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第一話 闇の穴

第12地区は地下通路である。険しい地形の多いこの国では、人の移動、物資の運搬の必要性から数多くの地下トンネルが掘られている。

物が集まれば人も集まる、そして人が人を呼び、いつしか生活が営まれるようになり、地下街を形成するに至ったのは、自然な成り行きだったのかもしれない。

そして、そのあまりの規模ゆえに、国は不自然なこの土地を人が住まう土地であると認めざる負えなくなった。


第12地区として分類された巨大地下都市


その閉鎖された空間には昼も夜もない、つねに街全体が灯りに包まれている。人間の生みだした火によって生の光を与えられるレンガの大地、自然の恩恵を拒絶したその空間は、退廃した雰囲気をまといながらも、どこか官能的で、人間達をこの地へと誘い続ける。


しかし今はかつての姿はない

熱いほどに煌々と燃え盛るっていた不夜城は、地上から洩れこぼれるわずかばかりの光しか届かない漆黒の闇へと消えた

耳をすませば、はるか遠くで聞こえる人のものではない息づかい。獣の排泄物、腐敗した食物、そして人の汗、血、涙‥それらが混ざりあった重い空気に覆われたレンガ造りの世界は、主たる人間の存在を許さないかのごとく、ただ無機質に死の臭いに満たされていた。それが今の第12地区である。


「なれてきたみたいだ」


11地区の拠点を制圧した僕は入口を探した、監視の行き届かない侵入口を。12地区はとてつもなく巨大な地下都市だ、それにともない換気ダクトも多く、大きなものとなる。人の手から離れ稼働していない今なら人1人が通ることなどたやすいはずだ。本来の入口には魔王軍の姿があったが、少しハズれまで行けば注意が地上にまで向いていないのか、なんの警戒もしておらず、結果、もぐりこめそうな通風口はすぐに見つかり、肩すかしなほど簡単に侵入することができた。



所詮は化け物のすることかと、侮蔑した気持ちで闇の中へ降り立った時、愚かなのは自分であったと痛感した。

押しつぶされてしまいそうになる異常な空間、五感のすべてがこの地に在ることを拒絶する。闇の中に潜む無数の悪意が僕を縛りつけた。

ヤツらは地上の警戒をしていなかったのではない、する必要がないんだ。地上に広がるは峻険の山々、人が行き交うにはあまりにも過酷なそんな場所で人間を探す必要などない。この大きな大きな穴の中で待っていれば餌は落ちてくるのだから

そう、僕のように



こんな状況で襲われたらひとたまりもない、若干パニックに陥りながらも急激な明暗差の変化で機能を失った視力の回復を待った。

深い闇の中、その時間をとてつもなく長く感じた、僕は降りたったままの体制、片膝を立て両手を地面についたクラウチングスタートのような、着床時の音を消すためにとったその体制で息を殺しじっと待った。

視覚はもちろん、強烈な悪臭で嗅覚すらもまともに働かず、残る聴覚で周囲の状況を得るべく集中する。


じわりと汗がたれた、やがてそれは温度を失い、冷たいひとしずくとなって背筋を流れる


「ベタタン‥ベタタン‥」


重いものを引き摺っているかのような、わずかばかり既視感を覚える音は、その大きさから音の主が決して遠くではないことを連想させ、僕の焦燥感をさらに煽った

生きた心地がしない、その言葉の意味を我が身をもって経験している、無駄だと知りつつも目の前に広がる闇を睨みつける、その正体を見せてくれと


ふと光を感じて天井を見上げた、こんな短期間でなぜここまで劣化したのか、これも化け物どもの成せる業なのだろうか、この緊張感の中、少々間の抜けたことを考えながら、所々にほころびを見せる天井の隙間からわずかな光が洩れていることに気づいた、自分の体の変化を感じ取り、闇を再び睨んだ。


ぼんやりと浮かびあがるレンガの街並み、強い衝撃でも受けたのだろう、壁や地面の一部が均整のとれた形を失い、ガレキと名を変えて散乱している。

しかし僕が見たいのはこの変わり果てた街の姿ではない、凝視する先、建物の陰、わずかに空気がゆれる、その場所、音で僕から生を奪ったモノ


「ベタタン‥ベタタン‥」


色を見ることはできない、はっきりとした姿を捉えることもできない、しかし、闇の中でうごめくキノコを思わせるその巨大なフォルムは、強烈な残照として僕の目に飛び込んできた。


不可解な音、わずかにぶれる姿


「そういうことか」


2体の化け物は引き寄せられるかのように、彼のもとへと近づいていった



書き急ぎ気味で内容がペラく感じたので、掘り下げる書き方にしました。‥あんま変わんないかな(苦笑)

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