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不時着した零戦を改造して歴史を変える?不死の体を得た俺は第二次世界大戦を無双する。  作者: よみ はじめ
守護神誕生編

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Phantom Zero撃墜作戦

第14話 Phantom Zero撃墜作戦


セイロン島の航空司令部では、再び通信記録が再生されていた。


部屋の中にいる者たちは、誰も椅子にもたれていない。


全員が前のめりになり、机の上の地図と、録音装置を見つめている。


雑音。


遠くで響くエンジン音。


それから、切迫した声。


『こちらレッド2! 敵零戦隊と交戦中!』


『敵機数は』


『多数! いや、待て……一機だけ動きがおかしい!』


司令部にいた士官たちの表情が変わった。


録音は続く。


『どの機だ』


『所属不明機! 味方の零戦隊から離れている!』


『ただの零戦か』


『違う! あれは違う!』


激しい雑音が入る。


機銃音。


誰かの叫び。


『レッド4がやられた!』


『どこから撃たれた!』


『分からん!』


『見失うな!』


『無理だ! 奴は交差の外にいる!』


通信室の空気が重くなる。


録音の中の男は、恐怖と混乱の中で言葉を探していた。


『速いのか?』


管制側の声が聞く。


少し間があった。


そして、答えが返った。


『違う……速いんじゃない』


雑音。


荒い息。


『いる場所がおかしい!』


その瞬間、会議室にいた数人が顔を上げた。


その言葉には聞き覚えがあった。


数日前、ムスタング八機が帰らなかった時の通信記録。


あの時も、似たような言葉が残っていた。


いる場所がおかしい。


録音はさらに続く。


『追うな! 追ったら食われる!』


『奴は味方を助けている!』


『何?』


『味方のゼロが撃たれそうになると、そこに現れる!』


『レッド2、落ち着け』


『落ち着けるか! あいつは戦場を選んでる!』


そこで大きな雑音。


一瞬、音が潰れる。


次に入った声は、別のパイロットのものだった。


『Phantom Zero……』


誰かが、そう呟いていた。


その後、録音は途切れた。


通信兵が再生を止める。


部屋は静まり返っていた。


サッチは、腕を組んだまま黙っていた。


彼の前には、セイロン沖の戦闘図が置かれている。


赤い線。


青い線。


そして、正体不明の細い黒い線。


その線だけが、他の機体とは違う動きをしていた。


敵を追わない。


逃げない。


旋回戦にも付き合わない。


味方機が危険に陥る位置へ、先に入る。


「もう一度、最後の部分を流せ」


サッチが言った。


通信兵が頷き、録音を少し巻き戻す。


『奴は味方を助けている!』


『何?』


『味方のゼロが撃たれそうになると、そこに現れる!』


『レッド2、落ち着け』


『落ち着けるか! あいつは戦場を選んでる!』


再生が止まる。


サッチは地図を見た。


「戦場を選んでいる」


彼は低く繰り返した。


上官が眉を寄せる。


「どう見る、サッチ」


「普通の零戦ではありません」


「それは聞き飽きた」


「機体性能だけの話でもありません」


サッチは黒い線を指した。


「速い機体なら、直線で現れる。旋回性能の高い機体なら、後ろを取りに来る。だが、Phantom Zeroは違う」


「どう違う」


「戦場の弱い場所に現れています」


部屋の空気が変わる。


サッチは続けた。


「味方機が撃たれる寸前。編隊が交差する瞬間。こちらが射線を作ったはずの場所。その直前に、すでに奴がいる」


参謀の一人が言った。


「未来を読んでいるとでも?」


「そう見えるだけです」


サッチは即座に答えた。


「未来を読んでいるのではない。戦場の流れを読んでいる」


その言葉に、部屋は静かになった。


「ではどうする」


上官が聞く。


サッチは少しだけ黙った。


そして言った。


「追ってはいけません」


「追うな?」


「はい。あの零戦を追えば、こちらが読まれる。ならば、追うのではなく、来させる」


「来させる?」


サッチは地図上に鉛筆で丸を描いた。


「Phantom Zeroは味方を助けに来る。ならば、こちらが味方機を危険に見せる状況を作ればいい」


数人の士官が顔を上げた。


「囮か」


「はい」


サッチは頷く。


「だが、ただの囮では駄目です。奴は下手な誘いには乗らない。実際、セイロン沖で我々の交差機動を外から崩しています」


彼は二本の線を引いた。


「囮機が危険に見える位置へ入る。Phantom Zeroはそこへ来る。そこで、別の機が外側からさらに射線を作る」


「二重の罠か」


「そうです」


サッチは鉛筆を置いた。


「奴が戦場の流れを読むなら、こちらは流れそのものを作る」


その言葉は、会議室に重く落ちた。


Phantom Zeroを追うのではない。


Phantom Zeroが現れる場所を作る。


それは、単なる空戦ではなかった。


狩りだった。


「しかし」


参謀の一人が口を開く。


「現在の機体でそれが可能か」


サッチは答えなかった。


代わりに、机の端に置かれた写真へ視線を向けた。


そこには、奇妙な形の翼を持つ戦闘機が写っている。


逆ガル翼。


巨大なプロペラ。


太い胴体。


それは、従来の艦上戦闘機とは明らかに異なる姿をしていた。


「ヴォートF4U」


参謀が言った。


「コルセアですか」


上官が写真を手に取った。


「まだ前線投入には早いはずだ」


「本来なら、そうです」


参謀が答える。


「ですが、Phantom Zeroの出現で状況が変わりました。通常機での対応は困難です。ムスタング八機の喪失、セイロン沖での混乱。これ以上、同じ報告を増やすわけにはいきません」


別の士官が険しい顔で言う。


「コルセアは扱いが難しい。離着艦にも問題があると聞く」


「だからこそ、選び抜いた搭乗員が必要です」


サッチは静かに言った。


「Phantom Zeroを落とすには、機体だけでは足りない。奴を罠に入れられるパイロットが必要です」


上官は写真を机に置いた。


「前倒し配備を要請する」


部屋の空気がさらに重くなる。


「正式記録には残すな」


上官は続けた。


「これは対零戦戦術研究の延長ではない。Phantom Zero撃墜のための特別任務だ」


通信兵が書類にペンを走らせる。


サッチは地図を見たままだった。


彼の目は、黒い線を追っている。


一機の零戦。


どこの所属か分からない。


発艦記録もない。


戦場に現れ、味方を救い、そして消える。


米軍の記録では、すでに名が付いていた。


Phantom Zero。


だがサッチにとって、その名前は恐怖のためのものではなかった。


それは、解くべき問題だった。


「奴は必ず来る」


サッチは呟いた。


「仲間が落ちる場所へ」


誰も何も言わなかった。


「ならば、その場所をこちらが作る」


会議室の窓の外では、遠くでエンジン音が響いていた。


新しい機体。


新しい戦術。


新しい狩り。


歴史は、また少しだけ速く動き始めていた。

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