殺意の訳
目が覚めると見慣れた天井が見えた。なんで唯月さんの部屋で寝てたんだっけ。思い出そうとするが頭痛がそれを邪魔する。
「あ、起きた。一日中寝てたんだよ。気分はどう?」
なぜか隣で密着して寝ている彼女が教えてくれた。顔を見て全てを思いだす。毒を盛られたことを。急いでベットから出て距離を取る。
「なんのつもりだよ。あんた」
「あんたなんて悲しいなー。これからずっと一緒に暮らすんだから唯月でいいのよ」
「意味わかんねーよ。殺そうとしたり、暮らすとか言ったり」
「殺そうとしたわけじゃないよ。確信を持ちたかっただけ。でも、結果的には傷つけたのはごめんなさい。でも信じて。陽向君が私と同じで死なないっていうのは知ってたわ。だって、前にも何回か猛毒を持ったことあるから」
時々、襲われる謎の腹痛の原因が分かったが、そんなことどうでもよくなっていた。問題はそこではない。俺が死ななかったということだ。死ねない?漫画の悪キャラが欲しがる永遠の命を手に入れてしまったということだろうか。信じられないが、今生きている自分の存在が確かな証拠になってしまっている。そんなの要らない。僕が友達になった人も先に死んでしまう。愛した人も死んでしまう。それでも俺は生き続けなければならない。そんなの耐えられる訳がない。
「あなたの気持ちや考え分かるよ。私も思ったから。でも、耐えられなくても生きるの。自殺という逃げることも、死というある意味でのゴールも私たちには無いのだから」
その言葉には悲哀と絶望が含まれていた。
「辛かった。いつも一人で、私を知っているのは太陽と月だけ。でも、もう違う!あなたがいる。私の気持ちが分かってくれる人が。だから、一緒に過ごそう」
蜂蜜のように濃厚で、嫌に纏わりつく声だ。このまま堕ちたくなる。そうだよ。別にいいんだ。殺されかけたが、結果死ぬことはなかったのだから。ふらふらと花に近づく虫のように、ベットで待つ唯月さんへ向かっていく。それが毒を持っていると知っていても。
「そう。それでいいの。こっちへおいで。一緒に愛し合いましょう」
いつもと顔が違う。恐怖すら感じるが、足は止まらない。あと一歩------------ガンッ!
「え?」
謎の音がするのと同時に視界が暗転したと思うと、直ぐに光が戻る。一瞬のことだ。まばたきより早い。
「なんだよここ」
そこは白い空間で、自分以外に何人か確認できるが、それだけだ。いるという認識はあるが、姿は全く見えない。不思議な感覚。戸惑い、うろたえていると、上から何者かが降りてきた。
「やあ、神に祝福されし者達よ」
いきなり現れた男はそう言う。控えめだが、有無を言わさない声音で。




