④
学園での生活にもだいぶ慣れてきた頃。
リリアーナは数人の令嬢たちに呼び止められた。
「ベルナール嬢、少しよろしいかしら」
「はい?」
何だろうと思いながら振り返る。そこにいたのは同じ学年の令嬢たちだった。
彼女たちは少し困ったような顔をしていた。
「以前から少し気になっていたのですけれど……」
「何ですか?」
「聖女様ともあろう方が、そのような振る舞いをされるのはいかがなものかと……」
「……え?」
告げられた内容に目を瞬く。
「えっと、そのような振る舞いって何ですか?」
「例えば、殿方と話される際に距離が近すぎますわ」
「それに、殿方のお名前を気安く呼ばれるのも……」
「先日のお茶会でも、あのような持ち方では――」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
次々と指摘され、リリアーナは思わず声を上げた。
「どうして私がそんなこと言われなくちゃいけないの?」
「お気を悪くされたなら、ごめんなさいね。責めているわけではありませんわ」
「聖女様として、そして貴族令嬢として、相応しい振る舞いをしていただきたいだけなのです」
「そうですわ。私たちも、同じ学園に通う者として心配しているのです」
令嬢たちの言葉はどれも真剣だった。声を荒げている訳ではない。睨みつけているわけでもない。困ったように言っている。けれどリリアーナは納得できなかった。
せっかく仲良くなった友人たちと話して何が悪いのだろう。名前で呼び合うことの何がいけないのだろう。前世の記憶を持つ自分からすれば、どれもたいしたことではない。それなのに、よってたかって好き勝手にいう令嬢たちの方が信じられなかった。
「……ひどい」
リリアーナは唇を尖らせる。まるで自分が悪いと言われているようだった。
結局、その場は涙ぐんで俯いたリリアーナにそれ以上言うことが出来なくなったのか、令嬢たちはリリアーナから離れて行く。
その後、リリアーナはすぐにアレクシスのもとへ向かった。
「アレクシス様!」
「ベルナール嬢。……以前も告げたと思うけれど、私を名前で呼ぶのはやめてもらえないだろうか」
「そんなことより、令嬢たちがひどいんです!」
「……どうしたんだい?」
はあ、と溜め息を吐くアレクシスが聞く姿勢を取ってくれたことを確認して、リリアーナは先ほどの出来事を話す。
そうして、それを聞き終えたアレクシスは。
「……彼女たちは、何か間違ったことを言ったのか?」
「え?」
思いもよらない返答にリリアーナは固まった。
何で? と思う。どうしてアレクシスは「それは酷いね」と言ってくれないのだろう。そのことが不満だった。
それに。
「だって、私は何も悪いことしてません!」
「……そうか」
アレクシスは少し考えるように沈黙する。それから、考えがまとまったのか、リリアーナを真っすぐに見て口を開いた。
「だが、彼女たちが言ったことは貴族令嬢としては当然のことだと思う。聖女であることと、貴族社会で好き勝手に振る舞うことは別の話だ。君は聖女としての教育は受けてきたのだろう?」
「……はい」
「ならば、貴族令嬢として必要な教育を受ければいい」
あまりにもあっさりと言われ、リリアーナは言葉を失った。
「もし君が望むなら、教師に頼んで特別にマナー講座を受けられるよう手配しよう」
「マナー講座……?」
「ああ。礼儀作法や社交の場での振る舞いなど、一通り学べるようにしてもらう」
アレクシスは穏やかに告げる。
令嬢たちに怒っている様子はない。ましてや叱ってくれる気配もなかった。
自分が望んでいるのは、そんなマナー講座じゃないのに。「大丈夫?」と心配して欲しかった。令嬢たちを叱って欲しかった。それなのに、全く見当違いな行動をするアレクシスに思わず不貞腐れた表情になってしまう。
「……でも」
「嫌か?」
「……いえ、嫌という訳じゃ」
「ならば、受けてみるといい。知らないことを恥じる必要はない。これから学べばいいのだから」
そう言ってアレクシスは微笑んだ。優しい笑顔だった。
けれど、やはり期待していた言葉ではない。
これはもしかしたら、好感度が足りないのかもしれない。だからアレクシスは自分の味方になってくれないのだろう。そう思えば、何とか納得できる気がした。
「……分かりました」
渋々、リリアーナは頷く。
