朝と夕食と
この世で一番欲しいものはと聞かれても答えることは出来ないだろう。しかし、一番要らないものなら答えることが出来る。永遠の命だ。死ぬことがなく永遠に生き続ける。漫画などの悪役は欲しがっているが俺には理解不能だ。死というある意味でのゴールが無いなんて気が狂いそうになる。例え、人生が成功して楽に暮らせるとしても要らない。故に俺は言う。永遠の命など不必要だと。
何千回目の朝だろうか。起きるという行為は人間にとって拷問にも等しい。それが冬となれば尚更だ。これが後数十年続くのかと思うと嫌な気持ちになる。名残惜しいが体温で温まったベットから出る。部屋の窓を開けると冷気が部屋の中に入りこみ、体が震えた。
「雪だ」
空から冷たい雪が落ちてくる。積もっていないのを見ると、降り始めてそう時間は経ってないだろう。
「おはよー。陽向君」
向かいのアパートから声がする。
「おはようございます。唯月さん」
彼女は大学生で、親がいない俺のことを何かと気にかけてくれる。相変わらず美人だ。テレビなどで見る女優なんかより、ずっと。
「こんなに雪が降ってたら太陽は見えないねー」
「別にいいですよ。太陽なんて。見飽きました」
「そんなこと言わないでよ。当たり前のようにいてくれるから私たちは生きていけるんだよ」
相変わらず言ってることがよく分からない。それでも彼女はそれでいいんだと思う。それこそが彼女の個性であり、魅力なのだろう。
「それじゃ、ご飯の用意があるのでこの辺で」
ばいばいと言い窓を閉める。気づくと眠気は無くなっていた。
退屈な学校が終わり家に着く。今日は唯月さんの部屋にお呼ばれされているので、お風呂に向かった。これが初めてではないので特に緊張はしない。最初はとても緊張したけれど、今は普通になっている。しかし、あまり気のりはしない。料理はおいしいが、食べて家に帰ると時々、耐えられないくらいの腹痛に襲われるのだ。まあ、死ぬほどではないが今日は大丈夫な日だと信じて家を出た。
唯月さんの部屋は女の子らしさがとても出ている。
「はいどうぞー」
台所から戻ってくる彼女の手にはお盆があり、その上に色々な料理が乗っている。テーブルの上に置かれた料理は、肉じゃが、焼き魚、お味噌汁、白米だ。どれも食欲を刺激する
匂いがする。
「いただきます」
唯月さんに感謝しながら食べ始めた。最初、肉じゃがに箸を伸ばす。じゃがいもは適度にとろけていて美味しい。とても美味しいが、変な味がする。
「ああぁ!!陽向君は思った通り、私の太陽だよ。毒を盛っても死なないんだもん!一緒だね!これからは手を取り合って何百年も、何千年も生きていこうね。同じ化物同士」
いきなり何を言ってるんだこの人は。毒だと?刹那、猛烈な吐き気に襲われる。我慢できず、今食べたものを吐き出してしまう。
「ごめんね。辛いよね。全部吐いちゃっていいよ」
背中を擦られる。俺を殺そうと毒を盛った人に介護されているなんて変な話だ。
「でも、大丈夫。死ぬことはないから。おやすみなさい」
その言葉で魔法に掛かったかのように意識が途切れた。




