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第二話 少女の風景


「マリーちゃん、ここは危ないからお母さん達の側にいなさい」


「マリー!うろうろしないの!危ないからアッチへ行きなさい」


「おやおやマリーちゃん、じいじと遊ぶかの?でも今は無理なのじゃ、じきにココにもキノコが来るからの」


「あっマリーだ!ねぇねぇ高飛車クッキングしてよ、ねぇマリーってば!」


「ワン!?」




「つまんない」


大人達には厄介払いされ、子ども達には気分の乗らない遊びをせがまれ、犬には逃げられた

「ただでさえ難しい年頃の少女にこの仕打ち‥グレるのは時間の問題ね」

ふくれっ面で仁王立ちしている少女は、よし今から反抗期になろうと決意した

でも、グレるって何をすればいいのかしら?


ブルーノさんの表札に”ゲイ”て書くとか?‥ダメね、ホントに落ち込みそうだわ

うちの表札に”~部屋”て書くとか?‥ダメね、ホントに新弟子が来たら困るわ

じいじの頭に水を撒くとか?‥ダメね、ホントに生えたらダンディさが低下するわ


うーん、グレるのって面倒ね、やめよ


1人ポツンとつっ立って、うろんげな表情でなにやらぶつぶつ呟いている娘、それを遠まきに見ていたカンナは我が娘ながら気持ちワルいわねと、呆れた思いであった



この支配からの卒業ごっこに飽きたマリーは、なんとはなしに周囲の観察をはじめた


今は戦いの真っ最中である、だが戦況はすこぶる良好らしく、実際に戦っている男達の場所はさすがに緊迫した雰囲気が漂っているが

女、子供については、化け物が現れた時こそ緊張していが、今はのんびりとしたモノである

どこから出したのか菓子を配って食べているほど緩みきっている



大きな岩の上、登り口付近にはブルーノさんを中心とした男達10名ほどの集団、そしてその左右を固めるように20名ほどの男達が集まっている、対化物の主力集団である


そして岩の縁に沿うようにして、10名ほどの集まりが6ヶ所点在している

一線を退いた50~60代、そして未熟な10~20代の混成集団である


一線を退いたとは言うが、体力こそひとしおに落ちたものの狩りにおいて彼らはいまだ現役だ

若い頃のように武器を片手に野山を駆け回ることは出来ないが、彼らには長い年月で培った経験という武器がある

あらかじめ彼らが狩り場に入り、意図的に人間の痕跡を残し、道を塞ぎ、時に獣道を作る、そうして動物達の動きをコントロールするのである

彼らが構築した狩場は、狩猟の難度を格段に下げ、安全性を飛躍的に高める

この村において、年老いた戦士の役割は休息の暇を与えられないほどに重要なものなのだ


そういった物事に熟達した者が未熟な者達をまとめ、まさに実践形式で戦うということを仕込んでいる

やっていることといえば、ただ化物目掛けて石を投げ落とす至極単純なことであったが、投げる際の体勢をわずかに変化させることで力の入り具合が違ったり、滑落の危険がある場所では常に足場を踏み固めるように動けなど、すぐにでも役立つ技から戦の心構えまで、幅の広い指導を与えてくれる老人達に若者達はさすがはとうなる思いで熱心に聞き入っている



岩上の中心部では女達が集まり、石の切り出し作業を行っている

予想外に多い化物の数に不安を覚えたブルーノが攻撃用の石の確保を提案して、それをいちもにもなく受け入れた村長が女達に作業を命じたのである



「お母さん張り切ってるなぁ」


周りの女達に比べあからさまに二回りは大きい母は、ハンマーを振り上げては振り下ろし、周囲に火花を撒き散らしている

「カーン」「カーン」とハンマーを打ち鳴らす母親に

「ジ・ジ・ジンギス!」「ジ・ジ・ジンギス!」と合いの手をいれ応援する


「またあの子は‥」


妙な視線を感じて目を向けてみれば、何かを言いながら腰だめに正拳突きを繰り出している娘の姿があった

なにやら、またもおかしな様子を見せる娘にカンナは困惑するばかりである

親のひいき目なしに、しっかりした子だと思っているし私も大いに助けられている、いわゆる”良くできた子”なのだが

問題なのは、いつも1人で楽しそうなことなのだ、友達がいないわけではない、1人でいることを好んでいる節があるように見える

村の中での評判も良い娘だが、母親としてはやはり少し心配なのだ


『ほんとに誰に似たのかしら‥』


自分は言わずもがな亡くなったあの子の父親も、あんなヘンなところはひとつもない

はぁ、と長めの息を吐いて手を止めた、首に掛けたタオルで額の汗をふいていると


『そういえば』と思いたった


私が子どもの頃から知る人間に似ている気がする

具体的になにが、ということではないが、いつも思案めいた面持ちをしていたり超然とした佇まいをしていたりなど、どことなく雰囲気が似ていると思う

父親がマリーが生まれてすぐに他界したため、ブルーノをはじめとした多くの村の人達が私達親子を気にかけてくれた、村長もその1人である

幼い娘が村長と2人で遊んでいるのをよく見かけていた、いや、頻繁に見かけていた


『あの子村長が大好きなのよね‥』


なんとなく犯人の目星がついたカンナは、スクスクと育つ娘の方向性を不安に思うものの、あの村長に似てくれるのであるならと、複雑な思いの板挟みに『うーん』と頭を抱えるのであった



「お母さん何してるんだろう」


ハンマーを地におろし、こちらをチラリと見た母は固まったかのようにそのまま私をジーっと見つめている

『応援できないじゃん』せっかく見つけた遊びを取りあげられて私不満ですよ?と「カーン」待ちの視線を負けじと送る



見つめ合う母娘



『恥ずかしくなってきたんですけど』

でもここで顔を背けたら逆に変な感じじゃない?私恋する乙女みたいにならない?

お母さん相手にそれはないだろと、退くに退けない状況に追い込まれる私

『‥なんか妙な気分になってきたわ』

あれ?もしかして、これってフリかしら?

お母さんが私に期待してるのなら‥応えるしかないじゃない!


「なんなのよ!私を邪険に追い払ったくせに、そんなに見つめて‥なんだって言うのよ!アメとムチのつもり?バカにしないでよ!私は都合の良い女なんかじゃないわ、いまさらあなたのところへ戻る気なんてないの!ないに決まってるじゃない!だから‥だから、そんなに見つめないで!あなたのそんな目を見たら私‥私っ‥!」



服の胸の辺りをキュッと握りしめ、うつむきわななく私は顔を上げると同時に走りだした!愛するあの人のもとへ!



「お母さーーーん!!」


私の声に気づいた母が菓子を食べながら私のほうへ振り向いた

走りだしたままの体勢で固まる私を不思議そうに眺めたあと

『食べる?』と聞いているのであろう菓子を、ん?ん?と私に見せている


私は、そっとポケットに手をやると、中に入っているドングリを母へ投げた

こうして私の第2次反抗期が開幕した



もう止まりません(泣)

本線とはまったく関係ない話になってるけど、書いてるうちに楽しくなっちゃって(汗)申し訳ないです。

いずれマリー編に入る前に追加話を差し込んでバランス取ろうと思ってます。次もしくはその次あたりでマリー編を締めれるよう頑張ります。

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