表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/13

他人の羞恥でポイントを得る

 悪魔のヨダレとかいう、最高にヤバいスパイス(毒草)を手に入れた。

 ついでに、ヤッコロのお母さまを救う薬草もだ。


「礼を言う、メシ子殿。母を救えるのは貴殿のおかげだ」


 ヤッコロが真剣な顔で頭を下げる。


「いいえ。win-winですわ。スパイス(毒草)が手に入りましたし」

「私は母上の待つ領地へ戻らねばならない。ここから半日ほどの『辺境都市エッジストン』だ。ロシュフォール家の屋敷があるのだが……」


 ヤッコロが上目づかいでこちらを見てくる。

 なんだ、ついて来てほしいのか、この女騎士。

 仕方ない。話を合わせてあげよう。


「奇遇ですわね。私もそこへ向かうつもりでしたの」


 ヤッコロがパァっと笑顔になる。


「本当か? ならば同行してくれ! 命の恩人をこのまま野放しにはできん。屋敷に来れば、礼も弾むぞ」

「お礼……お米ある?」

「もちろんだ」


 米! 破綻道に欠かせぬ白銀の至宝!


「衣服も用意しよう。メシ子殿の美貌なら、きっとドレスも似合うぞ」

「おい初対面でツラの話すんなよ。コンプラ違反だぞ」

「コン……な、なんだ?」


 あ、異世界人にルッキズムとか通じないか。

 というか褒めてくれたんだから喜ばないとね。


「ありがと(はぁと)」

「あ、ああ……?」

 

 怪訝な表情をしたヤッコロ。

 すぐに黒焦げのイノシシを指さす。


「ところで……グランドボアはどうするんだ?」


 あ、グランドボアって言うんだこのクソでかイノシシ。


「え、食べる?」


 残ったタレマヨを差し出す。お肉に合うからね。


「い、いや。もうお腹がいっぱいだ。そうではなく、討伐の証となる牙などだ」

「え、いらないけど」

「あのクラスのボアを単身で討伐しておいて?! 名誉なことだぞ! 功名心がないのか?!」

「名誉ねぇ」


 名誉じゃ腹は膨れないからね。

 そもそも、下着でうろついてる追放令嬢に功名もクソもないでしょ。

 

「それに、素材を売れば金にもなる! A級冒険者(ハンター)のライセンスだってもらえるぞ!」

冒険者(ハンター)ライセンス……?」


 私が興味を示したからか、ヤッコロが畳みかけてくる。


「そうだ。いろいろと優遇されるし、より高度で危険な任務も受けられるようになる」


 危険?

 つまり、害意受け放題ってこと?


 ポイント残高を確認する。


『ポイント:0ポイント』


 稼がなきゃ……稼がなきゃ……!

 危険な害意にさらされなきゃ!


