第42話 破綻令嬢はマシュマロのように巨大化する
「さあ、魔王軍。私が責任をもって破綻に案内してやりますわ」
私はハタゾン・メシガの段ボール腕を振り上げ、ゴーレム兵団の群れへと突っ込んでいった。
「ペカーッ!!」
まずは挨拶代わりの目からビーム(出力大:熱線モード)!
視界を薙ぎ払うように照射すると、ビームに当たったゴーレムたちの表面がドロドロに溶け落ちていく。うんうん、牽制としては十分じゃん。
でも、無傷のやつもいる。あれが対魔法なんとかゴーレムか。
なら、こいつの出番だ。
「ブゥゥゥゥン……チーン!」
500ワットの電磁波を、ゴーレムの内部に直接照射!
すると、無事に電磁波が対魔法とかいう厄介な障壁をすり抜けたっぽく、ゴーレムの内部の水分が急激に沸騰した。
ボコボコと内側から泥を噴出させながら、デカい岩の塊たちが次々と自壊していった。
「おおおっ! あの強固な障壁を無視して、次々とゴーレムを粉砕していくぞ!」
「さすがメシ子殿……! あんなふざけた段ボール姿でも、実力は本物か!」
砦の兵士たちとヤッコロがめっちゃ歓声を上げてる。
「ば、馬鹿な!」
一方、魔王軍の幹部が血相を変えて叫んだ。
「我が軍の誇る『対魔法・物理複合障壁』が、まったく機能していないだと!? あの箱女、一体何をした!?」
「わかりません! 指を指しただけで、巨兵たちが内側から……いや、そもそも魔力の軌跡すら見えません!」
「無詠唱かつ不可視の不可避魔法……ッ! なんという理不尽な力だ!」
幹部たちが完全に戦慄している。
ふふん。500ワットでも、中身の水分を直接沸騰できれば十分致命傷になるんだよね。
でも、敵もただの的じゃない。
死角から迫っていた一体の巨大ゴーレムが、私の頭上から丸太みたいな腕を振り下ろしてきた。
「危ないッ、メシ子殿!」
ヤッコロの悲痛な叫びが響く。
ズドォォォォンッ!!
ゴーレムの拳が私を直撃し、凄まじい衝撃波が戦場を駆け抜けた。
「——メシ子殿ォォォ!」
「やったか?!」
ヤッコロの絶叫と魔王軍の歓喜がこだまする。
でも、土煙が晴れた後。
そこに立っていたのは、拳を粉々に砕かれたゴーレムと——段ボール装甲を四散させ、いつものキャミとかぼちゃパンツ(下着)一丁になった無傷の私だった。
「メシ子殿……!」
ヤッコロが歓喜の声をあげる。
「ブゥゥゥゥン……チーン」
ドッシャァァァァ!
500ワット砲を受けて、巨大ゴーレムが崩れ落ちる。
「あの装甲は、敵の攻撃を受けた瞬間に自ら爆発し、その衝撃で相手の攻撃を相殺する『反応装甲』だったというのか!?」
「自らの防具を犠牲にしてでも、我々を守ってくださったのだ……ッ! なんという捨て身の覚悟!」
「うおおおお! 続けぇ! メシガ様の覚悟を無駄にするなァ!」
勘違いした砦の兵士たちの士気が爆上がりしてる。
でもごめん、全然違う。
これ、私の無敵スキル(物理無効化)の厄介な副作用で、衝撃を受けると下着以外の服が弾け飛ぶだけなんだよね。
せっかく45分もかけて工作したハタゾン・メシガが、たった一撃でただの下着女に戻っちゃったじゃん。悲しい。
「ええい! 『アレ』を出せ!」
焦った魔王軍幹部が指示を飛ばす。
土煙の奥から、一際鈍い光を放つ、テカテカしたゴーレムが現れた。
「おっ。なんか強そうなの来たね。あれもチンしてやるわ」
私は下着姿のまま左手の中指を突き出し、電磁波を照射した。
しかし。
——バチバチバチッ!!
電磁波がテカテカのゴーレムの表面に当たった瞬間、激しい火花が散った。
「あっ」
しまった。あれ、泥じゃない。
金属製だ!
