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11,表彰式で明かされる真実


 大小様々の魔石灯が星々のように眩く光り、煌びやかな装飾が輝く天井を、私は静かに見上げました。


 太陽がなくとも煌めくそれらがあまりにも美しくて、自然と口角が上がります。

 

 あまり感情の動くことがない私でも、心が揺さぶられるほど綺麗で感動してしまいました。みんなで頑張った甲斐があります。


 いつの間にかウィルが側に来て、当然のように手を伸ばしてきました。こちらに向かってにこりと微笑むと、私が腕に下げていたローブを引き抜いて、大切そうに畳んで下がっていきます。


 ……王子様がそんなことをしなくてもいいでしょうに。

 

 お父様――いいえ、今はもう赤の他人なので、リヴィエル侯爵と呼ぶ方がいいでしょう。侯爵は「お前っ!」と声を震わせ、グリース様は「嘘だろ……?」と息を呑んだようです。苦悶や驚愕が入り交じったざわめきが会場中に広まっていきます。


 しかし、私の視界には、目の前の陛下や王族、元の位置に戻ったウィルしか映りません。


「静まれ!」


 宰相が空気を震わせる一喝を放ち、誰もが口を閉ざしました。私は膝をつき、深く頭を垂れました。静寂ののち、陛下が命じます。


「面を上げよ」


 私はゆるやかに頭を上げました。肩まで切り揃えられた髪がふわりと揺れます。忠誠心を込めた強い眼差しで陛下を見据えました。

 

「逆境に立ち向かい、己を極めるその姿勢。研究や魔術への貪欲な探究心。そして、孤高でありながら思いやりがあり、国や民の幸福を願って、よくぞここまでやり遂げてくれた」

「この上ないお言葉です」

「ウィルクス」

「はい」


 陛下に呼ばれて返事をしたウィルは、私に再び手を差し伸べました。その手を掴み、立ち上がると、導かれるまま陛下の隣に並び立ちます。


 正面を向くと、不健康そうな見た目に様変わりしたリヴィエル侯爵と、下品なほど過剰に宝石を付けた侯爵夫人。それと、アンネと婚約したのかと思うほど寄り添っている侯爵令息。


 私が捨てた、かつての家族がこちらを睨んでいます。そこに並び立つアンネも。


 他にも、私の悪評を流し続けた令息令嬢。周りの声を信じて不躾な目を向けてきた人達。全員が信じられないものを見るような顔をしています。


「先にも言ったように、ソレーヌ嬢こそ魔塔にて『人工魔石』を完成させ、魔石灯や魔石浄化路、その他の製品製作に大きく貢献してくれた。彼女に公爵位スヴィエクトを授け、女公爵とする。合わせて、ウィルクスは臣籍降下し、ソレーヌ嬢の婿として婚約することも決まった。天才魔術師と我が息子の新たな門出を、みな祝ってくれ」


 陛下の宣言に、ざわめきが一層広がっていきます。そんな中、率先して拍手を送ってくれたのは――パスキエン辺境伯家とマレー子爵家。


 そこから弾けんばかりの拍手に包まれました。


 陛下が満足そうに頷いたのち、片手を上げました。拍手が鳴り止むと、陛下は目を細めてある方向を見ました。


「ところで、ソレーヌ嬢には長らく不名誉な悪評が流れていたそうだな?ウィルクスの十歳の誕生日パーティーで何があったのか。身に覚えがあるだろう?――ベルトン伯爵令息」


 突然名指しされたグリース様は、真っ青な顔でビクリと肩を揺らしました。会場の視線が一斉に注がれます。


 陛下とウィルは、親子そっくりの表情でグリース様を見つめています。陛下に促され、ウィルは一歩前へ進み、話し始めました。


「あの日、僕が少し息抜きをしたくて席を外した時に、偶然聞いたんです。彼女に『おい』『お前』と声をかけ、名も名乗らずに理不尽な罵声を浴びせるグリースと、それに毅然とした態度で対応するソレーヌの声を」


 ウィルの言葉に、多くの令息令嬢が言葉を失いました。


 そして、それぞれの方向へ懐疑の目を向けます。噂を流したグリース様。真偽も確かめず吹聴したコランティーヌ様。二人は注目を浴び、真っ青な顔で首を横に振っています。


 そんな二人を見て、お兄様――侯爵令息の顔色も悪くなっていきます。


 ――私がかつて望んでいた、侯爵家の汚名返上。それは何も、私の悪評だけではありませんでした。


 考えてもみてください。多くの近衛騎士を輩出している家柄とはいえ、彼は伯爵令息。初対面の、更に言えば格上の侯爵令嬢である私に対し、不遜な態度で接してきたのはグリース様の方でした。


 その一部始終をウィルが聞いていました。つまり、どちらが先に理不尽な非難をしたのか、グリース様の主張がいかに不当なものか、ウィルは知っているのです。


 だというのに、侯爵令息はその話を鵜呑みにし、私を悪者にしました。家族も同様に。その時点で、噂に踊らされた家の者達は、ウィルの中で愚か者と評価されたのです。


「会場に戻ると、グリースの話を鵜呑みにした者達によって事実は歪められ、彼女が悪者にされていました。あの日のおかげで付き合う人を選べたのは僥倖でしたが、ソレーヌにとっては辛い日々の始まりだったでしょう」

「いえ、そんなことは……」


 実のところ、私はそこまで気にしていません。叩かれ、食事を抜かれるのは辛かったですが、それ以外は正直何とも思っていないのです。


 だって、程度の低い人間と付き合うくらいなら、無視されていた方が最低限の人付き合いや、参加必須のパーティーへの出席のみで済みますから。勉強や研究に集中出来ていいとさえ思っていました。


 あのパーティーの日も、ウィルに対してひっきりなしに令息令嬢がまとわりつき、給仕すら近寄れない状況でした。ウィルは、お茶を一口飲むことすら出来ず、対応し続けていたのです。


 我を通すばかりで王子殿下への配慮も出来ず、都合のいい噂に流されるような人達と関わるなんて、時間の無駄でしょう?


 ウィルはそんな私の気持ちを理解してくれてはいるものの、だからといって理不尽な扱いを受けていいはずがないという怒りが勝っているせいか、私以上に彼らを憎んでいるのです。


 彼らに鉄槌を下したいとウィルが望んでいるのなら、私が止めるのは野暮でしょう?あの家族や令息令嬢を守る義理なんて、私にはないのですから。




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