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不時着した零戦を改造して歴史を変える?不死の体を得た俺は第二次世界大戦を無双する。  作者: よみ はじめ
守護神誕生編

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理解出来ない武器

第19話 理解できない武器


米空母の作戦室には、重い沈黙が落ちていた。


誰も怒鳴っていない。


誰も机を叩いていない。


だが、その静けさこそが、今回の戦闘の異常さを物語っていた。


作戦室の前方には、大きな作戦図板が設置されていた。


レーダー担当が得た情報をもとに、航空参謀が敵味方の位置を次々と書き込んでいく。


青が米軍。


赤が日本軍。


そして、その中に一つだけ、識別不能の白い印があった。


そして、その中に一つだけ、識別不能の白い点があった。


所属不明。


機体番号不明。


部隊不明。


だが、戦闘記録上では便宜的にこう記録されていた。


Unknown Zero.


艦長はモニターを見たまま、しばらく何も言わなかった。


横に立つ参謀達も、誰一人口を開かない。


戦闘は終わった。


艦隊はまだ健在だ。


空母も損傷を受けていない。


作戦そのものが完全に破綻したわけでもない。


だが、誰も勝ったとは思っていなかった。


やがて艦長が低く言った。


「報告を」


サッチ少佐は手元の資料を見た。


数秒。


ほんの数秒だったが、その間が異様に長く感じられた。


「敵所属不明機一機により、護衛戦闘機隊の交差機動が崩されました」


サッチの声は静かだった。


「撃墜、または未帰還と確認された機は十機以上。詳細は現在照合中です」


若い士官が息を呑んだ。


「一機に、ですか」


サッチはその士官を見なかった。


「一機です」


艦長が目を細める。


「コルセア隊は」


「ハーパー大尉機は帰還しています。その他の機も一部損耗。ただし問題は、損害数だけではありません」


「ほう」


サッチはモニターを切り替えた。


映像には、米軍機の軌跡が表示される。


三機一組の交差。


外側からの押さえ。


零戦を誘導するための逃げ道。


サッチが用意した罠だった。


「我々は、敵が味方機を助けに入る傾向を利用しました」


サッチは淡々と説明した。


「日本側の零戦隊を押し込み、救援に来るであろう所属不明機を外側へ誘導する。そこでハーパー大尉のコルセア隊が捕捉する予定でした」


誰も口を挟まない。


「ですが、敵は罠に入る前に、罠そのものを破壊しました」


モニター上で白い点が動く。


味方機の後方へ回るでもない。


敵機を追い回すでもない。


白い点は、常に交差機動の支点へ入っていた。


一機を撃つ。


米軍機の三角形が崩れる。


また一機を撃つ。


次の射線が消える。


味方零戦が逃げる隙間が生まれる。


サッチは低く続けた。


「彼は、我々の機体を一機ずつ撃墜したのではありません」


艦長が聞く。


「では何をした」


「戦場を奪いました」


その言葉に、作戦室の空気がさらに沈んだ。


サッチは表情を変えない。


だが拳だけが、資料の上で固く握られている。


「我々が作った空の形を、敵一機に崩されました」


技術士官が前へ出た。


「それだけではありません」


モニターが切り替わる。


破壊された米軍機の残骸写真。


胴体中央部に開いた異常な貫通痕。


主翼根元を一直線に撃ち抜かれた機体。


エンジンブロックごと破断した残骸。


「被弾痕の解析結果です」


技術士官の声は硬かった。


「二十ミリ機関砲による破壊ではありません」


艦長が眉を寄せる。


「二十ミリではない?」


「はい。日本の零戦に搭載されている通常兵装では、説明できません」


別の写真が映る。


一機目の胴体を貫通した弾道。


その延長線上に、二機目の主翼損傷。


技術士官は棒で画面を示した。


「この二機は、ほぼ同時に撃墜されています」


「同時?」


「はい。一発の弾丸が、一機目を貫通し、そのまま二機目を撃ち抜いた可能性があります」


作戦室にざわめきが広がった。


艦長が低く言う。


「一発で二機を?」


「そう考えるしかありません」