鏡に反射するように、強力な電磁波が乱反射し、あろうことか私自身にブワァァァッと降り注いできた。
「あつっ! ちょっと、熱い熱い熱い!」
私の体内の水分が、急激に沸騰し始める。
「あ、なんですのっ?!」
「な、なんだッ!?」
「メシ子殿の身体が、膨れ上がっていくぞ!?」
無敵スキルのおかげでダメージはないんだけど、たぶん副作用だ。
身体が、まるでレンジの中で温めすぎたマシュマロみたいに、ブワァァァッと異常膨張を始めた。
あれよあれよという間に、私の身体は身長十メートルを超える巨体へと膨張。しかも熱でドロドロに溶けかかってて、得体の知れない大怪獣になっちゃった。
「あー、やばい。身体がドロドロして力入んない……」
巨大マシュマロの姿で私がフラフラよろめくと、その圧倒的なデカさと異様な姿に、魔王軍のゴーレムたちですらジリジリと後ずさりを始めた。
「ば、化け物……!」
「人間共め、あのような怪物を飼っていたとは……!」
魔王軍の幹部が恐怖で完全に顔を引きつらせている。
「ヤッコロォ……どうしようこれぇ……」
ドロドロの巨体で私が助けを求めると、ヤッコロは私を見上げて、また何かを勝手に勘違いしたようにゴクリと唾を飲み込んだ。
「……そうか。メシ子殿は、強大な敵の軍勢を一掃するため、自らの肉体を犠牲にして『その姿』に……!」
「違う違う」
「ならば、その覚悟、私が受け止めよう!」
「違うんだけどなぁ」
ヤッコロは私をしっかりと見据える。
「メシ子殿」
「はぁーい」
「焼き払え!」
「……ッ! おまかせあれぇ!」
私はドロドロの身体のまま、目玉だけをギョロリと敵軍に向けた。
そして、顔面にありったけの気合を集中させる。
「ペカァァァァァァァァァァァァッ!!」
最大出力の極太目からビーム発射!
ズバババババババッ!!
超極太のビームが私の前方全てを灰塵と化し、魔王軍のゴーレム兵団が数千体まとめて蒸発。
魔王軍幹部の頬を数ミリかすめて髪の毛をチリチリに燃やし、ついでに遠くにあった連峰の山頂を真っ平らに消し飛ばした。
……チーン。
静まり返る戦場。
ゴーレム兵団の大部分は消滅し、地形は完全に書き換わり、大地はガラス化して真っ赤に熱されている。
「……」
ヤッコロが、開いた口が塞がらないって顔で、平らになった山脈と私を見上げている。
「……何をしているんだメシ子殿ォォォ!」
我に返ったヤッコロが絶叫した。
「戦略級魔法は禁止だと言ったはずだろ!!」
「目からビームは禁止されてないから! それにヤッコロがその成りで『焼き払え』とかいうからじゃん! そりゃ巨神兵したくなるよ!」
「なんだ巨神兵って! 私は『敵を焼き払え』と言っただけで、地形ごと消滅させろとは言っていない!」
「細かい指示を出さない上司の責任ですー」
「うぐっ……私に、上に立つものとしての不得があったということか……」
「いや納得すんなよ。絶対私が悪いから」
まあ、戦況は覆ったからいいんじゃない?
けど。
「……あれをやれ」
「しっ、しかし!」
「いいからやれぇぇえ!!」
魔王軍幹部が決死の策を実行した。
***
【今日の破綻飯ハック】
やあみんな! メシ子だよ!
たまにはおしゃれにマシュマロを焼きたくなる夜ってあるよね!
今日のメニューはこれ!
テッテレー!
★No.0042『レンチン限界マシュマロ』
材料: マシュマロ、オーブン、食パン
調理時間:8分(忘れるまで)
破綻度: ★★★☆☆(見た目だけ復活)
たまにはおしゃれにマシュマロを焼きたくなる夜ってあるよね!
優雅にコーヒーなんか入れて出来上がりを待とう!
だいたい忘れて、翌朝終わった状態のマシュマロが発見されるよ!
でもパンに乗っければオシャレ再復活するから安心してね!
それじゃあ、またね!
「高評価」と「マシュマロ(お気に入り登録)」よろしく!
ハタンキュ~(挨拶)




