↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
23/48

第23話 破綻令嬢はタダ飯のために目からビームを撃つ

 王宮の祝宴会場。


 きらびやかなシャンデリアが天井で輝き、集まった貴族たちが優雅にグラスを傾けている。


 そんな華やかな場に、私たちS級冒険者パーティが足を踏み入れた瞬間、会場の空気がピーンと張り詰めた。


 先頭を歩くのはヤッコロだ。


 公爵令嬢である彼女は、凛とした顔立ちに完璧なAラインのドレスを纏い、隙のない優雅な歩みを進めている。さすがは本物の令嬢だ。


「おお……見ろ、あの気高く美しい令嬢を」

「なんと完璧なAラインのドレスだ。公爵家のヤツネ嬢だな」


 周囲の貴族たちが、感嘆の声を漏らす。


 次に続くのはギン子。


 長身のモデル体型を活かしたタイトなマーメイドドレスを完璧に着こなしている。頭の氷の角も、前衛的なティアラのようだ。


「あちらの銀髪の美女は誰だ?」

「あのマーメイドドレスの着こなし……異国の王族か? 美しすぎる……!」


 男たちが釘付けになり、ざわめきが広がる。


 そしてトリは私。元公爵令嬢であり王太子の婚約者、メシ子である。


 極限まで締め上げられた異形の砂時計体型に、ボリューミーなプリンセスドレス。


 そして頭には、両目の部分だけ穴を開けた『メシ子のネーム入り純白ドロワーズ』(ヤッコロの下着は取り上げられた)をスッポリと被っている。


「な、なんだあいつは……!?」

「砂時計みたいな異形で……あ、頭に下着を被っているぞ……!」


(やっぱりこの格好、ダメじゃん?)


 なんかヤッコロに「美しい! 最高の曲線美だ!」って絶賛されていい気になってたけど、普通にありえないでしょ私の恰好。


 絶対につまみ出される。

 私の飛竜肉のローストが!


 私が冷や汗を流した、その時。


「な……なんという完璧なドレスラインだ……!」

「えっ?」

「極限まで絞られたウエストから広がる優美なドレス。そして、頭部から生える二つの線……! 計算し尽くされた美の調和……素晴らしい!」


 初老の高位貴族の絶賛に、周囲の貴族たちも「これが最先端のトレンドか」と次々に頷き始めた。


(正気かこの国)


 まあ、つまみ出されないなら好都合だ。


 私は貴族たちの社交など完全に無視し、一直線にビュッフェコーナーへと向かった。


 そこには、A5ランク飛竜肉の極厚ローストの山がそびえ立っていた。


「素晴らしいですわ!」


 私は皿に肉を山盛りにし、一心不乱に食らいつき始めた。


 砂時計体型に締め付けられているのに、なぜか普通に食べられる。


 よく見ると、お腹以外の別の部分(主に二の腕)がリアルタイムで膨らんでいってる。無茶苦茶マッチョみたいになってきた。


(どういう原理だ)


 すげーなコルセット締め士のゴンザレス伊東。


 私が異形化しながらタダ飯を堪能していると、会場の男たちが、謎の美女三人組(うち一人は頭パンツ)を口説こうと様子をうかがい始めた。


 一人の若い貴族がヤッコロに近づこうとする。


 だが、ヤッコロは会場の隅にいた初老の騎士団長を見つけるなり、目を輝かせて駆け寄ってしまった。


「団長殿! 先日の『第六十二回・王都騎士道選手権』の決勝戦についてですが……!」

「おおヤツネ! あの『捨て猫が剣で雨宿りしだしたので突きの構えのまま6時間経過』のエピソード、まさか1番手優勝とはな!」

「ええ! そのあと熱で寝込みながら『ノブレス・オブリージュ……』と三日三晩うなされたというオチのキレは最高でした!」


 謎の騎士道精神を語り合う変な選手権の感想戦が始まり、ナンパ男が入り込む隙は1ミリもなかった。


 一方、別のキザな男が、マーメイドドレス姿で上品に料理を味わっているギン子に近づいた。


「麗しきレディ、私と一杯——」

「ん?」


 ギン子が振り返る。

 キザな男はギン子の美貌に当てられたように、恭しく手を取り、ひざまずいて手の甲に口付けをしようとした。


 ——ピキィィィッ!!


