↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
25/48

第25話 破綻令嬢は没収された特級呪物をワンクリックで再召喚する

 このままじゃ王太子に2度目の追放を食らってしまう!


 タダ飯のため絶対にそれは避けたい。


「ほら! この謎の肉が詰まった二の腕! 二の腕触っていいから!」


 でも、腰を抜かした王太子は、私の二の腕に見向きもしてない。その奥——私の手に握られていた『あるもの』を見て、顔面を痙攣させた。


「あ……アア……ッ!」


 王太子の瞳孔がガン開きになる。

 あ、これ? 『業務用マヨネーズ(1kg)』見てる?


「そ、その白きドロドロ……あの酸味の効いた匂い……! 処刑台、雑草……! う、頭が……ッ!」


 あれ、もしかして、フラッシュバックしてる?

 

「あ、ああああッ! あの女、あの女が来る……ッ!」


 王太子はホラー映画の犠牲者のような顔で虚空を見つめ、カニのように口から泡を吹いてその場に気絶した。


 てか元婚約者がちょっと草食ったくらいで、そんなトラウマになる?

 肝っ玉の小さい王太子ね! イヤんなっちゃうわ!


「で、殿下が倒れられたぞ! 医療班! 医療班を呼べェェッ!!」


 会場がパニックに陥り、王宮の医療班が駆けつけてきた。

 医療班のリーダーは、私の手元にあるマヨネーズを見るなり血相を変えた。


「あ、あれは『特級呪物』ッ! 最強最悪の魔女、メリィナ・シロノワール・コマンタレブーが所持していた全てを喰らう邪のポーションだ!」


 え、なんか設定が増長してない?


「貴族の皆様、直ちに避難を!」

「ひぃぃぃっ! 特級呪物ぅぅぅ!?」

「逃げろォォォッ!!」


 悲鳴を上げて蜘蛛の子を散らすように逃げていく貴族たち。


 完全防護服を着た医療班が登場。長いトングと何重もの結界魔法を使い、私の手から慎重にマヨネーズを奪い取ると、鉛の箱に封印して厳重に回収していった。


 っておい!


「私のマヨネーズ……!」


 怒涛の展開に唖然としていたら持っていかれてしまった!

 ちくしょう、あれ500ポイントもするのに!


「ガッハッハッハ! なかなか面白い御仁ではないか!」


 初老の大柄な男性が、笑いながら歩み寄ってきた。

 ヤッコロと話してた騎士団長だ。


「騎士団長様ですわね。メシ子と申しますわ」


 立派なカーテシーを決める。


「おお! なんだ、無頼者かとおもったが、礼儀も嗜んでおるのか! ガハハ! ますます気に入った!」


 隣にいたヤッコロが満足気にうなずく。


「でしょう? 団長ならきっと気に入ると思いましたよ」


 お、ヤッコロ、私のことよく言ってくれてたのか。


 ──スッ


 そのとき、騎士団長がいきなり剣を抜いた。


「騎士団長、何を──ッ!」


 騎士団長が私を切り裂く。


 ──ズッバァァァーーーン!


 物理無効の副作用で、ドレスが派手に吹き飛んだ。


「おーっ! 本当に吹き飛んだぞ!」


 こいつ、頭おかしいんじゃないか?!

 物理無効だからって、いきなり斬りつけるやつがあるか!

 しかもポイントついてねぇじゃねえか! なんで害意ねぇんだよ!


「何すんだテメェェ! せめて殺す気で斬れ!」


 目からビームで猛抗議。


「団長! 謝って! 謝ってください!」


「がはは! すまんすまん! だが窮屈そうだったからな!」


「あ」


 ドレスがはじけ飛んだら、砂時計体型が元に戻ってる。

 なんだかお腹が空いてきたぞ。


「ここが我が死地と見つけたり」


 懐からマヨネーズを取り出し、飛竜肉にドバドバとかける。


「うひょー! この味この味!」

「がはは! 『特級呪物』がそんなにうまいのか!」

「いや、団長、あれはただの調味料です。せっかくの料理にまたそんなにかけて……」


 せっかくの料理?