アレクシスはリリアーナを否定したわけではない。ただ、間違っていることは間違っていると、皇太子として当たり前のことを言っただけである。
そのことに、リリアーナは気付いていなかった。
◇
それからというもの、リリアーナは何かある度にアレクシスのもとを訪れるようになった。
「アレクシス様、今日も令嬢たちに嫌味を言われました!」
「ベルナール嬢。再三告げていると思うが、私の名前は呼ばないでくれ」
「『聖女様なら、もう少し慎ましくなさった方がよろしいのでは?』って! 酷いと思いませんか?」
「……それはベルナール嬢の振る舞いについての注意ではないのか?」
「違います! 絶対に嫌味です!」
リリアーナが頬を膨らませると、その場にいたルーカスが眉を寄せる。
「そりゃ酷いな。リリアーナにそんな言い方するなんて」
「そうだよ、リリアーナは何も悪くないよ!」
「私も、女性同士のことに口を挟むつもりはありませんが……。リリアーナが悲しんでいるのであれば、少々気になりますね」
ルシアンも同意するように強く頷き、エドワードまで心配そうな顔をした。ルーカスたちの反応を見て、そうよ、これよこれ! とリリアーナは内心で深く頷く。これをアレクシスに求めているるのである。
しかし、アレクシスは。
ルーカスたちを見て深く溜め息を吐き、唯一黙っているセドリックに視線を向けた。
「……セドリック。お前はどう思う?」
「私ですか?」
突然話を振られたセドリックは眼鏡を押し上げ、言い辛そうに告げた。
「……令嬢たちの言い方にも問題はあると思います。ただ、リリアーナの振る舞いにも原因があるのではないでしょうか」
「セドリックまで!」
「……事実を申し上げただけです」
リリアーナが抗議すると、セドリックは困ったように答えた。むくれたようにリリアーナが頬を膨らませれば、セドリックはすまなそうに俯く。小さな声で「すみません」と謝ってくれたので、「もうっ」と軽い調子でセドリックの腕を叩く。そうすればほっとした様子をするセドリックに、自分に嫌われたくないのだなと思えば、許してあげようと思うことができた。
結局、四人の中でリリアーナを責める者は誰もいなかった。そのことに、アレクシスは呆れたように溜め息を吐いていた。
それからも、同じようなことが何度も起こる。
リリアーナが令嬢たちから距離を置かれていくほど、四人はますますリリアーナを気遣うようになっていった。
そして、とうとう。
「アレクシス様……」
ある日のこと。
リリアーナは泣きそうな顔でアレクシスのもとへやってきた。
「……どうしたんだい、ベルナール嬢」
さすがのアレクシスも、泣きそうな女性を前にして名前を注意するのは憚られたのか、注意することなく話の続きを促した。
「今日のお茶会、誘ってもらえなかったんです……」
「そうか」
「今までは誘ってくれたのに。私、何もしてないのに……」
泣きそうなリリアーナの言葉に、ルーカスが勢いよく立ち上がる。
「なんだそれ! 酷すぎるだろ!」
「本当にそう思うよ。リリアーナが何をしたっていうんだ」
ルシアンも憤慨しており、エドワードも痛ましそうにリリアーナを見つめた。
リリアーナとしてはハブられたところで痛くも痒くもないけれど、この状況を使わない手はない。任せて、泣き真似は前世で得意だったんだから! と有効活用させてもらうだけである。
「殿下、何とかしてあげられませんか?」
さらに、中立だったはずのセドリックまでそう言いだしたことに、アレクシスはしばらく黙っていた。リリアーナとしては、ついにアレクシスも自分の味方になってくれるに違いない。そう思っていたのだけれど。
全員の顔を一度見回したあと、アレクシスは静かに口を開く。
「……お前たちも、少し考えた方がいい」
「え?」
「令嬢たちがお茶会にベルナール嬢を誘わなくなったことだけを責めるのは簡単だ。だが、その原因が何もないとは私は思わない」
「でも、リリアーナは何も悪いことなんてしてないんですよ!」
「そうですよ!」
「では聞くが、ベルナール嬢が他の令嬢たちとどのように接しているか、お前たちは見ているのか?」
ルーカスとルシアンが反論する。しかし、アレクシスは二人を見て淡々と告げた。その様子を見て、リリアーヌは内心で眉を顰める。
――嘘でしょう、まだ好感度が足りないの!? 難易度高過ぎじゃない?