若い士官が思わず言った。


「あり得ません」


技術士官は、その言葉を否定しなかった。


「我々の常識では、あり得ません」


サッチは黙っていた。


ハーパーも黙っていた。


空戦から戻ったばかりのハーパーは、飛行服のまま部屋の後方に立っている。


ヘルメットは手に持ったままだった。


普段の余裕はない。


だが、取り乱してもいない。


ただ、静かだった。


その静けさが、かえって周囲を緊張させている。


艦長は技術士官へ尋ねた。


「では、あの零戦は何を撃っている」


「分かりません」


「推測は」


「高初速の徹甲弾、あるいは未知の投射兵器としか言えません。発射炎も通常火器と一致しません。音も違います」


技術士官は苦い顔をした。


「報告では、機銃音ではなく、空気を叩くような衝撃音が確認されています」


サッチが小さく呟いた。


「レールのように……」


誰かが聞き返す。


「何です?」


「いや」


サッチは首を振った。


「まだ仮説にもならん」


技術士官が続ける。


「少なくとも確かなのは、あの武器は我々の既知の航空機関砲ではないということです」


艦長が言う。


「結論は」


技術士官は一瞬迷った。


それから、はっきりと言った。


「理解できない武器です」


その言葉に、誰も反論しなかった。


理解できない。


その一言が、作戦室全体に重く落ちた。


その時、後方から静かな声がした。


「違う」


全員が振り返る。


ハーパーだった。


彼はモニターの破壊痕ではなく、戦闘記録の白い点を見ていた。


「問題は武器じゃない」


艦長がハーパーを見る。


「何?」


「武器は確かに異常です」


ハーパーは言った。


「だが、本当に厄介なのはそこじゃない」


部屋が静まる。


「俺は撃った」


ハーパーの声は低い。


「確かに捉えた。あの距離で、あの角度なら、普通の零戦は逃げられない」


サッチは何も言わない。


ただ聞いている。


「あと半機身だった」


ハーパーは拳を握った。


「いや、半機身もない。ほんのわずかだ。あの一瞬、俺は風防を抜いたと思った」


沈黙。


「だが、奴はそこにいなかった」


若い士官が言った。


「回避したということでは?」


ハーパーは首を振った。


「回避はした。だが、あれは見てから逃げた動きじゃない」


「では?」


「俺が撃つ場所から、最初から半分だけ外れていた」


作戦室の空気が変わる。


ハーパーは続けた。


「操縦桿を倒した。機体を返した。最後に尾を流した」


彼は、自分の手で空中に軌跡を描く。


「ほんの少しだけだ。派手な機動じゃない。だが、その少しで弾が外れた」


サッチがようやく口を開いた。


「彼は、大きく逃げない」


「ええ」


ハーパーが頷く。


「最小限で外す。だから次の動きが早い」


サッチはモニターを見た。


戦闘記録が再生される。


Unknown Zeroは敵を追い回さない。


必要な場所へ入り、必要な機だけを撃つ。


撃ったらすぐ次へ行く。


「彼は撃墜数を稼いでいるのではない」


サッチは言った。


「味方を生かしている」


ハーパーが短く答える。


「同感です」


「そして、我々の交差機動の支点だけを壊した」


「見えていたんでしょう」


「何がだ」


艦長が聞く。


サッチは少しだけ間を置いた。


「戦場の崩れ方です」


その言葉に、艦長は黙った。


サッチは続ける。


「我々は敵機を誘導しました。だが、彼は誘導された機を見ていない。誘導した側を見ている。こちらが作った流れを見て、その支点を切っている」


若い士官が言う。


「つまり、こちらの戦術が読まれたと?」


「完全にではない」


サッチは答えた。


「だが、読まれた部分は確実にある」


ハーパーが低く言う。


「次はもっと近くへ行きます」


サッチはすぐに言った。


「焦るな」


「焦ってはいません」


「なら、なおさら追うな」


ハーパーの眉がわずかに動く。


サッチは彼を見た。


「君はあの零戦を見た。だから分かるはずだ。今のまま追えば、君も罠に入る」


「俺が?」


「そうだ」


サッチは静かに言った。


「我々は彼を罠に入れようとした。だが、次は彼が君を罠に入れる」


