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深海に溺れる  作者: 深幸-みさき-
第11章:「自由な海へ」
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第6話「自由な海」

海は今日も穏やかだった。


朝の光が海面から降り注ぎ、青い海流がゆっくりと深海を巡っていく。


「レヴィ!」


明るい声が響く。


振り返ると、アウルがこちらへ勢いよく泳いできた。


尾びれを大きく揺らしながら、まるで子どものように笑っている。


「今日は向こうまで行ってみよう!」


「ああ。」


頷くと、アウルは嬉しそうに笑った。


二人は並んで泳ぎ始める。


王族の住まう静かな場所を離れ、少しずつ外の海へ。


珊瑚の群れを抜け、小魚の群れが光の中を踊る。


アウルは魚たちを見つけると、迷わずその群れへ飛び込んでいった。


「待ってくれ!」


笑いながら追いかける。


魚たちも逃げることなく、アウルの周りをくるくると泳ぎ回る。


「かわいいな。」


指先を伸ばすと、小さな魚がそっと触れた。


「くすぐったい。」


その笑顔につられるように、近くにいた若い人魚たちも集まってくる。


「アウル!」


「一緒に泳ごう!」


「もちろん。」


楽しそうに頷き、海流へ飛び込んでいく。


誰よりも自由に。


光を追いかけるように。


歌を口ずさみながら。


その姿を、レヴィは少し離れた場所から見つめていた。


自然と笑みがこぼれる。


……変わった。


人間だった頃の碧は、泳ぐたびに前だけを見ていた。


速く。


もっと速く。


誰よりも前へ。


誰にも負けないように。


海を愛していたはずなのに。


いつしか泳ぐことは、自分を追い込むためのものになっていた。


だが今、アウルは違う。


誰かと競うこともない。


速さを求めることもない。


海流に身を任せ、魚たちと遊び、人魚たちと笑い合う。


まるで海そのものが遊び相手であるかのように。


碧だった頃の記憶は、もうない。


だからこそなのだろう。


競う理由も。


勝たなければならない理由も。


アウルは知らない。


ただ。


泳ぐことが好きだから泳ぐ。


その姿は、どこまでも自由だった。


「レヴィ!」


遠くから名前を呼ばれる。


振り返ると、アウルが大きく手を振っていた。


「早く来い!」


思わず小さく笑う。


「ああ。」


尾びれを揺らし、その隣へ並ぶ。


「見てくれ。」


「この海流、すごく気持ちいい。」


アウルは目を細め、ゆっくりと潮の流れへ身体を預けた。


その穏やかな横顔を見ながら、レヴィは静かに目を伏せる。


この選択で、よかった。


そう思えた。


碧は海へ沈んだ。


けれど。


アウルは海へ還ってきた。


海流が二人の間を優しく流れていく。


その流れに乗り、二人は並んで泳ぎ出す。


どこまでも続く青い海へ。


自由な海へ。


ご覧いただきありがとうございます。

『深海に溺れる』は、毎日【22:00】に更新予定です。


ふたつの海の物語──。

真逆の空気感を持つ、もうひとつの人魚BLも同時連載中です。

月光に照らされる、切なくきらめく初恋の物語もぜひあわせてお楽しみください。


▼ もうひとつの人魚BL

『夜凪に溶ける』

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