「……それは」
「ベルナール嬢が貴族社会の礼儀を十分に身につけていないことも知っているだろう」
「でも、それは教えてあげればいいじゃないですか!」
「そうですよ。リリアーナに悪気はないんですから」
ルーカスとルシアンが言い返す。
その二人に、アレクシスは小さく息を吐いた。
「悪気があるかどうかの話ではない。それに、ベルナール嬢にはマナー講座を用意していたはずだ」
それだけを言って、アレクシスはリリアーナを見る。
アレクシスは真顔だった。それを見て察する。やはり好感度が上がっていないのだろうことを。もしやマナー講座を受けていないことが良くなかったのだろうか。もしかしたら皇太子ルートでは必須とか? そう思いつつ、面倒くさくて嫌だなと内心で溜め息を吐く。
「ベルナール嬢。以前も言ったと思うが、知らないことを恥じる必要はない。だが、知らないままでいいということでもない」
「……はい」
「周囲の令嬢たちが君に苦言を呈したのも、最初はそういう意味だったのではないか?」
「……………」
アレクシスの言葉にリリアーナは俯く。けれど、その横では。
「ですが、リリアーナは頑張っております」
「そうですよ」
エドワードとセドリックはリリアーナの味方をしてくれた。ルーカスもルシアンもリリアーナの味方だ。その言葉が嬉しくて、「皆……。ありがとう!」と笑う。そうして四人はリリアーナに笑顔が戻ったことにほっとしている様子だった。やはりヒロインはこうでなくては、とリリアーナは笑った。
そんなリリアーナたちを見て、アレクシスはぽつりと呟く。
「……お前たちは、本当に分かっていないのだな」
その呟きは、誰の耳にも届くことはなかった。
そうして。
それでもリリアーナは懲りることなく、むしろアレクシスが自分の味方をしてくれないことが不満で、以前よりも頻繁に彼のもとへ通うようになった。
「アレクシス様!」
「……ベルナール嬢」
今日もまたリリアーナは嬉しそうにアレクシスに駆け寄る。その様子にアレクシスは小さく息を吐く。
「名前で呼ばないよう再三言っているのだが、ベルナール嬢には言葉が通じないのか?」
「まあまあ、良いじゃないですか! それより、今日の授業で――」
そんな他愛もない話をしながら、リリアーナは当然のようにアレクシスの隣に並ぶ。最初の頃こそ周囲の視線を気にしていたものの、今ではすっかり慣れてしまっていた。
何しろ、アレクシスは追い払わない。それだけで、リリアーナには十分だった。
そんな日々が続いたある日。
「ベルナール嬢」
声をかけてきたのはロザリアだった。
リリアーナはもしかして? と期待に胸を膨らませる。
「何ですか?」
平静を装ってリリアーナが振り返ると、ロザリアは扇を口元に当てながら、にこりと微笑む。
「貴女、少々アレクシス様のお側にいらっしゃる時間が長すぎるのではなくて?」
「え?」
「聖女として殿下に相談することがあるのは理解しておりますわ。ですが、何かにつけて殿下のもとへ通い、長々とお話しされるのはいかがなものかと思いますの」
「でも……」
「アレクシス様には皇太子殿下というお立場がありますもの。もう少しお考えになった方がよろしいのではなくて?」
穏やかな口調だった。けれど、その言葉に含まれた棘は隠しようもない。
「……分かりました」
唇を尖らせたまま、そう答える。内心では小躍りしそうなほど喜んでいた。
――やっぱり、この人は悪役令嬢だわ! ついに来たのね!
