落ちた。


「ミッドウェー島航空隊は。」


「残存機はごくわずかです。」


「補充は。」


「時間がかかります。」


 司令官は海図を見つめた。


 広すぎる太平洋。


 その海を支えるには、二隻という数字はあまりにも小さい。


 しかし、誰も本当の問題はそこではないと知っていた。


「敵空母の動きは。」


「現在確認中です。」


「Phantomは。」


 その一言で、会議室の空気が凍りついた。


 誰も顔を上げない。


 誰も軽々しく口を開かない。


「あの零戦は……。」


 若い士官が呟いた。


「本当に零戦なのでしょうか。」


「外見は零戦だ。」


 航空参謀が静かに答える。


「だが、それ以外は何一つ零戦ではない。」


 再び沈黙。


 帰還した搭乗員たちの証言は、何度読み返しても同じだった。


 追いつけない。


 当たらない。


 消えたと思えば、次の瞬間には背後にいる。


 そして、こちらの射程外から撃ってくる。


「我々は。」


 司令官がゆっくり立ち上がる。


「日本海軍に敗れたのではない。」


 全員の視線が集まる。


「我々は、一機の零戦によって作戦を崩された。」


 誰一人、否定しなかった。


 それが現実だった。


 通信参謀が、一通の封筒を机の上へ置く。


「ワシントンより極秘電文です。」


 司令官は封を切り、静かに目を通した。


 その表情は変わらない。


 だが、読み終えたあとも、しばらく紙から目を離さなかった。


「何でしょう。」


 参謀が尋ねる。


 司令官は封筒を閉じた。


「本土では、対Phantom計画が正式に始動した。」


 会議室がざわめく。


「新型機ですか。」


「詳細は記されていない。」


「では。」


 司令官は一度だけ息を吐いた。


「計画名だけだ。」


 全員が耳を傾ける。


「Phantom Hunter。」


 その名だけが、静かな会議室に響いた。


 まだ姿はない。


 機体もない。


 性能も分からない。


 だが、その名は確かに生まれた。


 太平洋は静かだった。


 しかし、その静けさの下では、


 新たな戦いが、すでに始まっていた。

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