2回目の人生 ①
ロザリア視点の話です。
過去の記憶を振り返り終え、ロザリアは深く息を吐いた。
あれをただの夢だと思うことは出来なかった。夢であるはずがない。処刑台の上で感じた恐怖を、ロザリアは鮮明に覚えている。
首を落とされる瞬間の冷たい刃が触れた感覚。そして、自分の命が終わるのだと理解した時の、あのどうしようもない恐怖。そっと自分の首をなでる。温かい肌の感触に、ほっとする自分がいた。
あれが夢であるはずがない。ならば、なぜ自分は再び過去へ戻っているのだろう。理由は分からない。
けれど、もしかしたら。
――女神様が、わたくしにもう一度だけ機会を与えてくださったのかもしれませんわ。
この世界を見守る女神。聖女を選び、勇者を導く存在。
そんな女神が、自らの過ちをやり直す機会を与えてくれたのだとしたら。
――この機会を無駄にするわけにはいきませんわ。
そう思った。
前回、自分はどこで間違えたのか。何がいけなかったのか。それを考える。
自室のソファに腰を下ろし、しばらく天井を見つめた。
――あれは、完璧だったはずですわ。
自分が直接、暗殺を依頼した証拠は残していない。侍女には何も知らせず、花を買わせただけ。大聖堂では告解を行い、聖女を憎んでいると告げただけだった。
――それなのに。
ロザリアの眉がぴくりと動く。
過去視の魔法。
そんなものが存在するなど、誰が予想出来るというのだろう。あの魔法さえなければ、神父が何を見たのかを調べられることもなかった。裏ギルドへ繋がる道を辿られることもなかった。
すべては、あの魔法があったからだ。
ゆっくりと息を吐く。
――わたくしは、間違えてなどいませんわ。
少なくとも、証拠を残さないための方法は間違っていなかった。知らなかっただけだ。この世に、過去を覗き見る魔法が存在することを。
ならば、今度はその存在を前提にすればいい。
「……そうですわ」
ロザリアはゆっくりと顔を上げる。前回と同じことを繰り返さなければいい。過去視の魔法に見られても問題のない方法を選べばいいのだ。
あるいは。
そもそも、過去視を使われるような状況にならなければいい。
――次は。
ロザリアの紫色の瞳に、強い光が宿る。
「次は絶対に、間違えませんわ」
高らかに、そう宣言した。