そう思った。だからあんなことを言うのだと。
初めのうちは軽い嫌味からが定番だ。だから今日はこれくらいで済んだのだろう。きっとこれから、悪役令嬢の行動が苛烈になっていくに違いない。
そして、その日のうちに。
「アレクシス様!」
「……ベルナール嬢。また何かあったのかい?」
「ロザリア様に酷いことを言われました!」
アレクシスの前で、リリアーナは先ほどの出来事を訴える。けれど、話を聞き終えたアレクシスの反応はリリアーナが予想していたものとは違っていた。
「それは、彼女の言う通りだと思うが」
「えっ?」
「君が私のもとへ来ること自体を禁じるつもりはない。だが、私にも立場がある。婚約者であるロザリアが気にするのも当然だろう」
「でも、私はただアレクシス様とお話ししたいだけで……」
「悪いが、いくら皇帝陛下に世話係を命じられているとはいえ、私も多忙の身だ。話を聞いて欲しいだけなら、教会関係者のエドワードに聞いてもらうといい」
あっさりと言われ、リリアーナは頬を膨らませる。
「……アレクシス様は、ロザリア様の味方なんですね」
「私はどちらかの味方をしているわけではない。正しい方を支持しているだけだ」
――まただ。
いつだってアレクシスはロザリアの肩を持つ。それが、どうしても気に入らなかった。
――もうっ! いつになったら好感度上がるのよ! もしかして好感度を上げる条件とかあるの?
そう思ったけれど、それが何かは分からない。だって覚えていないのだ。この世界がどの話なのか未だに思い出せない。手探りでやるしかないではないか。
だからこそ、リリアーナはそれからもアレクシスのもとへ通い続けた。むしろ以前よりも頻繁に。アレクシスが何か言おうとしても、「少しだけです!」と押し切って話し続ける。四人の側近候補たちがいれば、彼らも交えて話をした。
そうしていれば、きっとアレクシスの好感度が上がり、いつか自分を特別に思ってくれる。
そう思っていた。
そして、とうとう。
「……ベルナール嬢」
その日、アレクシスの教室にまでリリアーナは押しかけた。その場にはアレクシスと同じクラスのロザリアもいた。そんな場所で、リリアーナはいつものようにアレクシスに話しかけたのだ。
ロザリアはしばらく黙って二人の様子を見ていたが、ついに口を開いた。
「少し、よろしいかしら?」
「何ですか?」
「貴女、少々アレクシス様に慣れ慣れしすぎますわ」
その言葉に、リリアーナの目が見開かれる。
「ロザリア」
アレクシスが宥めるようにロザリアの名前を呼ぶ。けれどロザリアは引かなかった。
「申し訳ありません、アレクシス様。ですが、これ以上は看過できませんわ」
強い眼差しでアレクシスを見た後に、リリアーナへ視線を戻す。
「聖女として殿下のお側にいらっしゃることまで否定するつもりはありません。ですが、アレクシス様は皇太子です。貴女が何度もお側へ押しかけ、長時間拘束することが、どれほど失礼なことかお分かりになりませんの?」
「……………」
「それに、アレクシス様には婚約者であるわたくしがおります。貴女が何度もアレクシス様に付きまとえば、周囲からどのように見られるかくらい、お考えになった方がよろしいのではなくて?」
「……………っ」
リリアーナは言葉を失った。
ロザリアの言っていることは、これまで令嬢たちから言われてきたことと同じである。
けれど。
――今は、皇太子の前。
それに。
――ついに、悪役令嬢が私を敵視した!
