↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
24/48

第24話 破綻令嬢はタダ飯のために二の腕を差し出す

 私が四つん這いで目からビームを撒き散らしている、その地獄絵図のド真ん中。


 私を冤罪で追放した王太子が立っていた。


 王太子は床に這いつくばる私を無言で見下ろし、それから視線を上げてヤッコロとギン子を見た。


「おい! ロシュフォールの女! S級冒険者はどこだ!」


 ヤッコロが気まずそうな顔でおずおずと言い出す。


「あ、あの、殿下、目の前の……」


「ああ」


 王太子は納得したように頷くと、優雅に食事をしていたギン子へと向き直った。


「この女が従魔の銀雪竜か? ふん、下等な獣かと思ったが、なかなかの美しさだ。聞けば最高位の竜種と言うではないか。さすがの余も見とれたぞ」


 ギン子褒められてる。いやぁ、鼻が高いね。


「して、S級冒険者の……メシ子とやらはどこだ。このような従魔の主なのだ。そいつも美麗なのだろう?」


 あら、いやだわ。


「殿下、その……」


 ヤッコロが否定しようとするが、王太子は構わず続ける。


「此度の功績だ。未だ余に挨拶がない無礼も許そう。場合によっては側室として迎えてやらんでもない」


 キャッ、復縁? 心の準備が……


 ヤッコロがチラリと私を見る。王太子がその視線を追い、再び床にいる私を侮蔑の表情で見下ろした。


「ところで、この無様な魔獣はなんだ?」


 魔獣って言われた。


「S級冒険者の従魔か? この度の功績がなければ、このような汚物、即座につまみだしていたところだぞ!」


 おいおい殿下。


 いくら四つん這いで頭にパンツを被って目からビームを出しているとはいえ、元婚約者に向かって汚物とはあんまりじゃないか。


「い、いえ、殿下……」


 ヤッコロが胃のあたりを強く押さえながら、消え入りそうな声で真実を口にする。


「その、足元にいるのが、S級冒険者のメシ子殿です」

「…………は?」


 王太子の時間が止まった。


 私はゆっくりと顔を上げ、四つん這いのまま愛想笑いを浮かべた。


「ドーモ、S級冒険者のメシ子ですわ」

「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 王太子の絶叫が会場に響き渡った。


「これがS級冒険者だと!? 冗談も大概にしろ! 頭に下着を被り、床を這い回る醜悪な魔獣ではないか! こんな正気を疑う汚物が、我が国の最高戦力だと言うのか!」


 親の仇のように罵倒してくる。

 いくらなんでも言いすぎでしょ。


「なによ! 失礼しちゃうわね!」


 ——ペカーッ!!


 私は抗議の意を込め、目からビームを放つ。対向車のハイビーム並みに眩しいやつを食らえ!


「ま、眩しい! 何をする! 余を誰だと思っている!」

「殿下ですわよね。よーく知ってますわ。ホクロの位置までね!」


——ペカーッ! ペカーッ!!


 いや、ほんとはホクロの位置なんて知らんけど、元婚約者ってことでそれっぽいセリフ言ってみた。


「食らえっ! なんか高そうな自転車とすれ違うときに、無駄にピカピカ眩しいライト!」


——ペカペカペカペカペカペカッ!


 四つん這いで王太子の足元ににじり寄りながら、下から顔面に向けて執拗にハイビームをパッシングし続けた。


「やめろっ! おい!」


 やめるか! てかお前、私を不当裁判で3回も処刑してんだぞ! こんくらいされて当然だわ! 

 

 ……あれ? でもそのおかげでポイントゲットしたし、むしろありがたかったかも?


「感謝のハイビーム!」

「ぐわーっ!」


 王太子は目を両手で抑えてのたうち回りながら叫んだ。


「目がッ! 目がぁぁぁッ! 誰か! 誰かこいつをつまみだせぇぇぇ!」


(げぇっ!? つまみ出される!?)


 それはマズい。


 まだタッパー(ダンボール製)に飛竜肉のローストを詰めていないのに!


 ここで追い出されたら、またヤッコロの丁寧和定食生活になってしまう!


 焦った私は、咄嗟に立ち上がる。


 ご飯を食べてなぜか異常にバルクアップした自分の『二の腕』を見る。これだ。これしかない!


「ちょ、お待ちになって! ほら! この二の腕! 触っていいですわよ! 特別に触っていいから!」

「ヒィィィィィッ!? 来るなバケモノォォォッ!!」


 謎の肉が詰まった異形の二の腕を押し付けられ、王太子はついに腰を抜かして床に尻餅をついた。


 タダ飯を死守するための私の捨て身の営業は、どうやら逆効果だったらしい。


***


【今日の破綻ライフハック】


 やあみんな! メシ子だよ!

 目からビームってなんでこんなに心躍るんだろうね!


 今日のライフハックはこれ!


 テッテレー!


★No.024『完全オフの時に知り合いに会ったら怪異になりきろう』

 材料: 髪ボサボサの寝癖、ヨレヨレの部屋着、捨て去った羞恥心

 効果: 「知り合い」という認識を「怪異」へと上書きできる

 代償: 都市伝説になってしまう

 破綻度: ★★★☆☆(事実を知るのは私だけ)


 すっぴん&ボロ着で買い出し中、運悪く知り合いに見つかりそうになったら、瞬時に怪異になりきろう!


 手足をデタラメな方向にガクガク動かしながら、「クゥ……ネル……メシ……」と虚空を見つめて呟き続けるんだ!


 「知り合いにだらしない姿を見られた」事実は消え、「ヤバいバケモノに遭遇した」という都市伝説だけが残るよ!


 それじゃあ、またね!


 「高評価」と「クゥ……ネル……メシ(お気に入り登録)」よろしく!


 ハタンキュ~(挨拶)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。