フローリストガーデンを代表して
やった! コース料理ならウチの独壇場だ!
あっちのチームはコース料理創始者のお嬢様がいらっしゃるけど、どうみてもお嬢様より年上の男ばかりだから、お嬢様の意見は聞いてもらえないだろう。
これは、俺にとって最大の見せ場になる!
「皆さん! コース料理はウチの店が発祥だ。料理担当の割り振りと各料理の方向性を私に決めさせて欲しいんだが……」
「ああ、フローリストガーデンさんに任せた方が審査員が望むモノができそうだな。俺は賛成だ」
「あたいも賛成だよ。コース料理は昨日食べたけど、まだ良く分かってないんだ」
「俺も賛成だ」
「まぁ、実際に作るものについては自分で決めさせてもらえるなら、異存はない」
皆、賛成してくれた。
「もちろん、何を作るかは各自が決めてくれて良い。でも、まず、コース料理の意味について説明させてくれ」
皆が頷く。
「最初の前菜は一口サイズの料理を3種類用意する。これを担当する者は3種類の料理を決められた時間内に作らないといけないので、色んな種類の料理が作れて、味もそれぞれ違いを出せる人が作る必要があるんだ。で、コース料理の最初の料理になるので、客はこの料理で、店の味を知り、格付けをある程度するんだ」
「へぇ」
「結構、大変な感じだな」
「で、次のスープは胃を整える役目だ」
「なら、あまり具材が多くない方がいいのか?」
「小さく刻んだり、潰してしまうなら問題はない。でも、消化しやすいものが良いんだ」
「勉強になるわ~」
「次のサラダは口の中をさっぱりさせる役目だ。前菜で食欲を沸かせ、スープで胃腸を整え、ガツンとくるメインの前にちょっとだけ準備させるっていう意味がある」
「「へぇ~」」
「コース料理って良く考えられてるんだな」
無言で頷くと、皆も頷いた。
「メイン料理はコースの花形だ。肉だったり、魚だったり、そこは自由だ。で、ここで満足させれば、コース料理は半分成功したようなものだ」
「半分?」
「そう。だって客が最後に食べるのは甘いデザートだ。最後に食べたものが一番記憶に残るから半分」
「へぇぇ」
「本当に良く考えられてる!」
お嬢様が考えた方法だけど、我が事のように誇らしく、ついつい胸を張ってしまう。
「なら、デザートが一番大事?」
「いや。全部、大事なんだ。そして本当の意味で大事なのは、この5つの料理が一本の線で繋がっていることなんだ」
「「「?」」」
「例えば、全部の料理が塩味だけだと、最後には飽きるだろう? だから、塩味だったり、ソースを使ったり、料理法も同じ事が言える。焼く料理ばっかりだと煮た料理も食べたくなるだろう?」
「なるほど!」
「じゃあ、味付けの大体の方法をここで話し合うってことか?」
「できたら、そうさせてもらいたい。そして主な食材と料理方法も」
「そう考えたら、この競技、あんたがこっち側に居てくれて俺たちは助かったよ」
そう言われると、知らず知らずのうちに胸を張ってしまう。
「じゃあ、誰がどれを担当するか先に決めようぜ!」
そうモンテベルデ伯爵家の料理長に言われ、皆で話し合った。
結局はこんな風になった。
前菜 『リスの宿』 焼き物、煮物、そしてそれ以外で計3種
スープ 『黄金の麦亭』 鶏と夏野菜のスープ
サラダ シエロアスール子爵家 白アスパラガスと高級野菜の胡瓜主体
メイン モンテベルデ伯爵家 仔羊の網脂包み揚げ
デザート 俺 シュークリーム
味付けも直前の料理と重ならないようにお互いで話し合って決めてもらった。
『リスの宿』は前回優勝しただけあって、三種類の料理なんて心配していない。
スープは鶏でしっかり出汁を取れば十分戦える。
サラダは子爵家。温室でしか採れない胡瓜という高級野菜を使っているし、貴族飯を作り慣れているなら盛り付けは心配いらないだろう。
メインはちょっと凄い。
お嬢様が以前、暮らしていた貴族家だと聞いている。
網脂なんてものを使うなんて聞いたこともない。
ウチの店以外では、まだまだ新しい料理法の揚げる料理を作るという意気込み。
凄い料理人だと思う。
そういう家の賄いを食べて育ったから、お嬢様はあれ程の料理の天才なのかもしれない。
どんなものが出来上がるのか楽しみなのと同時に、ちょっと怖い。
とてつもないライバルになりそうだ。
さて、俺の担当をちゃんとやり遂げないとだな。
シュークリームはウチの店ではどこでも出しているけれど、その作り方はウチの系列の店しか知らない。
シュークリームなら発酵はいらないから、時間との勝負になるが、何とか間に合う。
だから、俺は自分の料理にだけ集中すれば良い。
如何にウチの店の人気商品をそのまんまの味で提供できるかどうかが勝負!
オーブンの温度。
粉の量。
卵は何個使う?
頭の中でもう一度だけ手順をなぞる。
――絶対に失敗はできない。
お嬢様。勝負に情けは余計なもの。全力で行かせてもらいますよ‼