胸の奥から、どうしようもない喜びが込み上げてくる。これはきっと、物語が大きく動き始めた証拠だ。
ヒロインである自分と、悪役令嬢であるロザリア。二人の対立が、ついに始まったのだ。しかも、アレクシスの目の前で。
――やったわ!
リリアーナは心の中で盛大に歓声を上げる。これでようやく、物語の舞台が整った。
そう思っていた。
けれど、そんなリリアーナの期待とは裏腹に。
「ロザリアの言う通りだ、ベルナール嬢。君はもう少し、己の立場と言動、所作を振り返った方がいい」
アレクシスは静かにそう告げる。その言葉に、リリアーナは愕然とした。
それからアレクシスは視線をリリアーナからロザリアに移す。
「ロザリア。皇帝陛下からの命で、聖女の世話係をすることになったのは知っているだろう。君との時間が減ってしまうのは申し訳ない。けれど、君さえ良かったら一緒にベルナール嬢といてくれないだろうか。女性の友人も彼女には必要だろう。その辺りをフォローしてくれると、私としても助かる」
アレクシスがそう告げると、ロザリアはしばし黙り込んだ。リリアーナは唖然とした表情でアレクシスを見ることしか出来なかった。ロザリアにきついことを言われたばかりなのに、どうして、と唇を噛む。
――悪役令嬢が側にいるなんて嫌すぎる!
そう思ったけれど、リリアーナの思いは杞憂に終わる。
睨みつけるようにして、ロザリアがアレクシスに告げたのだ。
「……お断りいたしますわ」
「……理由を聞いてもいいかな」
思いもよらない返答だったのか、アレクシスが目を瞬く。
「わたくしがベルナール嬢のお側にいる必要があるとは思えませんもの」
「だが、彼女は貴族社会のことに不慣れだ。君が側にいてくれれば――」
「それは、ベルナール嬢が学ばれるべきことでしょう?」
ロザリアは淡々と答えた。
「それに、アレクシス様がお側にいらっしゃる間ならまだしも、そうでない時までわたくしが彼女のお相手をするというのは、どういうことでしょう?」
「どういうこととは?」
「つまり、アレクシス様がいらっしゃらない時も、わたくしはベルナール嬢と共にいろと仰りたいのですか?」
ロザリアの声が、僅かに低くなる。
「そういう意味では――」
「でしたら、なおさらお断りいたしますわ」
きっぱりと言い切り、ロザリアは扇を閉じて真っ直ぐにアレクシスを見つめた。
「ベルナール嬢の周囲には、四人の殿方がおりますでしょう? ですが、わたくしからすれば、婚約者でもない殿方です。その方々とベルナール嬢がおられるところへ、わたくしが一人で加わるのですか?」
そこでようやく気が付いたのか、アレクシスは黙り込んだ。
「しかも、アレクシス様がいらっしゃらない時まで? 聖女様は婚約者がおられませんから、問題ないとお考えなのかもしれません。けれど、わたくしには婚約者がいる身としての立場がございます」
ロザリアは一度だけリリアーナへ視線を向けた。
「それに、ベルナール嬢は既に殿方の友人が四人もいらっしゃるではありませんか。わたくしまで加わらなければならない理由が分かりませんわ」
ロザリアの言葉を受け、アレクシスは深く息を吐く。その様子は、少し疲れているようにも見えた。
「……そうだな。私の浅慮だった。すまない、ロザリア。今の話はなかったことにしてくれるか」
「申し訳ありません、アレクシス様」
「いや。君の立場を考えれば、もっともな話だった。今のは私が悪い」
アレクシスはそう言って頷いた。
その隣で、リリアーナだけが何でアレクシスが謝らなければいけないのだと、不満そうに頬を膨らませる。けれどロザリアは、そんなリリアーナの様子を見ても何も言わなかった。
ただ、当然のことを言っただけだとばかりに、ロザリアはリリアーナに冷めた目を向けるだけだった。




