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「「「おかえり~」」」
「さぁさぁ、頑張ったでしょう会をするわよ」
店の皆に囲まれた母さんが、店の厨房の前に立っていた。
「今夜は店を閉めたから、スタッフも全員で参加だ!」
父さんのその一言で、スタッフ全員が歓声を上げた。
「さぁ、料理を作ろう! お前も手伝え。皆、何が食べたい?」
トム伯父さんがそう言うと、ホールスタッフから塩釜焼きだの、今回の料理大会で作ったパイナップルケーキが食べたいだの、色んなリクエストがあった。
マルタ伯母さんやナスカも手伝って、できるだけ皆のリクエストには答えた。
もちろん私も。
まずは肉料理。定番のから揚げ!
インゲンと人参を鶏肉で包んだチキンロールとか。
慣れていない人でも食べれるように、照り焼き味以外にも塩コショウで味付けたものも用意しちゃうよ。
ホールの担当総出で、全員が一緒に座れるよう、テーブルを動かしている。
ユーリも手伝っている。
「大分揃ったな。まぁ、これくらいあれば良いだろう」
伯父さんがホ―ルに並べられた色んな料理を満足そうに見て頷いた。
うん。長いテーブル3つに所せましと並べられた料理や飲み物は圧巻!
「それにしてもよく店を閉められたね?」
そう訊ねると、伯母さんが「ユーリから今日が最終日だって前に教えてもらってたからね。ギジェルモが張り切って予約の調整をしてたんだよ」と教えてくれた。
ホテルの方ができたから、入っていた予約をホテルに回したらしい。もともと、ホテルができてからは、開業当時ほどは事前予約でギュウギュウっていう状態からは解放されていたからねぇ。
「で、給仕の皆も一度座ったら、もう立ちたくないだろう? だからビュッフェにしたんだよ」
ビュッフェにしたのは、マルタ伯母さんの意見だったらしい。
サラダも二種類。レタスにトマトや玉ねぎ、オリーブなんかを散らしたものと、大根の千切りを油で揚げたものを散らしたもの。
お酒も、瓶やグラスに注いだ形で並べて、長テーブル1台丸々飲み物にあててある。
ウチの代名詞の一つでもある色とりどりのカクテルまで並べられている。
飾り切りのフルーツや色の付いた塩がグラスの縁についていたりと、カクテルが並んでいるだけで華やかさが違う!
一通り料理が終ると、全員で席に着く。
「今日は惜しくも優勝を逃したけれど、その優勝者に堂々と勝ったこと! そして、その優勝者もウチのグループの料理長ということで、二重にめでたい! ということで、頑張ったでしょう会を始める!」
父さんの一言で皆、カクテルで乾杯をした。
何から食べよう。
あ、ユーリはチキンロールね。
う~ん、私は白身魚のポワレにしとこう。
「それにしても、良く今日が最終日って前に分かったね」
「ん? ユーリ君は、出題の傾向まで分かってたみたいだぞ。だから昨日、ペペ君を連れて、ウチにパイナップルを融通して欲しいって……」
父さんのその一言でギロリとユーリを見た。
ユーリは何食わぬ顔で、お酒を飲んでいる。
コップを空にしてから、漸く悪い笑みを浮かべてこちらを見るユーリ。
「ウチは新聞社だぞ。城で話されることはある程度取材してるさぁ」
「むむむ」
「だけど、お前も出場してるからな。情報が漏れて勝ったって言わせたくない。だから、記事にもせず、お前にも知らせずだ。そして、会場にも一緒に行ってない」
「ん?」
ユーリの言いたいことが分からない。眉を寄せて見つめると、仕方なさそうに説明してくれた。
「会場まで応援に行くと、城側のやつとか、ペペが、オレが何かお前に漏らしてるかもと思うかもわからん。オレの姿が目に入らなければ、そんなこと思いつきもしないかもしれないだろう? だから、近づかずにここで応援してた」
「ふ~ん」
「でも、大会は楽しかっただろう?」
「うん! 色んな料理人が居てね。あ、そうそう。ルイージさんが腕を上げてたよ。ウチの料理をめっちゃ研究しているみたいだった」
「あの、ルイージさんがねぇ……」
父さんがポツリと零した。
「ふふふ。最新の調理法とか、ウチのやり方を使って料理してたよ」
「噂話だけじゃなく、ちゃんと料理も頑張ってたんだなぁ」
父さん、それ結構酷いと思うけど……。
でも、父さんはモンテベルデ伯爵家のことは良い思い出らしく、懐かしそうな顔になってる。
「しかし、ペペもイベントを上手く立ち上げるようになったな」
「あ、それ、私も思った」
「なんか学園時代を思い出すよ」
「だねぇ」
夫婦で話しながら料理を口に頬張る。
あっちの方ではナスカが、周りに皆に揶揄われている。
「ちゃんと役に立ってましたよぉ~!」
「俺もアシスタントしたかったなぁ」
「あ、それ、私も」
「ふふふ~ん。お菓子を作ることも何回かあったから、やっぱり私で良かったんですよ!」
ナスカが胸を張る。
「そりゃぁ、お菓子はナスカ先輩が上手ですけどぉ……」
「次回の大会までには、俺もケーキを作れるようになって、アシスタントになるっ!」
「へん! なら、私はもっとケーキ作りを上手になって、誰にもアシスタントの地位は渡しませんよぉ~」
父さんや母さんも楽しそう。
お店が休みだからこそ、皆でゆったりと美味しいご飯と会話を楽しめる。
こういう雰囲気、ウチは元あややクラブの面々がしょっちゅう遊びに来るので頻繁にあるけど、お店をやっている父さんたちにはめったに無い機会だと思う。
その証拠に、皆とても楽しそうだし、中には羽目を外しているのもいる。従姉のサブリナたちね。
彼女たちは二人共、結婚しているのに店は続けてくれているのだ。
ウチの給料は結構高額なので、旦那様の理解を得ることができているとかなんとか……。
今回の大会で、周りの料理人の腕や発想がどんどん良くなってきているのが分かった。
ウチの料理方法もある程度、巷に広まっているしね。
それに引き換え私は、今は、ホテルの仕事を少なめにしているから、あまり積極的に料理に関っていない。
これからはもう少しホテルの仕事を増やして、料理も色々切磋琢磨して新メニューとか作らないと、取り残されちゃいそうだ。
これもユーリへの相談案件になりそう……。




