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不時着した零戦を改造して歴史を変える?不死の体を得た俺は第二次世界大戦を無双する。  作者: よみ はじめ
守護神誕生編

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レールガン

第五十一話 レールガン


 未来基地の整備格納庫。


 静かな空間に、金属を磨く音だけが響いていた。


 幸雄は作業台の前で、小さなガラス瓶を光にかざしていた。


 透明に見える液体は、角度を変えると僅かに青く輝く。


 慎一は、その瓶を見つめた。


「それが例のオイルか」


 幸雄は頷く。


「ああ」


「ただの潤滑油には見えないな」


「当たり前だ」


 幸雄は静かに笑った。


「これは油じゃない」


「レールを生かすための液体だ」


 慎一は瓶を手に取り、ゆっくりと眺めた。


「レールを生かす?」


「ああ」


 幸雄はレールガンの銃身を取り外しながら話し始めた。


「レールガンってのはな。」


「弾を飛ばすだけなら、未来じゃ珍しくもない。」


「二〇五二年のアメリカだって、大型艦艇用や地上兵器用のレールガンは実戦配備されている。」


 慎一は少し驚いた。


「そうなのか。」


「だが問題は、その先だ。」


 幸雄は焼けたレールを慎重に机へ置いた。


「大型なら、巨大な発電設備も冷却装置も積める。」


「レールが摩耗すれば交換すればいい。」


「多少重くても構わない。」


「だが航空機は違う。」


 慎一は静かに頷いた。


「重量。」


「そう。」


「重量。」


「冷却。」


「反動。」


「電源。」


「そして一番厄介なのがレールの摩耗だ。」


 幸雄は黒く焼けたレールを指で軽く叩いた。


「普通なら、あれだけ撃てば終わる。」


「レールは焼ける。」


「削れる。」


「電流は暴れる。」


「命中精度も落ちる。」


「だから航空機搭載型は完成していない。」


 慎一は少し笑った。


「つまり。」


「俺の零戦だけがおかしいわけか。」


「そういう事だ。」


 幸雄も笑った。


「世界中探しても、零戦サイズでこの連射性能を出せるレールガンは存在しない。」


「少なくとも二〇五二年ではな。」


 慎一は再び瓶を見る。


「じゃあ、このオイルは。」


「全部の鍵だ。」


 幸雄は静かに答えた。


「撃つたびにレール表面へ極薄の保護膜を作る。」


「摩耗を抑え。」


「電流を安定させ。」


「高熱を逃がす。」


「だから連射できる。」


「なるほど。」


 慎一は感心したように息を吐いた。


「配合表はある。」


 幸雄はそう言った。


「なら誰でも作れるじゃないか。」


 幸雄は首を横に振る。


「作れる。」


「だが。」


「撃てるオイルにはならん。」


 慎一は首を傾げた。


「何が違う。」


「最後は人間だ。」


 幸雄は瓶を優しく持ち上げた。


「湿度。」


「温度。」


「金属粉の沈み方。」


「粘り。」


「匂い。」


「数字だけじゃ決まらない。」


「最後は俺が見る。」


 慎一は思わず笑った。


「未来兵器なのに職人技か。」


「だから飛べる。」


 幸雄は真顔で答えた。


「これだけは誰にも任せん。」


「秘密の配合だからか。」


「違う。」


 幸雄は瓶を見つめたまま、小さく言った。


「責任だ。」


「もし配合を間違えれば。」


「空で死ぬのは、お前だからな。」


 慎一は何も言わなかった。


 ただ静かに、その小さな瓶を見つめていた。


 未来基地には、しばらく沈黙だけが流れた。


 やがて幸雄は新しいレールを組み込み、最後に青い液体をゆっくりと流し込んだ。


 レールは淡く光り、静かに命を宿した。


「これで準備は終わりだ。」


 慎一はレールガンを見つめる。


 その武器は、ただの兵器ではない。


 未来基地全員の技術と想いが詰まった、一挺だった。


 幸雄は工具を片付けながら、小さく笑う。


「次はいよいよ本番だ。」


「ああ。」


 慎一は短く頷いた。


 運命の日まで。


 あと、三日だった。

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