ハーパーは黙った。


認めたくはなかった。


だが否定もできなかった。


あの風防越しの一瞬。


ハーパーは見た。


相手は怯えていなかった。


驚いてはいた。


危険を感じてもいた。


だが、それだけではない。


あの零戦の操縦者は、笑っていた。


ほんのわずかに。


「名前は分かっているのか」


艦長が尋ねた。


サッチは首を横に振った。


「不明です。機体番号も所属も確認できません。日本側の通常編隊にも属していません」


「日本軍の特殊部隊か」


「可能性はあります」


サッチは言った。


「ただし、日本側もあの機体を完全に把握しているとは思えません」


艦長の目が細くなる。


「どういう意味だ」


「戦闘中、日本軍機の反応にも混乱が見られました」


サッチは別の音声記録を再生した。


日本側の無線を傍受した断片。


雑音混じりの声。


驚き。


戸惑い。


そして、同じ機体を味方として扱いきれていない空気。


サッチは言った。


「日本軍にとっても、あの零戦は不明機である可能性があります」


作戦室の沈黙は、先ほどよりさらに深くなった。


敵も知らない敵。


味方にも属さない零戦。


理解できない武器。


そして、戦場そのものを変える操縦者。


誰かが小さく呟いた。


「幽霊……」


その言葉を、誰も笑わなかった。


艦長がサッチを見る。


「君はどう呼んでいる」


サッチは一瞬だけ目を伏せた。


そして言った。


「Phantom Zero」


その名が、作戦室に落ちた。


誰も否定しなかった。


むしろ、その名だけが、今見ている現象に唯一近い言葉のように思えた。


艦長はゆっくり息を吐いた。


「対策は」


サッチはすぐには答えなかった。


やがて、静かに言った。


「まず、あの武器を理解しようとしてはいけません」


技術士官が顔を上げる。


「どういうことですか」


「理解には時間がかかる。その間にも、あの機体は現れる」


サッチはモニター上の白い点を見た。


「当面は、武器ではなく行動原理を読むべきです」


ハーパーが言う。


「奴は味方を助ける」


「そうだ」


「なら、また餌を置く」


艦長が鋭くハーパーを見る。


ハーパーは怯まない。


「ただし、今度は罠を一段深くする」


サッチは静かに頷いた。


「その必要がある」


若い士官が不安げに言った。


「また味方を危険に晒すのですか」


サッチはその士官を見た。


「戦場では、すでに全員が危険の中にいる」


声は穏やかだった。


「問題は、その危険を誰が支配するかだ」


その言葉に、ハーパーはわずかに口元を上げた。


先ほどまでの悔しさは、まだ消えていない。


むしろ深く沈んでいる。


だが、その奥に別の熱が生まれていた。


次はもっと近くへ。


次はもっと早く。


次は、あの半機身を奪う。


サッチはそれを見抜いていた。


だから釘を刺す。


「ハーパー」


「はい」


「君が追えば、彼は君を使う」


ハーパーは沈黙した。


「君が待てば、彼は来る」


作戦室に静かな緊張が走った。


ハーパーはゆっくり頷いた。


「了解」


艦長はモニターを見つめた。


そこには、白い点が一つ。


Unknown Zero。


だが、もう誰も単なる所属不明機だとは思っていない。


その白い点は、珊瑚海の空で米軍の戦術を壊し、理解できない武器で戦闘機を裂き、コルセアの初撃を紙一枚でかわした。


そして消えた。


艦長は低く呟いた。


「幽霊か」


サッチは答えなかった。


ハーパーも答えなかった。


だが三人とも、同じものを見ていた。


あの零戦はまた現れる。


そして次に現れた時、戦場はさらに変わる。


作戦室のモニターの中で、白い点だけが静かに点滅していた。か

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― 新着の感想 ―
> 壁面の大型モニターには、珊瑚海上空の戦闘記録が映し出されている。 あれ?合衆国にも未来人居る? この時期は、黒板では?初期型のCICだとしても、レーダーの画面を模したクリアボード(透明黒板)しかな…
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