 キザな男が、ひざまずいた姿勢のままカチコチの氷像と化した。


「あれ? ギン子、冷気を抑える『陽だまりの腕輪』はどうしましたの?」

「ドレスのシルエットに合わぬからと、ヤッコロに外されたのである。代わりに『陽だまりの腹巻・極薄』をしているのだが……薄すぎて効果は落ちるようだな」

「腹巻って。いよいよお爺ちゃんじゃありませんこと?」


 ヤッコロのドレスラインへの執着、もはや病気である。


 私は肉を咀嚼しながら、ため息をついた。


「仕方ありませんわね」


 私は頭に被ったドロワーズの穴から『光魔法のビーム』を放った。


 ——ペカーッ!!


 まばゆい熱線のレーザーが、氷像となった男を包み込む。

 男の氷はみるみるうちに溶けていく。


 溶けた氷で濡れないよう、床も乾かしておかないと。


「はっ!? 私はいったい……ヒィッ!?」


 解凍されて目を覚ましたキザな男が、私とギン子を見て悲鳴を上げる。


「ば、化け物ォォォッ!!」


 男は悲鳴を上げて逃げ出していった。


 助けてやったのに、失礼なやつ!


 そう思っていると、一連の流れを見ていた参加者たちがざわつき出した。

 小さい悲鳴を上げて逃げてく貴族もいる。


『周囲からの「多大なる恐れ」を検知。ハタゾンポイントを50ポイント獲得しました』


 おっ!? マジ!?


 今ならダメージを受けなくても「恐れ」の判定でポイントが稼げるじゃん!!


 完全に味をしめた。


 タダ飯を一旦置き、私はドレス姿のまま床に四つん這いになった。


「ふひひひひひひ……」


 不気味な笑い声を漏らしながら、四つん這いでカサカサと這い回り、ドロワーズの穴から「ペカーッ! ペカーッ!」とビームを放ちながら会場を練り歩く。


「ヒィィィッ!!」

「な、なんだあの光る頭パンツの異形はァァァッ!!」


『ハタゾンポイントを50P獲得しました』

『ハタゾンポイントを50P獲得しました』


 ウハウハじゃん!


 社会的な尊厳はガンガン下がっている気はするけど、背に腹は代えられない。


 だが、私が四つん這いでビームを撒き散らしながら貴族たちを恐怖のどん底に陥れている、その地獄絵図のド真ん中に、聞き覚えのある声が響いた。


「騒がしいな。何事だ?」


 床に這いつくばったまま見上げると。


 そこには、見事な金髪と豪奢な礼服に身を包んだ男が立っていた。


「お、王太子殿下……」


 それは、私を王都から追放した、王太子その人だった。


 まさかの、四つん這いで目からビームを出した状態で再会。


 一体、どうなっちゃうのー?!


***


【今日の破綻ライフハック】


 やあみんな! メシ子だよ!

 スマホのバッテリーが半日もたないよ!


 今日のライフハックはこれ!


 テッテレー!


★No.023『闇夜のコンタクト捜索隊』

 材料: 散らかったゴミの山、落としたコンタクト、スマホのライト

 効果: 運が良ければ見つかる

 代償: 膝の黒ずみ、虚しさ

 破綻度: ★★★☆☆(結局見つからない)


 足の踏み場もない汚部屋でコンタクトを落としたら、四つん這いで探すしかないよね!


 電気をつければいいのに、スイッチまで行くのが面倒でスマホのライトだけで照らす姿は、まさに闇夜の怪物!


 途中で電池が切れて終わるまでがセットだよ!


 それじゃあ、またね!


 「高評価」と「ホコリまみれの指先(お気に入り登録)」よろしく!


 ハタンキュ~(挨拶)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。