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 他の参加者の作るものを見て前菜を決める。

 でも、時間を掛けて仕込まなくてはいけない料理も作りたい。

 簡単な料理だけでなく手の込んだ料理、その辺も審査員に見せておいた方が、万一こちらのグループが負けた時、生き残るためには必要だと思う。


「鶏の肝臓が欲しいんですけど……」

「肝臓かい? なら、こっちだよ」

 テント内の食材担当の若い男性が奥の台を指し示した。


 冷蔵庫に入れてあるわけではないけれど、恐らく今朝しめられた鶏のだろう。

 そして数は3つ。

 鑑定スキルで一つ一つをじっくりと見る。

 

『鶏の肝臓

今朝、処理されたもの。

血液が少し残っている。』


『鶏の肝臓』

今朝、処理されたもの

脂質が多く、一部酸化が始まっている』

 ん? これは今朝しめたものじゃないのかな?


『鶏の肝臓

今朝、処理されたもの。

脂質は多いが、まだ酸化は始まっていない』


 う~ん、この中のだと、最後のが処理しやすいかな?

 担当の男性が真ん中のレバーに手を伸ばしたのを見て、慌てて口を開く。

「すみません、この左のをお願いします」

「は~い」

 男性が鶏のレバーを葉っぱにくるんで渡してくれた。


「ナスカ、時間が勝負なの。血管や血を残さないように洗って、たっぷりの牛乳に漬けてちょうだい。その間私は食材を選ぶから」

「はい、お嬢様」

「それが終わったら、またこっちへ来てね。でも、レバーの掃除は大変だから、まずはちゃんと掃除してからにして。時間が掛かってもいいから」

「はい」

 そう言いながら持っていた籠を私に渡し、レバーを手に、ナスカは調理台の方へ戻って行った。


 前菜の一つは鶏のレバーパテだ。

 こってりとした旨味で審査員にアピールだ。

 ただ、続く料理が濃い味ならば、バゲットやクラッカーに載せて味の軽重を調整する必要が出るだろう。


 レバーパテは臭みを残さない!

 これが一番大事。

 だから、他の2品より先に、臭み消しのための食材を見て回る。

 ブラックペッパー、ローリエ、ブランデー、バターに生クリーム……

 あっ! スープストックがいる!

 先ほどの肉売り場で鶏がらを手に入れる。

 ブーケガルニの材料や、野菜くず欲しさに必ずアミューズ作りに使いそうな野菜も選ぶ。

 こっちも時間が掛かるので、直ぐに調理場台へ戻る。


「お嬢様?」

 籠を手に、調理台に戻って来た私を見て、ナスカが怪訝な顔をする。

「ふふふ。スープストックが必要なのを忘れていたの」

「ああ、鶏ガラですね。私がやっておきます」

 流石ナスカ。店で毎日作っているのを見たり、手伝ったりしていたから、安心して任せられる。

「じゃあ、お願い。私は他の食材も見てきますね」

「はい! 時間短縮の為に少な目の水で炊きますね」

 すごい! 今回の料理大会でナスカがちゃんと戦略を考えるところまで成長している!

 これができるなら、パティシエだけじゃなく、どこかの店舗のシェフたる人材になれる。

 もし、今回の大会で負けたとしても、これはウチにとって大きな財産だ。

 人材だけは直ぐに育たない。

 それがこういう大会がきっかけでも大きく成長してくれるのなら、ありがたい限りだよ。


 スズキはフリッターっぽくして、彩野菜とマリネにしても良いよね。

 そうなると最後は野菜料理かぁ……。

 レバーパテは落ち着いたピンクベージュ。スズキはフリッターマリネにするならパプリカで赤、黄色、緑と玉ねぎの白でカラフルになる。

 野菜は……トマト!

 まだ出始めだからちょっと固いはず。

 今回は全ての調理台に小さなオーブンが付いている。まぁ、原始的なやつなんだけどね。

 なら、トマトをカップ代わりにチーズと混ぜてトマトグラタンなんてどう?

 いいかもしれない。


 今回の競技は料理を提供する時の皿が予め決められていて、こちらの自由にはならない。

 前菜は四角い白の深皿が3つ繋がっている磁器だ。

 ある程度の深さがあるのだが、皿そのものの大きさはそれ程大きくはない。

 一つ一つの料理は小さいものでないといけないが、小さ目のトマトなら載るはず。

 いや、トマト一つがデーンと小皿に載ると、そればかりが目立っちゃいそう。

 なら、トマトは最初から輪切りにして上に軽くチーズを載せてオーブンで焼くのが綺麗?

 むむむ。味が淡泊になりそう。

 茄子の輪切りとトマトの輪切り、少しのひき肉を層になるように重ねて、一番上にチーズ?

 あ、それ綺麗で美味しいかも!

 トマト味は美味しいけれど、スープがトマト味のスープだと被っちゃうから、ちょっとウチのスープが何味になるのか確かめないと!


 ずらっと並んだ調理台の内、『双頭の鷲』さんが料理しているところへ近づいてみた。

「うっす! なんだい?」

「あのぅ……。スープの味付けは何でされますか?」

「味付けぇ? う~ん、塩と胡椒! この大会では胡椒使い放題だからな!」

 どうやらトマトや牛乳を使う感じではなさそうだ。

「そうですか。教えてくれてありがとうございます」

「まぁ、同じグループだからな!」

 

 じんわりと笑みが浮かぶ。

 単純な味のスープなら、こちらはソース使い放題で問題ない!

 一応、ハリアット子爵家の担当するメインが揚げ物かどうか気になっていたんだけれど、離れた所からチラっと見てみた。今必死で練っているのは、パイ生地なんだと思う。

 なら、前菜で揚げ物があっても問題ないね。


 パテ用の玉ねぎやにんにくをみじん切りにしている間に、言いつけたことを一通り終わらせたナスカが、スズキの下処理を始めた。

 本当に、この大会が始まってから、受け身だけじゃなく、自分で何ができるかを考えるようになってくれている。

 心強いよ、ナスカ!

 さて、作るものが決まったから、ここからは手順の勝負だね! やるぞー!

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