「牙を持ち帰りますわよ!」

「協力しよう!」

「まかせましたわ!」

「ああ!……え?」


 いや、元社畜の追放令嬢に動物解体とかできるわけないでしょ。

 ヤッコロは手際よく素材を解体してくれた。


 ***


 数時間後。

 私たちは辺境都市エッジストンの城門の前に到着した。


 ヤッコロは解体作業を終え、ボロボロになった銀色の鎧を再び身にまとっている。

 対する私は、シュミーズとドロワーズ姿だ。


「止まれ!……ま、まさかヤツネお嬢様ですか!?」


 門番の兵士が槍を下ろし、驚いた声を上げた。

 さすが領主の娘。顔パスだ。


「ああ、ご苦労」

「なんと……お帰りが遅く、皆心配しておりました! 鎧がボロボロではないですか! 一体何が……」

「道中、グランドボアに急襲されてな」

「グランドボア?! ご無事で何よりです。さすがはお嬢様、見事討ち取られたのですね!」


 門番が尊敬の眼差しを向けるが、ヤッコロは首を横に振った。


「勘違いするな。私が倒したのではない。ここにいるメシ子殿が、単身でボアを退け、私の命を救ってくれたのだ。彼女は私の恩人だ」


 うんうん。

 正確には宮廷魔術師の魔法が、だけどね。すごかったねあの炎。私アフロになっちゃったよ。


「えっ……? この、顔が真紫で、下着の奇人……失礼、こちらの御仁がですか!?」


 門番が驚いて私をまじまじと見る。

 そこで、彼の視線がピタリと止まった。


「……ん? ちょっと待ってください。そのシュミーズとドロワーズに刺繍されているのは……ロシュフォール公爵家の紋章と、お嬢様の名前!?」


 門番が目を剥いた。

 あ、これヤッコロの家の特注品だったんだ。見えないところにお金かけてるね。


「ヤ、ヤツネお嬢様……なぜこの方が、お嬢様の下着を……?」

「うっ……そ、それは、その……海千山千の事情があり……」


 ヤッコロが冷や汗を流して言い淀む。

 もごもごしてたら怪しまれるじゃないか。ここは私がフォローしてあげないと。


「ヤッコロにお借りしましたのよ」

「ヤッコロ? いや、お借りした……?」


 門番の怪訝な表情を見て、女騎士が声を張り上げる。


「ち、違うぞ! 誤解だ! 私はちゃんと履いている! 今はしっかり履いているからな!」

「えっ? あ、はい。……履いて、おられるのですよね?」

「そうだ! 履いているぞ! 鎧の下は絶対に履いている!」


 聞いてもないのに必死に「履いている」と連呼するヤッコロ。

 門番は「なぜそんなに必死に……?」と、かえって疑心暗鬼の目を向けている。


 ヤッコロの肩をポン、と叩く。


「……ヤッコロ。見苦しいですわ」

「おい! なんだその言い方は!」

「お嬢様、まさか……」

「だから履いてるんだって!」

「ロシュフォール家の名にかけて?」

「履いていることを誓う! ……って何を誓わせてるんだ!」

「つまり、履いてないのですか?!」

「履いてるんだってば!」


 そこでヤッコロがハッと我に返る。

 顔を抑えて崩れ落ちる。


「というか私は何を叫んでいるんだ! あ~~~~~ッ!」


『女騎士の羞恥を検知しました:500ポイント』


(おっ、ポイント入った。すまんね)


 自爆とは言え、他人の尊厳を換金するなんて、なんて心が痛むスキルなんだろうか。


「だが、破綻道とはかくも厳しいのだ」

「くっ、破綻道、一体何なのだ……!」

「さ、案内してくださる? お母様の薬が一刻も早く必要なのでしょう?」

「うう……もうお嫁にいけない……」

「だからコンプラ気をつけろや。結婚だけが幸せじゃねぇんだよ」


 ヤッコロは涙目で私を睨みつけながら、内股で城門をくぐった(履いてるのに)。

 門番は訝し気な表情のまま、私たちの背中を見送っていた。


 こうして私は、辺境都市エッジストンへと足を踏み入れた。

 待ってろお米。待ってろ日本の心。


 私の破綻道は、文明社会でも止まらない。


***


【今日の破綻ハック】


 やあみんな! メシ子だよ!

 パンツくらい履かない日だってあるよ!


 今日のハックはこれ!


 テッテレー!


★No.009『過剰防衛(自爆)』

 材料:やましい心

 効果: 否定はできる

 代償: 逆に怪しまれる

 破綻度: ★★★★★(墓穴)


 「私のプリン食べた?」って聞かれただけなのに、つい「いやほんと違う! 私じゃない! 食べてない! 信じて!」って必死になりすぎて、逆に完全に犯人になるときあるよね!


 自信を持って「食べてないよ」と一言いって去ろう!


 だって落として食べられなかったからね!


 それじゃあ、またね!


 「高評価」と「プリン(お気に入り登録)」よろしく!


 ハタンキュ~(挨拶)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