1回目の人生 ⑥
アレクシス視点の話です。
アレクシスの最期。
それから、数日後。
皇太子宮に引きこもるアレクシスのもとへ、父が尋ねてきた。
アレクシスは椅子に座ったまま父を出迎える。今さら礼を失したところで構わないだろう。父も何も言わず、ただアレクシスの前に立った。
「……最後に、あなた自身が来るとは思いませんでしたよ」
そう言って諦めたように笑えば、父は眉を上げる。しかし何も告げることなく、机の上に小瓶を置いた。
無色透明の液体が入ったそれが何なのかなど、言われなくても分かっている。抵抗したところで意味がないことも知っていた。
だから無言でその小瓶を手に取った。
蓋を開ける。匂いはなかった。幼少期に飲んだ毒のように、苦しむようなものでなければいい。思うことはそれくらいだった。
父は自分が毒への耐性をつけていたことを知っている。だから以前と同じ毒を使うことはないだろう。より強力で、確実に息の根を止める毒のはずだ。
毒を煽ろうとした、その寸前だった。
父が言葉を発した。
「ナフェリエと同じ顔のままであれば、幽閉して愛でてやっても良かったものを。……とんだ失敗作になりおって」
吐き捨てるように告げられた言葉に、もはや傷つくことはなかった。嫌悪感を抱くことはあれど、もう、この人には何の期待もしていない。
だから。
「全力でお断りします。私は、母上ではありませんので」
そう笑顔で告げて、毒を煽る。躊躇いはなかった。
痛みも苦しみも感じない。ただ、身体から力が抜けていく。眠りにつくような穏やかさだった。
最後に与えられる死がこれなら、そう悪いものでもない。
そんなことを考えながら、アレクシスの意識は静かに落ちていった。