 ヤッコロ、それは違うな。


「ヤッコロ、味覚というのは人それぞれ、千差万別なのですわ。だから食卓にお塩やコショウが用意されている」

「ん、あ、まあそうではあるが……」

「それが私にとってマヨネーズだった。そして、私は破綻舌(はたんたん)によって『これはマヨネーズをかけたほうがうまい』というのが直感的にわかるのですわ」

「そ、そうなのか。それは失礼した」


 いや無茶苦茶な理論だぞ。納得して謝んなよ。なんだよ破綻舌(はたんたん)って。


 そこで団長がガハハと豪快に笑う。


「だがまあ、わからんでもないな! 貴族の上品な舌に合わせてるせいか、パンチが足りんわな!」

「ええ! さすが団長様。わかっていらっしゃいますわ」


 私はマヨネーズがべっとりと絡んだ飛竜肉を口に運び、ゆっくりと咀嚼しながら偉そうに頷いた。


「この脂たっぷりのお肉を、上品に仕上げているのは素晴らしい技術ですわ。ただ、これじゃダメですわね。噛めば噛むほど臭みが出る、やっすいお肉特有の『アゴが疲れる感じ』が完全に消え去ってしまっていますわ」

「それは良いことなのではないか……?」


 ヤッコロが呆れたように言うが、私の舌はそんな上品さを求めていない。

 さらにドバドバと追いマヨネーズをしながら熱弁を振るう。


「いいえ。ヤッコロの家のヒゲ料理長なら、『噛み応え』を残したまま、脂の『溶ける感じ』を引き出していたはずですわ」

「……メシ子殿」


 ヤッコロが低い声で私の名を呼ぶ。料理長のこと思い出しちゃったかな?

 けど、語りモードに入った私は止まらない。

 ビシッとフォークを突きつける。


「王宮の筆頭料理人が作ったと聞いて期待してきましたけれど、正直、ヒゲ料理長のほうが数倍うわてって感じですわね。このお肉には、食材に対する敬意が感じられませんわ!」

「メシ子殿、メシ子殿~」


 ヤッコロが間延びした声で私を呼ぶ。


「なんですの。珍しく私がまともに食の品評をしているというのに……」

「後ろを見て、後ろ」

「後ろ?」


 私が不満げに振り返ると、背後に凄まじい殺気を放つ巨大な影が立っていた。

 見上げるほど巨体で、コック帽を被った筋骨隆々の男。手には血まみれの肉切り包丁が握られている。


「……今、なんと抜かした、小娘」

「えーと、ヤッコロ、この方ってもしかして……」

「ああ、宮廷筆頭料理人殿だ」


 どうやらこの巨漢コックが、王宮の料理のトップらしい。

 饒舌にディスっちゃったよ! もっと早くに止めろよ!


「オレよりアイツのほうが上手だと言ったな?」


 ヤッコロが小声で言ってくる。


「メシ子殿、謝るんだ。我が家の料理長と、筆頭料理人殿はライバルで、犬猿の仲。無用なトラブルに巻き込まれるぞ」

「トラブル……?」


 トラブルと言ったな。

 それはつまり、害意判定によるポイントゲットの予兆!


 私は胸を張って筆頭料理人に言い返す。


「あら。事実を申したまでですわ。このマヨネーズなら、同じお肉でもっとソウルフルな料理を作れますわよ」

「ほう。そこまで言うなら、貴様のそのマヨネーズとやらでもっとソウルフルな料理を作ってもらおうじゃないか」


 そう言って、筆頭料理人は包丁を私に突きつける。


 ふっ。同じお肉でもっとソウルフルな料理と来たか。同じお肉でもっとソウルフルな料理をね……


「えっ、同じお肉でもっとソウルフルな料理を?!」

「今自分で言ったよな?」

「ソウルフルって何……?」

「自分で言ったよな……?」


 こうして、筆頭料理人と私の料理対決の火ぶたが落とされた。


***


【今日の破綻飯ハック】


 やあみんな! メシ子だよ!

 人類の歴史はマヨネーズの歴史って誰かが言ってたよ!


 今日は久々の破綻飯だよ!


 テッテレー!


★No.025『味覚の完全隠滅(全消しマヨネーズ)』

 材料: 値引きシールが貼られた肉、めちゃくちゃ濃いタレ、マヨ

 効果: やっすい肉をおいしく食べられる

 代償: 胃もたれ、素材への敬意の喪失

 破綻度: ★☆☆☆☆(完全有用情報)


 スーパーで見つけた「元値が安いうえに半額シールが貼ってある肉」。普通に焼いたら死ぬほど獣臭くて絶望すること、あるよね!


 そんな時は、めちゃくちゃ濃いタレで親の仇のように煮込んで、最後にマヨネーズをドバドバかけよう! 臭みもクソもなくなるよ!


 でも期限内には食べろよ!


 それじゃあ、またね!


 「高評価」と「追いマヨ(お気に入り登録)」よろしく!


 ハタンキュ~(挨拶)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。