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不時着した零戦を改造して歴史を変える?不死の体を得た俺は第二次世界大戦を無双する。  作者: よみ はじめ
守護神誕生編

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ソロモン

第三十七話 ソロモン


 未来基地の管制室に、南方海域の地図が開いていた。


 ソロモン。


 その文字を見た瞬間、京子の表情が変わった。


「美希、数は」


「米軍機、二十以上。日本軍の零戦隊が迎撃に上がっています」


 美希の声が、いつもより少し硬い。


 画面の中では、赤い光点が海の上を広がっていた。


 青い光点は十五。


 まだ接触はしていない。


 だが、赤い光点はただ真っ直ぐに向かっているのではなかった。


 二機一組で、間隔を空けながら進んでいる。


 幸雄が画面を睨んだ。


「嫌な組み方だな」


 京子は短く頷いた。


 詳しい説明はいらなかった。


 零戦が得意とする旋回戦に、相手が慣れ始めている。


 このままぶつかれば、味方は苦しくなる。


「慎一さんを」


「はい、すぐに呼んできます。」


美希は立ち上がった。


 少しして、慎一が管制室に入ってきた。


 彼は画面を見る。


 赤と青の光点。


 南の海。


 それだけで十分だった。


「味方か」


「はい。零戦隊です」


「出る」


 慎一はそれ以上聞かなかった。


 京子も止めなかった。


「零戦を離陸点へ」


 地下格納庫で、主脚を出した零戦が静かに転送位置へ送られる。


 機体の輪郭が淡く揺れた。


 次の瞬間、それは格納庫から消えた。


 丘の向こう。


 百メートルほど先の草地。


 最初に三上慎一が不時着し、その命を終えた場所。


 そこに、零戦は現れた。


 主脚を出し、草の上に立っている。


 風が吹き、草が機体の下で細かく揺れた。


 未来の技術によって改造された零戦が離陸点で待っていた。


 慎一は走った。


 京子たちも後を追う。


 基地からおよそ100メートルの位置に零戦がいた。いつものように。


 まるで最初から、そこで彼を待っていたかのように。


 慎一は主翼によじ登り、操縦席へ手を掛けた。


 金属の感触。


 油の匂い。


 風防の縁に指を掛け、身体を引き上げる。


 座席に収まると、世界が少しだけ狭くなった。


 計器。


 操縦桿。


 照準器。


 前方に広がる草の海。


 慎一は手早く確認を済ませた。


 燃料。


 弾薬。


 無線。


 異常なし。


 京子の声が無線に入る。


「ソロモン方面、まもなく接触します」


「分かった」


「距離があります。間に合わせてください」


「間に合わせる」


 短い返事だった。


 それでよかった。


 慎一は空間磁気コイルのスイッチを入れた。


 機体の下で、草がふわりと沈む。


 零戦の重さが、地面から切り離されていく。


 主脚を出したまま、機体はゆっくり浮いた。


 一メートル。


 二メートル。


 草地の上に、零戦が止まる。


 京子たちは少し離れた場所で見上げていた。


 空間磁気コイルが反重力を生み零戦の重い機体を持ち上げる。


 慎一は主脚格納レバーを動かした。


 左右の車輪が、機体の中へ吸い込まれていく。


 草の上で、車輪を畳む零戦。


 その姿は奇妙で、そして美しかった。


 慎一は栄改に火を入れた。


 プロペラが回る。


 低い音が草地を震わせた。


 やがて音は太くなり、古い零戦の形をした機体に、戦闘機の命が戻っていく。


 はるみが両手を胸の前で握った。


 美希は口を結んだまま見つめていた。


 幸雄は腕を組み、いつものように何か言いたげな顔をしていたが、何も言わなかった。


 京子だけが、真っ直ぐに操縦席を見ていた。


「行ってきます」


 慎一の声が無線に乗った。


「行ってらっしゃい」


 京子が答えた。


 零戦が動き出す。


 草の上を滑るように、低く前へ進む。


 空間磁気コイルに支えられた機体が、静かに速度を上げていく。


 やがて翼に風が入った。


 草を押していた見えない力が、少しずつ翼の浮力へ渡される。


 慎一はコイルの出力を絞った。


 その瞬間、翼が受けた風が零戦を持ち上げた。


 低く草地を抜け、丘を越える。


 京子たちの姿が下へ流れていく。


 慎一は南へ機首を向けた。


 海の向こう。


 ソロモンへ。


 栄改の音が一段太くなった。


 零戦は上昇する。


 空気が薄くなり、雲が近づく。


 慎一は高度を取りながら、機体の癖を確かめた。


問題は無い。


 操縦桿に指を添えるだけで、機体は意図を汲むように反応する。


 無線が鳴る。


「接触しました、もう時間がありません」


 京子の声だった。


 慎一は返事をしなかった。


 その代わり、右手をブースターのスイッチへ伸ばした。


 安全カバーを上げる。


 一拍置いて、ブースターのスイッチを入れた。


 その瞬間、背中を押されるような加速が来た。


 栄改の音に、別の唸りが重なる。


 零戦が空を裂いて進む。


 雲が後ろへ飛ぶ。


 海が広がる。


 南の空は、どこまでも明るかった。


 戦場が近い。


 速度を殺しすぎず、高度を落とす。


 雲の下へ出る。


 遠くに島影が見えた。


 その上空で、小さな黒い点がいくつも交差していた。


 ソロモン。


 戦闘は、もう始まっていた。


 零戦隊はまだ残っている。


 だが、形は崩れ始めていた。


 米軍機は二機一組で絡み、零戦を誘い、横から撃とうとしている。


 慎一は目を細めた。


 嫌な攻め方だ。


 だが、まだ間に合う。


 彼は操縦桿を握り直した。


 下方で、一機の零戦が敵を追っている。


 その横へ、別の敵機が入り込もうとしていた。


 慎一は機首を下げる。


 ソロモンの空へ、慎一の零戦が滑り込んでいった。

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